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コラム

設計者が使えるEMC解析へ―専用ツールによる評価プロセスの標準化

設計部門へのEMC解析展開を阻む壁

電子機器の高機能化や小型化に伴い、設計段階からEMC対策を実施し実機試験後の手戻りを抑えることがますます重要になっています。
そのため、汎用電磁界解析ツールを導入しEMC解析に取り組んでいる企業も少なくありません。
しかし、解析技術や環境は整備されていても、その活用が一部の専門家にとどまり、実際に製品を設計する部門へ十分に展開できていないケースがあります。
設計部門は従来どおり試作機を製作し、実機試験で問題が見つかってから専任部門へ解析を依頼する。
この流れのままでは、企業としてEMC解析技術を保有していても、問題発見のタイミングを設計初期へ移すことはできません。
本コラムでは、EMC解析が設計部門へ広がりにくい理由を整理したうえで、専任部門と設計部門の役割分担、専用ツールを活用した解析業務の標準化についてご紹介します。

EMC解析技術があっても、設計へ活かしきれない

電磁界解析を用いることで、電界・磁界分布、表面電流、共振、ノイズの結合経路などを詳細に評価できます。
実機試験で不適合が発生した際には、解析によって原因を推定し、対策案を検討することも可能です。
一方、設計部門から見ると、解析は「専門部署へ依頼する業務」になりやすい傾向があります。
解析を依頼するには、必要なデータや評価条件を整理し専任部門と解析内容を調整しなければなりません。
解析結果を受け取った後にも、その意味を理解し設計へ反映するための打ち合わせが必要です。
設計変更のたびに同じ手順を繰り返すと、解析依頼が専任部門へ集中し、回答までの待ち時間が発生します。
専任部門も定型的な条件変更や結果確認への対応に追われ、本来注力すべき複雑な現象の解明や解析技術の高度化に時間を割きにくくなります。
また、解析結果が個別案件の報告で終わってしまうと、そこで得られた知見が次の設計へ十分に活用されません。
特定の担当者は対策方法を理解していても、組織全体の設計ルールや判断基準として残らなければ、類似したEMC問題が別の製品で繰り返される可能性があります。

なぜ汎用電磁界解析を設計部門へ展開しにくいのか

汎用電磁界解析は、複雑な電磁現象を詳細に解明できる強力な手法です。
その一方で、解析対象を自由に定義できるからこそ、利用者自身が解析モデルや条件を適切に構築する必要があります。
EMC規格試験を想定した解析では、PCBや筐体だけでなく、ケーブル、ワイヤーハーネス、LISN、アンテナ、注入クランプ、グランド面、負荷、電源などを含む試験環境をモデル化します。
さらに、材料特性、ノイズ源、境界条件、メッシュ、ソルバーなどを設定し、解析後には規格で定められた評価量へ結果を変換しなければなりません。
これらの作業には、電磁界解析とEMC規格の両方に関する知識が必要です。
製品単体で解析を実施することも可能ですが、この場合は得られた結果に対して試験環境の影響をEMC知見等から補完する必要があります。
また、解析モデルを準備できたとしても、得られた電界や電流分布から規格適合性や対策の優先順位を判断するには経験が求められます。
汎用電磁界解析は、専任部門が複雑なノイズ現象を解明する用途には適しています。
しかし、設計者が部品定数、配置、配線、ケーブル条件などを変更するたびに日常的な評価を行うには、解析準備と結果判断の負担が大きくなりがちです。

ツールを導入するだけでは、設計部門への展開は進まない

設計部門へ解析ツールを導入し操作トレーニングを実施すれば、利用が広がるとは限りません。
解析を日常業務として定着させるには、「どの製品を、どの段階で、何を目的として評価するのか」を明確にする必要があります。
例えば、設計者が解析を実行できても結果をどの基準で判断するのかが決まっていなければ、最終的には専任部門へ確認しなければなりません。
また、担当者ごとに入力条件やモデル化方法が異なると、結果を相互に比較できず設計判断の共通指標として利用できなくなります。
設計部門への展開に必要なのはツールの操作教育だけではありません。
解析対象、入力データ、解析条件、評価指標、判断基準、専任部門へ相談する条件まで含めて、業務フローを標準化することが重要です。

設計者を電磁界解析の専門家にする必要はない

EMC解析の設計部門展開というと、すべての設計者が高度な電磁界解析を習得する姿を想像しがちです。
しかし、設計者と専任部門では本来求められる役割が異なります。
設計部門が担当するのは、設計初期のEMCリスク確認や、部品定数、配置、配線、ケーブル条件などを変更した場合の比較評価です。
あらかじめ決められた条件と手順に従って解析し、規格限度値に対するマージンや設計変更前後の傾向を確認します。
一方、専任部門では定型的な手順では判断できない問題や、複数のノイズ経路が関係する複雑な現象について汎用電磁界解析を用いて詳細に調査します。
実測結果との相関確認や、解析精度の改善も専任部門の重要な役割です。
このように、定型的な事前評価は設計部門、高度な原因分析は専任部門と役割を分けることで、設計者の負担を抑えながら、EMC解析技術を製品開発全体へ展開できます。

設計部門 解析専任部門
規格限度値へのマージンを確認 複雑なノイズ現象を解析
部品・配置等の設計条件を比較 ノイズ現象の専門的な知見を蓄積
問題の詳細解析が必要な場合に専任部門に依頼 設計部門からの依頼に対して高度な原因分析を実施

EMC専用ツールで、専門家の知見を標準業務へ変える

こうした役割分担を実現する方法の一つが、EMC規格試験のシミュレーションに特化した専用ツールの活用です。
専用ツールの役割は解析機能を提供することだけではありません。
評価手順を定型化し、設計者が同じ条件と判断基準で解析できる仕組みを作ることにあります。
SimYog Compliance-Scopeは、EMC規格試験を設計段階でシミュレーションするための専用ツールです。
対象となるEMC規格を選択すると、その規格に応じた試験環境モデルが自動構築され、PCB、ケーブル、LISN、入力信号などの条件を設定するだけで簡単に評価を進められます。
Compliance-Scopeでは、エミッションおよびイミュニティの規格試験を想定した評価に加え、近傍界によるノイズ集中箇所の確認、コモンモード/ディファレンシャルモードの要因分析、感度解析やWhat-if解析などの対策検討機能が利用できます。
例えば、設計者は専用ツールで規格適合性の確認と設計条件の結果比較を実施し、判断が難しい結果や規格限度値に対するマージンが少ないケースだけを専任部門へ相談する運用にすれば、日常的な一次評価を設計部門で完結しやすくなります。
専任部門にとっても、解析依頼ごとに試験環境を一から構築する必要が減り、設計者と共通の解析条件や結果を用いて議論できます。
これにより、単発の解析結果を渡す関係から設計判断を支える仕組みを共同で運用する関係へ移行できます。

専任部門と設計部門の双方に生まれる効果

設計部門が定型的なEMC評価を行えるようになれば、試作前にリスクの高い設計を発見し対策案を比較できます。
実機試験で不適合が発生してから原因調査を始めるのではなく、問題となる可能性を設計初期に確認できるため、再設計、再試作、再試験の抑制が期待できます。
専任部門では、部品定数の変更や結果確認といった定型的な依頼が減り、複雑な現象の解明、実測との相関向上、解析手法の開発など、専門性を必要とする業務へ注力できます。
さらに、共通のモデル、条件、評価指標を使用することで、解析結果と対策内容を組織内で蓄積しやすくなります。
個々の担当者が持っていたEMC対策の経験を、設計ルールや判断基準として共有できれば、別の製品や次の開発でも再利用できます。
EMC解析の設計部門展開は、解析担当者を増やす取り組みではありません。
問題を早期に発見し、同じ問題を繰り返さないための開発プロセス改善です。

EMC解析技術を本当に活用できる設計環境へ

高度な電磁界解析技術を保有していても、その活用が専任部門に限定されていれば、EMC問題の発見は開発後半になりがちです。
一方、汎用電磁界解析をそのまま設計部門へ展開しようとすると、モデル作成、条件設定、結果判断などの負担が利用の壁になります。
設計者を電磁界解析の専門家にする必要はありません。
設計部門が定型的なリスク確認と対策比較を行い、専任部門では複雑な現象の解明を行う役割分担が重要です。
Compliance-ScopeのようなEMC専用ツールを活用して解析環境と評価手順を標準化すれば、EMC解析を設計者が利用できる形へ展開できます。
設計部門は試作前の評価を行い、専任部門は高度な問題へ注力する。この仕組みによって、EMC解析を一部の専門家だけが使う技術から、製品開発全体を支える設計プロセスへ発展させることができます。
EMC解析技術の構築が進んでいるものの、設計部門での活用に課題を感じている場合は、専任部門と設計部門の役割を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。

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