コラム
EMC対策を「試験後」から「設計段階」へ
実機ベースEMC対策の問題点

製品を試験サイトへ持ち込み、いざEMC試験を実施したところ規格値を超過してしまい、現場で原因分析や対策検討に追われた――。このような経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
限られた試験時間のなかで、部品の追加や配置変更、ケーブル経路の見直しなどを繰り返し、何とか規格をクリアする。EMC対策では、現在もこうした実機試験を中心とした進め方が少なくありません。
実機試験に依存したEMC対策の課題
実機による最終確認は不可欠ですが、問題の発見から対策検討までを実機試験に依存すると、さまざまな負担が発生します。
まず、評価用サンプルの製作や試験サイトの予約・準備が必要となるため、問題を確認できるのは設計工程の後半になりがちです。この段階で問題が見つかると、場合によっては基板や筐体、ケーブルなどの設計変更が必要となり、大きな手戻りにつながる可能性があります。
また、対策後の効果を確認するには、試作品を作り直し、再び試験を行わなければなりません。試作品の製作費に加え、外部の試験サイトを利用する場合には、再試験のたびに数万円から数十万円規模の費用が発生することもあります。
さらに、試験現場では時間が限られているため、「ノイズ対策部品を追加する」「シールドを施す」「ケーブルの位置を変える」といったカット&トライになりやすい点も課題です。規格をクリアできたとしても、どの要因が問題を引き起こし、なぜ対策が有効だったのかを十分に検証できなければ、次の製品開発に活用できる知見として蓄積しづらくなります。

規格試験シミュレーションによる事前評価
こうした課題を解決する方法の一つが、設計段階や実機試験前に規格試験シミュレーションを実施することです。
実際の規格試験に対応した解析環境で製品の基板、筐体、ケーブルなどをモデル化することで、試作品が完成する前からエミッションやイミュニティの傾向を評価できます。規格値を超過する可能性のある周波数や、ノイズの発生源・伝搬経路を事前に把握し、設計変更による効果を比較することも可能です。
例えば、部品配置やケーブル経路、シールド構造、フィルタ定数などの設計案をシミュレーション上で比較すれば、実機を作り直すことなく有効な対策を絞り込めます。これにより、実機試験を「問題を発見して対策する場」から、「設計段階で検討した対策の妥当性を最終確認する場」へと変えることができます。

EMC設計のフロントローディングがもたらす効果
規格試験シミュレーションを活用してEMC対策を設計工程の前半へ移すことで、試験NGによる手戻りを抑えられます。試作品の作り直しや再試験の回数が減れば、試作費や試験サイト利用料をはじめとする設計コストの削減につながります。
さらに、試験と対策の繰り返しに費やしていた時間を短縮できるため、開発スケジュールにも余裕が生まれます。技術者が規格要求への事後対応に追われるのではなく、性能向上や小型化、高信頼化といった、製品本来の価値を高める設計へ、より多くの時間と人員を振り分けられるようになります。
また、シミュレーションでは条件を変えながら現象を比較できるため、問題の発生要因と対策効果の関係を定量的に整理できます。個々の担当者の経験に依存しがちだったEMC対策を、再利用可能な設計知見として組織内に蓄積できることも大きなメリットです。
実機試験を「合否確認」の場へ
規格試験シミュレーションは、実機試験を置き換えるものではありません。設計段階で問題の芽を見つけ、対策案を検証したうえで実機試験に臨むための手段です。
実機が完成してから対策を始めるのではなく、設計段階からEMC性能を検討する。規格試験シミュレーションを活用したフロントローディングは、手戻りとコストを抑えながら、製品開発のスピードと品質を両立するための有効なアプローチといえるでしょう。

Compliance-Scopeで規格試験シミュレーションをより身近に
SimYog社の「Compliance-Scope」は、EMC規格に準拠した試験環境があらかじめ用意されており、専門的な電磁界解析の知識がなくても、規格試験シミュレーションを簡単に実施できます。設計段階でのEMC評価や、実機試験前の問題抽出・対策検討にご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
