事例紹介
ISO11452-4 伝導イミュニティ(BCI)の解析事例
テンプレートを用いた自動車部品の伝導イミュニティ評価
解析概要
本事例ではPCBを対象にISO11452-4に則った電流を注入し、PCBの各部に発生する電圧を評価しております。
判定基準を超過している周波数に関しては電流密度分布を確認して経路を特定し、経路上にあるコンデンサを適切な定数に変更することでEMC設計を最適化しております。
こんな方にオススメします
- 車載部品の回路設計に携わっている方
- 試作前にノイズに対する耐性を見積もりたい方
- 基板のイミュニティの規格試験を実施している方
背景・課題
昨今、電子機器の高度化に伴い電磁両立性が求められています。電磁両立性を担保するためにISO11452-4などの規格への適合が求められており、電磁界解析ソフトなどを使った事前の見積が有効です。
しかし、従来の電磁界解析ソフトをEMCの規格試験に適用する場合は、評価対象(PCB)以外にも試験環境(LISN、試験テーブル、BCIプローブなど)をモデリングする必要があり解析の準備に工数がかかります。
SimYog Compliance-Scopeは試験環境自体がプリセットされておりレイアウト(テーブルの長さなど)やBCIプローブでの注入電流レベルを数値の入力で変更できるためモデリングの工数を削減しつつ規格試験の解析結果を得ることが可能です。
解析対象
解析対象としてインダクティブポジションセンサを使用しております。

図1 解析対象のPCBモデル
解析手法
解析したいDUT(PCBモデル)をインポートし、ICのピンに対してイミュニティの判定基準を設定します。
イミュニティの判定基準はIC単品の測定結果から求められます。

図2 判定基準の設定
プローブから注入する電流のレベルをダイアログから選択します。注入レベルに関しては任意の電流値に設定することもできますし、プリセットされている規格に記載のあるレベルの波形からも選択できます。今回は規格の中で最も電流が高い「Test Level Ⅳ」を設定します。

図3 注入レベルの設定
解析結果
ケーブルから注入された電流により発生する電圧とイミュニティの判定基準を図4に示します。
本結果では約250~300MHzにかけて判定基準を大きく超過する電圧が発生しているということがわかります。

図4 発生電圧と判定基準
詳細に伝搬経路を確認するために、電流密度分布を確認します。今回は特に電圧が高い270MHzで電流密度を表示します。
結果を確認するとIC付近のC12のコンデンサが配置されているICの左上のライン上に電流が集中していることが確認できます。

図5 電流密度分布
電流密度が高いライン付近にある素子定数の感度を確認します。確認にはCompliance-ScopeのQuick What-if機能を用いて、250~300 MHzの間で①「コンデンサなどの素子定数の感度の有無」、②「定数を変更したときの発生電圧」を評価します。
①について確認結果としては下記の感度マップのように表され、コンデンサC12が270MHz付近に対して感度を持っていることを確認できます。

図6 感度マップ
②について①で確認した感度の結果からC12を複数パターン入力し、判定基準を超えない電圧になるようなコンデンサ容量を検討します。
ここではC12を10pFから70pFに変更することで判定基準以下になることを確認できました。

図7 コンデンサ定数変更確認
解析の効果
今回はインダクティブポジションセンサに対してBCI試験の解析を行い、障害発生の見積と対策の検討を行いました。
このように、解析によって規格試験の結果を設計段階で予測することで、PCBのEMC設計を最適化し、製品の規格合格や信頼性の向上に貢献することができます。
*続きはダウンロードしてお読みください。