委託事例
車載用カメラレンズの設計事例
~樹脂を使用した車載カメラ用レンズの設計~
ここでは、光学設計ソフトウェアAnsys Zemax OpticStudioを使用した、車載カメラ用レンズの設計についてご紹介します。
近年の車載カメラ用レンズの光学設計には、低コスト化のために樹脂レンズを使用することが当たり前となっています。しかし樹脂材はガラス材に比べ、温度による熱膨張や収縮、屈折率変動が大きいため、熱による光学性能の劣化が激しくなってしまいます。
本事例では、車載カメラ用レンズに樹脂レンズを使用する際の課題を解決できる光学設計事例をご紹介します。特に、温度特性を考慮せずに最適化を行った場合と、温度特性を含めて最適化を行った場合のデフォーカス特性比較を通じて、当社の設計能力の高さを具体的に示しています。
光学設計に関心のある方、車載カメラ用レンズの設計で課題を抱えている方、または技術的な刷新を目指している方におすすめの内容となっております。こちらの事例がお客様のプロジェクト革新の一助となりましたら幸いです。
車載レンズの光学設計における課題
- 高性能&小型の要求に加え、熱環境を考慮した設計を行わなければならない
- 低コスト化のため樹脂レンズを採用するのが当たり前となっているが、温度による熱膨張や収縮、屈折率変化により光学性能が変わるため、扱いが難しい
- 考慮すべき要件が多く、設計の難易度が高い
ex)解像度を良くしようとすると加工不可能なレンズ形状になる
常温性能と高低温時の性能が両立できない
サイズの制約が厳しく性能が出ない
本資料から得られること
- 光学設計における温度環境の考え方
- 温度環境を考慮した光学設計の手法
車載レンズとは
センシングカメラ用レンズ(車間距離制御、衝突回避、歩行者感知など)
アラウンドビューカメラ用レンズ(周辺確認、衝突回避など)
ドライバーモニター用レンズ(運転手監視)

自動車社会の安全性を向上させるデバイスとして重要な役割を果たしている
車載用部品の信頼性
自動車は行動の自由度が高く、かつ使用者により様々な使い方がされるため、色々な観点から耐性を評価しなければならない

光学設計では特に温度環境性を考慮した材料選びや最適化が必要になる
光学設計における環境温度の考え方①
理想状態での光学性能だけでなく環境温度を考慮しなければ車載レンズとして機能しない
設計段階から低温下・高温下での性能を補償しなければならない
具体的には、温度変化した際のフォーカスシフト(ピントずれ)が小さい方が良い
カメラモジュールのイメージ

光学設計における環境温度の考え方②
小型軽量かつ低コストなレンズが求められるため 、 樹脂レンズの使用が必須である
しかし 、 樹脂レンズはガラスレンズに比べ温度による屈折率変動および熱による形状変形が 大きいというデメリットがある

光学設計における環境温度の考え方③
樹脂レンズを使用し、"温度特性を考慮せずに最適化"を行うと以下のようになる

温度によるピントずれが ±30 μ m程度発生しており 、 高低温時には解像しない
材料の選び方や各レンズのパワー配置を工夫することでこれが改善できる
設計仕様 :車載レンズ アラウンドビュー用途
本事例では 、 超広角 ・ 高解像 ・ 小型軽量 ・ 低コスト ・ 温度によるピントずれが小さいという 要望に対応できるレンズモジュールの設計を目的とした
想定するイメージセンサは車載グレードで実績の多い 1/ 4 inch サイズを想定した
その他 F ナンバーや画角等も一般的なビューレンズの仕様を想定している

設計結果 :車載レンズ アラウンドビュー用途
設計の結果例を以下に示す

設計データ比較
温度特性も含め最適化を行うと 、 高低温時も解像できる
幅広い温度帯での使用を想定する場合は複雑な最適化を行う必要がある
