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分野別の課題

SOLUTION CASE

金微粒子による散乱光の解析

こんな方におすすめ

  • 照明機器の開発者(光を散乱させてある面を均一に照らしたい)
  • 検査装置の開発者(水・空気中の不純物を検出したい、製品の傷を検出したい)
  • 塗料の開発者(塗料の粒子の散乱を解析したい)
  • 散乱光を用いたイメージングの研究者(散乱体内部の情報を取得したい)

解析概要

空間を直進する光は、空間に存在する粒子に衝突すると、その物体を中心にあらゆる方向へと広がります。この現象を光の散乱と言います。散乱は粒子の大きさでレイリー散乱(粒子サイズが光の波長よりも小さい)とミー散乱(粒子サイズが光の波長と同等)に区別されます。本稿ではAnsys Lumerical FDTDを用いて、金微粒子による散乱光の解析に関する事例(Mie scattering (FDTD) – Ansys Optics)を紹介します。

使用ソフトウェア

Ansys Lumerical FDTD 2023R1

解析目的および解析手法

背景と目的

微粒子による光の散乱特性は、微粒子のサイズ、材料や光の波長などで変化します。微粒子による光の散乱特性を解析することは、散乱光を使用する技術の発展につながります。また、照明機器、検査装置、散乱塗料の設計・開発においては、散乱粒子の光のふるまいを今まで以上に正確にシミュレーションすることで、高性能・高品質な機器・材料の設計開発を加速させます。

解析対象

散乱光源であるTFSF光源の領域内(領域内は空気中)に金微粒子(図1)を配置し、光を照射してその散乱特性を確認します。

(図1)解析モデル

解析手法

Lumerical FDTDのTFSF光源を使用することで、金微粒子による散乱光の解析を行います。
光源領域内の強度分布、散乱光の強度分布、無限遠での強度分布を取得し、上記URLからダウンロード可能なスクリプトに取得したデータを渡し、以下の項目の計算を解析結果と理論値について行います。

1) x-y、x-z、y-z平面におけるファーフィールドでの散乱光強度の角度分布の計算
2) 球面上のファーフィールドの計算(XY平面の上下に半球を設置)※デフォルトではオフ
3) 吸収・散乱断面積の計算
4) 電場増強度の計算

解析の仕様

材料物性

微粒子:金(Au(Gold)-Johnson and Christy Copy 1)

解析条件

主なパラメータをまとめた一覧表(図2)と境界条件(図3)に示します。そのほかのパラメータはモデルファイルをダウンロードの上ご確認ください。また、(図4)に示すように一部のパラメータはmodel内のUser propertiesで定義されています。これらのパラメータは、通常のようにオブジェクトを選択してEditウィンドウからの変更はできないのでご注意ください。

(図2)パラメータ一覧表

(図3)境界条件

(図4)modelで定義されている変数

解析結果

解析情報

1) XY,YZ,XZ平面におけるファーフィールドでの散乱光強度の角度分布の計算
2) 吸収・散乱断面積の計算
3) 電場増強度の計算

解析結果

金微粒子による散乱の解析結果を示します。(図5)はXY,YZ,XZ平面におけるファーフィールドでの散乱光強度の角度分布を、(図6)は吸収・散乱断面積を、(図7)は各平面の電場増強度を示しています。これらの結果から粒径0.1umの金微粒子による散乱の特性を解析することができます。(図5)と(図6)の青線はFDTDの計算結果をプロットしたもので、緑線はミー散乱の理論計算の結果をプロットしたものになります。デフォルトの設定ではFDTDの結果と理論値にはずれがあります。さらに(図7)からわかるように金微粒子の形状が精度よく表現されていません。これらを調整するために収束テストを行います。収束テスト後の解析結果の一部を(図8)に示します。(図7)と比較してわかるようにより高精度な結果が得られます。また、ファーフィールドでの散乱光強度の角度分布および吸収・散乱断面積は理論値と一致しました。詳細につきましては、ダウンロード資料をご覧ください。

(図5)XY,YZ,XZ平面におけるファーフィールドでの散乱光強度の角度分布

(図6)吸収・散乱断面積

(図7)XY,YX,XZ平面での電場増強度

(図8)収束テストを行った場合のXY平面での電場増強度

解析結果の評価

Ansys LumericalのFDTDソルバーを使用し、金微粒子による散乱の解析をすることができました。上記URLからダウンロード可能なスクリプトファイルを使用することで各平面のファーフィールドでの散乱光強度の角度分布、各平面の電場増強度、散乱・吸収断面積を算出することが可能です。また、収束テストを行うことで微粒子の形状をより正確に描画でき、より高精度な散乱光の解析結果が得られます。

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