事例紹介
非線形性の強い時刻歴解析を高速・高精度に予測 -Neural Concept Studioを活用した機構解析サロゲートモデルの構築-
機構解析を始めとした駆動系の強度解析などの時刻歴解析、接触や塑性変形、超弾性を伴う非線形性の強いCAEは、解析に多大な時間を要し、期限内にベストな設計解にたどり着くことが難しい場合があります。また、非線形解析の収束には適切なメッシングや設定の試行錯誤が必要であり、熟練者によるノウハウが必須となります。そのため、設計者の方には敷居が高く、気軽にCAEを試しにくいといった課題が現場では起こりえます。
しかしサロゲートAIであれば、多数の時間ステップがあっても高速に結果を得ることができ、メッシングや非線形解析の収束のための設定の試行錯誤は必要ありません。3D CADデータの入力と簡単な条件設定だけで、CAEと同等の結果を"気軽に"、"手早く"確認することが可能です。
本事例では、Neural Concept Studioを活用して、機構解析(時刻歴解析)の解析結果を高速、高精度に予測するサロゲートAIモデルの構築をご紹介します。多数の時間ステップを伴う解析であっても、全ての時刻の結果を高速に予測することが可能です。
機構解析のサロゲートAIモデル構築事例
エンジンのピストン・コンロッドの機構解析(応力評価)にNeural Concept Studioを適用し、多数の時間ステップの結果を高速・高精度に予測するサロゲートAIを構築しました。
ピストンコンロッド1回転分の全ての時間ステップ(100step程度)について、コンロッドに生じる最大主応力を予測します。
教師データは基本形状をもとに設計パラメータ4種、水準数3つで、合計243個のコンロッド形状データ及びCAEの結果を用意しました。
218個を学習に用い、残りの25個を検証に用いています。

ピストン・コンロッドの機構解析

用意した形状データのバリエーション
サロゲートAIの予測結果
検証用データの1つについて、CAEの解析結果とサロゲートAIによる予測結果を比較しています。
いずれのクランクシャフトの回転角度(時間ステップ)でも、CAE解析結果と同等の結果を得られました。
CAEでは1回の解析あたり2~3時間程度の時間を要しますが、サロゲートAIであれば全ての時刻ステップの結果を1形状あたり1秒未満で予測可能です。

サロゲートAIの予測結果 (コンロッドの応力分布の時刻歴データ、回転角30°ごとに抜粋しています。)
CAEと同等の結果を瞬時に取得
コンロッドに生じる応力が最も大きくなる、回転角が180°の結果に着目してみます。
CAE結果とサロゲートAIの予測結果の絶対誤差は平均1%程度で、CAEと同等の結果を得られました。
さらに応力集中部も正確に予測できています。

コンロッドに生じる応力が最も大きいときのサロゲートAIの予測結果