ソリューション
【IoTユースケース】
工作機械の稼働データ活用で実現する「予兆保全」と「サービス収益化」
製造業を取り巻く環境は、急速に変化しています。市場のグローバル化や製品の高機能化が進むことに加え、熟練技術者の引退や労働人口の減少といった人材面の課題も深刻化しています。こうした中で、製品そのものの性能や品質だけでなく、製品から得られるデータをいかに活用するかが、製造業の新たな競争力の源泉となりつつあります。
現状と課題

日本の工作機械業界は、世界でも高い技術力を有し、2024年の出荷額は約1.5兆円(出典:日本工作機械工業会「工作機械統計」)と安定した市場規模を維持しています。しかし一方で、顧客の生産形態が 多品種少量・短納期対応 に移行しており、工作機械にはより柔軟で安定稼働する生産対応が求められています。
こうした環境変化の中で、工作機械メーカーは「製品の品質」だけでなく、「稼働後の価値提供」にも対応することが求められています。納入後の装置がどのように使われ、どのような条件で故障・停止しているかを十分に把握できていないケースが多く、稼働データの取得・分析不足がサービス品質向上の妨げとなっています。
そのため、製品出荷後のライフサイクル情報が分断されている現状では、アフターサービスの高度化や事業のサービス化に向けた基盤づくりが課題となっています。
主な課題
- メンテナンス
・ 現地対応中心で、移動や部品調達に多大な時間とコストがかかる - 稼働把握
・ 顧客現場の装置稼働状況を把握できず、故障原因の分析に時間を要する - 設計改善
・ 出荷後製品のデータを収集する基盤が無いため、実使用データを設計改善や次期モデル開発に活かせない - ブランド
・ 顧客のダウンタイムが長期化し、信頼性に影響を及ぼす
解決アプローチ
解決の方向性




装置の稼働データを収集・可視化し、活用できるようにする
製品出荷後に発生するデータを共有・分析できる全社共通の情報基盤を持つことが、製品価値を継続的に高めるための基礎となります。
解決手段
ThingWorx Smart Connected Products(SCP)は、出荷後の製品の稼働情報をIoT技術によって収集・統合し、 「可視化」から「分析」・「共有」・「改善」までを一貫して支援するIoTプラットフォームです。
ThingWorx SCPを活用する事で、各工作機械に設置したIoTゲートウェイを通じて、例えば、主軸の回転数、稼働時間、電流値、温度、アラームコードなどのデータを取得し、クラウド上のThingWorxに集約します。これにより、製造現場や顧客先に分散している機械の稼働状況をリアルタイムに可視化できます。
さらに、サイバネットでは稼働データを基にした異常傾向分析や予兆保全の仕組み化も可能で、 保守担当者が遠隔から状況を把握し、事前に対応を計画できる仕組みを実現します。 その結果、従来の「故障してから駆けつける」反応的な保守から、「故障する前に対処する」予防型の保守体制へと転換が可能になります。
| 課題 | 解決策 | 期待される効果 |
| 稼働状況の把握が困難 | IoTエッジゲートウェイ経由で各装置の稼働データを自動収集・統合 | 稼働率や停止要因の可視化、遠隔監視の実現 |
| 故障発生後の後追い対応 | 稼働データを基にした異常兆候検知、しきい値超過時の自動通知 | 予兆保全による停止時間短縮、保守コスト削減 |
| サービス部門の属人化 | ダッシュボードで共通データを参照、技術者間で状況共有 | 属人化解消、対応品質の標準化 |
| 設計・保守部門の情報断絶 | Windchill(PLM)連携により、稼働実績を設計部門にフィードバック | 実使用データに基づく設計改善・次期モデル開発 |
| グローバル展開での情報分散 | クラウド基盤で全拠点の装置情報を一元管理 | 海外・代理店拠点も含めた統合監視体制の構築 |
ThingWorx SCP 導入のメリット

突発的なトラブルの予防と保守コストの削減
製品の稼働状況や異常の予兆をリアルタイムに把握できるため、計画的な保守対応が実現できます。これにより、突発的なダウンタイムを回避し、保守・対応コストを最適化できます。

お客様満足度の向上と個別最適なサービス提供
利用データに基づいたタイムリーなサポートや、利用状況に応じたサービス提案が可能になります。製品販売後も継続的に顧客と接点を持つことで、満足度・信用度の向上、およびリピートや契約継続の促進につながります。

製品開発へのフィードバックループの構築
市場での実運用におけるリアルなデータを開発部門へフィードバックすることで、ユーザーニーズに即した改善・新製品企画が可能になります。開発サイクルの短縮や品質向上にもつながり、競争力強化を後押しします。

新たな収益モデルの創出
遠隔監視サービスや稼働状況に応じた課金モデル、サブスクリプション型契約など、実運用データを活用して新たなサービスのビジネスモデルを構築できます。

グローバル対応と拠点横断での一元管理
複数地域・拠点に展開されている製品や設備の稼働状況を、ひとつのプラットフォーム上で可視化・管理することで、現地に依存しない運用体制の構築が可能となり、グローバルレベルでのサービス品質の均質化や、各拠点の課題把握・運用最適化を支援します。
ThingWorx SCP 主な機能と特長
データ収集・統合:あらゆる機器やシステムと“つながる”柔軟性
センサー、PLC、産業用ゲートウェイ、OPCサーバー、エッジデバイスなど、多種多様な機器と直接接続し、データを収集することができます。Modbus、OPC UA、MQTT、REST、SQL、WebSocketといった主要な産業用プロトコルを標準でサポートしており、既存の設備やシステムとの統合もスムーズです。また、ThingWorx Edge SDKや専用エージェントを利用すれば、クラウド環境だけでなくオンプレミス環境でも柔軟な構成が可能です。

アセットの現状

複数アセットの稼働率一覧
ダッシュボードによる可視化:誰でも扱える、見やすく、使いやすいUI
専用の画面開発ツールにより、コーディングなしで監視用のダッシュボードや操作画面を作成することができます。開発したダッシュボードや操作画面はWebブラウザ上で動作するため、PC、タブレット、スマートフォンなど多様なデバイスからアクセスが可能です。リアルタイムグラフ、地図表示、状態インジケーターなど、豊富なウィジェットを組み合わせたり、ユーザーごとにアクセス権限や表示項目を設定することができ、業務や権限に応じた画面設計が行えます。

ダッシュボード (任意にカスタマイズ可能)
アラート・通知機能:異常や変化を瞬時にキャッチ・即座に対応
収集されたデータはリアルタイムで評価され、あらかじめ設定した閾値や条件に基づいて異常やイベントを即座に検出することができます。これにより、状態変化や異常発生に対してアラートの発報、イベントの記録、外部システムへの連携といったアクションを自動で実行できます。履歴の管理や状態遷移のトラッキングにも対応しており、分析やトラブル対応にも活用できます。
セキュリティ管理:産業IoTに不可欠な“安全性”を標準装備
セキュリティ面では、TLSによる通信の暗号化、LDAPやSSOによるユーザー認証、ロールベースのアクセス制御など、エンタープライズ向けの堅牢なセキュリティ機能を備えています。また、クラウド、オンプレミス、ハイブリッド構成いずれにも対応可能で、AzureやAWSなど外部クラウドサービスとの連携も視野に入れた拡張性の高い設計となっています。小規模なPoCから大規模な実運用まで、段階的なスケーリングが可能です。
システム構成例

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