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コラム

ベテランの勘に頼らない保全へ。現場主導で始める予知保全の第一歩

製造現場では、設備の異常やトラブルの前兆を、ベテラン作業者や保全担当者が経験的に察知していることがあります。

  • いつもと音が違う
  • 振動の出方が少しおかしい
  • この温度の上がり方は、過去のトラブル前と似ている

こうした判断は、長年の経験に裏付けられた非常に価値のある「現場知」です。実際、多くの工場では、ベテランの気づきによって大きな設備停止や品質トラブルを未然に防いできたケースも少なくありません。

しかし今、その“現場の勘”に頼り続けることが難しくなっています。
熟練者の退職や高齢化、人手不足、若手への技能承継の難しさ。さらに、多品種少量生産や短納期対応が進む中で、設備や工程の状態は以前よりも複雑になっています。これまでのように「経験豊富な人が現場を見ていれば何とかなる」という体制だけでは、異常の見逃しや判断のばらつきを防ぎきれない場面が増えているのではないでしょうか。

そこで注目されているのが、予知保全です。

予知保全とは、設備が壊れてから対応するのではなく、温度・振動・圧力・電流値などのデータから異常の兆しを捉え、故障や停止が起きる前に対策する考え方です。突発停止を減らし、部品交換やメンテナンスのタイミングを最適化することで、生産ラインの安定稼働や保全コストの削減につなげることができます。
ただし、予知保全と聞くと、多くの現場担当者はこのように感じるかもしれません。

  • AIやデータ分析の専門知識が必要なのではないか
  • センサーやシステムの導入に大きな投資が必要なのではないか
  • 現場の自分たちだけでは使いこなせないのではないか

こうした不安が、予知保全の導入をためらわせる大きな要因になっています。特に、これまで現場の経験や勘を重視してきた組織ほど、データ活用に対して「難しそう」「現場には合わなそう」という印象を持ちやすいかもしれません。
しかし、予知保全の第一歩は、必ずしも大規模なシステム導入や高度なAI活用から始める必要はありません。
むしろ重要なのは、現場の人が「これは自分たちでも使えそうだ」と感じられる形で、設備や工程の状態を可視化することです。

“勘”をなくすのではなく、チームで共有できる形にする

予知保全の目的は、ベテランの経験や勘を否定することではありません。むしろ、これまで一部の人の頭の中にあった判断基準を、現場全体で共有できる形に変えていくことにあります。
たとえば、ベテランが「この設備は停止する前に振動が少し変わる」と感じていたとします。その変化をセンサーで取得し、正常時と異常時の違いをグラフやマップで可視化できれば、経験の浅い担当者でも異常の兆しに気づきやすくなります。

これまで「何となくおかしい」と表現されていた感覚を、データによって確認できるようにする。
また、「ベテランに聞かないと分からない」状態だった判断を、チーム全体で再現できるようにする。
これが、現場主導で進める予知保全の本質です。
重要なのは、最初から完璧な異常検知モデルを作ることではありません。まずは、現場が日々感じている違和感やトラブルの前兆を、データで見える形にすることです。そこから「どのデータに変化が出るのか」「どの設備や工程から始めるべきか」「どのような判断基準なら現場で使えるのか」を確認していくことで、無理のない導入につながります。

多くの製造現場が抱える「人に依存しすぎる」5つの課題

多くの製造現場では、保全業務において次のような課題が起きています。

  1. 突発停止が発生してから原因を調査するため、生産計画や納期に影響が出る。
  2. 点検結果の判断が担当者によって異なり、異常の見逃しや過剰なメンテナンスが発生する。
  3. ベテランが退職すると、設備ごとのクセや異常時の兆候が分からなくなる。
  4. トラブル発生時に「誰に聞けば分かるか」が限られており、対応が属人化する。
  5. データは取っているものの、保全や改善活動に活かせていない。

こうした課題の背景には、現場のノウハウが個人に蓄積されており、組織として活用しきれていないという問題があります。
たとえば、設備が停止した後に原因を調査すると、現場では「そういえば数日前から音が変だった」「以前も同じような振動が出ていた」という話が出ることがあります。つまり、トラブルの前に何らかの兆候があったにもかかわらず、それを判断・共有・記録する仕組みがなかったために、対応が後手に回ってしまうのです。
このような状態を変えるには、現場の感覚と設備データを結びつける仕組みが必要です。
予知保全は、単にセンサーを付けてデータを集めるだけではありません。現場の人が気づいている変化をデータとして確認し、次のアクションにつなげるための取り組みなのです。

予知保全の定着のカギは「現場の納得感」にある

データ活用の取り組みがうまく進まない理由のひとつに、「現場が納得しないまま導入される」ことがあります。
経営層やDX部門が主導してシステムを導入しても、現場から見ると「何のために使うのか分からない」「入力や確認の手間だけが増える」「結局、今まで通りベテランに聞いた方が早い」と感じられてしまうことがあります。
予知保全を定着させるには、現場の担当者がその価値を実感できることが欠かせません。

  • 画面上で設備の状態が一目で分かる。
  • 正常時と異常時の違いが直感的に分かる。
  • 自分が感じていた違和感が、データ上でも確認できる。
  • 異常の兆しが出たときに、どの設備を確認すべきか分かる。

こうした体験があると、現場は「これは使える」と感じやすくなります。逆に、専門用語が多く、分析担当者でなければ理解できない仕組みでは、現場主導の活用は進みにくくなります。

専門知識はいらない。「信号機」のように直感的な可視化

そのため、予知保全の初期段階では、現場の方が直感的に理解できる可視化が重要です。異常の兆しを難しい数式や複雑なモデルで示す必要はありません。
たとえば、集めた複雑なデータを専門知识なしで扱えるよう、2次元のマップ上にプロットしてグループ分けする「類似性マップ」のような仕組みが有効です。これなら、現場の担当者はまるで信号機を見るように、「データがいつもと違う『注意領域』に入ったから、そろそろメンテナンスの準備をしよう」と直感的に判断できるようになります。
「いつもと違う」「この範囲から外れている」「注意が必要な状態になっている」とパッと見て分かることこそが、現場で本当に使われ続ける仕組みにつながります

まずは“小さく試して、現場で確かめる”

予知保全を始める際に、最初から工場全体を対象にする必要はありません。むしろ、最初は対象設備や工程を絞り、小さく試すことが現実的です。

最初に着手すべき4つの対象例

現場にとって課題感が明確な、以下のような対象から始めることで効果を確認しやすくなります。

  • 過去に突発停止が発生した設備。
  • 交換部品の在庫切れが納期遅延につながった設備。
  • 点検判断が担当者によってばらつきやすい工程。
  • 品質トラブルと設備状態の関係が疑われる工程。

また、予知保全では「データを取ればすぐに答えが出る」と考えるのではなく、現場の知見と照らし合わせながら確認していくことが重要です。

  • この変化は本当に異常の前兆なのか。
  • どのタイミングでアラートを出せば現場が対応しやすいのか。
  • 誤検知が多すぎないか。
  • 現場の作業負担を増やさずに運用できるか。

こうした点を、実際のデータや画面を見ながら検証していくことで、現場に合った予知保全の形が見えてきます。

「本当に自分たちでも分かるのか」を体験してみる

予知保全に興味はあるものの、導入に踏み切れない企業の多くは、技術そのものよりも「自社の現場で使えるのか」という不安を抱えています。
特に、これまでデータ分析にあまり取り組んでこなかった現場では、資料や説明だけではイメージしにくいかもしれません。

  •  「異常の兆しが見える」と言われても、実際にどのように見えるのか。
  • 「専門知識がなくても分かる」と言われても、本当に自分たちで判断できるのか。
  •  「現場主導で始められる」と言われても、どの程度の操作や理解が必要なのか。

こうした不安は、文章や資料だけで解消するのが難しいものです。だからこそ、実機やデモを通じて体験することに意味があります。
実際に設備の状態変化を見て、異常の兆しがどのように表示されるのか、自分の目で見て理解することで、自社の設備や工程に置き換えたとき、どこから始められそうかを考えることができます。
この体験を通じて、予知保全は「難しそうなDX施策」ではなく、「現場の困りごとを減らすための具体的な手段」として捉えやすくなります。

まずは、予知保全が自社の現場でどのように使えるのかを、実際に見て、触れて、体感してみてはいかがでしょうか。
サイバネットでは、予知保全の始め方を実機デモで体感できるセミナーを実施しています。故障の予兆を再現し、ITに不慣れな方でも異変を直感的に理解できる仕組みや、現場が納得しながらデジタル化を進めるための考え方を確認できます。
すぐに導入を決めるための場というよりも、まずは「自社の現場で本当に使えるのか」「どの設備・工程から着手できそうか」を見極めるための機会として活用いただけます。

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