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ALMツール導入はいつが最適?導入時の課題や解決のヒントも解説

近年、ソフトウェア開発を取り巻く環境は大きく変化し、開発サイクルの短期化や品質要求の高度化、チームの多拠点化・外注活用の増加など、課題が顕在化しています。こうした中で、開発プロセスの「見える化」やチーム間連携の強化を目的にALMツールの導入を検討する企業が増えています。
ALM(アプリケーションライフサイクルマネジメント)ツールとは、企画・要件定義から設計、実装、テスト、リリース、運用・保守に至るソフトウェア開発ライフサイクル全体を一元管理するためのプラットフォームです。分断されがちなプロセスと情報をひとつに繋ぐことで属人化を解消し、品質管理や進捗管理の精度を大幅に向上させます。
本記事では、ALMツールの導入に適したタイミング、導入時によくある課題とその対策について整理します。最後に、当社が提供するALMツール「Codebeamer」と導入支援サービスについても簡単にご紹介します。

目次

1. ALMツール導入が必要となる背景と最適なタイミング

ALMツールの特長は数多くありますが、どの企業にも必ずしも必要というわけではありません。
しかし、開発プロジェクトの規模や複雑性、関係者の多さ、品質要求の厳しさが一定の水準を超えると、個人やチームの工夫だけでは管理が追いつかなくなります。こうした状況に直面している企業ほど、ALMツールによる恩恵は大きくなります。

ALMツールが「今まさに必要」と言える企業の背景5つ

1. 複数プロジェクトを並行して運営している

製品群が多く、複数の開発ラインが同時進行している場合、それぞれのタスク・ドキュメント・レビュー状況が分断され、全体の把握が困難になります。
属人的な管理では手戻りや品質トラブルが頻発しやすく、一元的に進捗や関連情報を管理できる仕組みが必要になります。

2. チームや部門間の情報共有に課題がある

開発、品質保証、営業、法規対応など、関係部門が多岐にわたるほど、「情報が伝わらない」「言った・言わないのトラブルが発生する」といった問題が顕在化しやすくなります。共通の管理基盤がない場合、認識のズレが大きなコストやリスクにつながります。

3. 属人化や引き継ぎ不全が発生している

「誰が何をどこまでやったのかがわからない」「担当が変わると品質が落ちる」といった事象は、プロセスや情報の共有が十分に仕組み化されていない証拠です。トレーサビリティと変更履歴の可視化が可能なALMツールは、このような課題への対策に有効です。

4. Excelやメールベースの管理に限界を感じている

仕様書やテストケース、レビュー記録などをExcelやメールで運用していると、最新版の混在やレビュー漏れ、履歴の消失などが起きやすくなります。ファイルの分散や手動更新による属人性も強く、再現性やガバナンスの確保が難しくなる傾向があります。

5. 業界特有の規制対応や監査が求められる

医療機器、航空宇宙、製造業などでは、開発工程や成果物のトレーサビリティを文書で証明しなければならないケースが多くあります。ALMツールによる一元管理は、認証取得や外部監査への対応をスムーズに進める土台となります。

まとめ

ALMツール導入の最適なタイミング

ALMは、単なるツールの追加ではなく、開発体制そのものの見直しを伴う取り組みです。そのため、多くの企業で導入には何らかの契機があります。
例えば:

• アジャイル開発やモデルベース開発への移行を検討している
• 複数ベンダーや拠点を統合した体制を構築したい
• 不具合の再発やレビュー漏れが頻発している
• 情報システム部門が開発ガバナンス強化を進めたい
• グローバル対応やリモートワーク体制へ移行中

これらは、現場の「やり方」を根本から見直す絶好のチャンスでもあります。
ALMツールを導入することで、属人化や非効率を抜け出し、再現性のある高品質な開発体制を築く足がかりとなります。
続く第2章では、ALMツールを導入する際に多くの企業が直面する課題とその解決策について解説します。導入検討の「次のステップ」として、現実的な注意点を押さえていきましょう。

2. 導入で直面する課題とは?成功に導く解決策を解説

ALMツールは、開発プロセス全体を統合管理するための強力なソリューションですが、その導入は単なるツールのインストールではありません。現場の業務フローや組織構造を巻き込んだ変革となるため、導入にはいくつかの障壁や注意点が伴います。

ここでは、ALMツール導入を検討・推進する企業が直面しがちな代表的な課題と、その対策のヒントを紹介します。

✓ 課題:ツールの乱立による“現場疲れ”

既に開発現場では、JIRA・Git・Excel・メールなど、さまざまなツールが使われていることが一般的です。その中に新たにALMツールを導入する場合、「またツールが増えるのか」「切り替えが大変そう」といった心理的ハードルや現場の拒否反応が発生しがちです。

◎ 解決のヒント

ALMツールは、既存ツールを置き換えるのではなく、“つなぐ・整える”ために導入されるべきものです。実際に、当社が提供するALMツール「Codebeamer」も、JIRAやGit、Excelなどとの連携を前提とした構成が可能で、既存の運用を活かしたまま段階的に導入できます。

✓ 課題:プロセス標準化に時間がかかる

ALMの効果を最大化するためには、属人化されたプロセスや暗黙知の業務手順を明文化し、標準化する必要があります。しかし、このプロセスには多くの現場調整が必要となり、導入初期の障壁になることも少なくありません。

◎ 解決のヒント

ゼロからプロセスを定義するのではなく、業界別テンプレートやベストプラクティスを活用することで効率的な立ち上げが可能です。Codebeamerでは、Automotive SPICE(自動車)ISO 13485・IEC 62304(医療機器)などの標準に基づいたテンプレートが提供されており、こうした活用により初期導入の負荷を大幅に軽減できます。

✓ 課題:トライアル(PoC)では効果が見えづらい

ALMツールは複数のプロセスや部門をまたいで効果を発揮するため、短期間の試用では“本当に使えるのか”を判断しづらいという声も多く聞かれます。PoCが単なる“機能チェック”で終わってしまい、実業務にフィットするか見極められないまま導入を断念するケースもあります。

◎ 解決のヒント

重要なのは、「何を評価するか」を明確にしたPoCの設計です。当社ではPoC支援サービスを通じて、現場の課題を具体的に棚卸しし、評価観点を設定した上でPoCの進行を支援しています。導入効果の可視化と、社内への説得材料として活用できます。

✓ 課題:複数部門にまたがる導入体制が曖昧になりやすい

ALMは開発部門だけでなく、品質保証部門、情報システム部門、法務部門など複数の部署が関与するツールです。そのため、誰が導入責任を持つのか、どの部門が設定や運用を担うのかを明確にしないと、属人運用になりかねません。

◎ 解決のヒント

導入初期から「プロジェクト責任者」「推進役」「現場代表者」など、役割分担を明確化し、部門間の橋渡しをする体制設計が重要です。Codebeamerでは、ユーザーごとに操作権限や可視範囲を細かく設定でき、統制の効いた運用体制を構築できます。

まとめ

ALMツールの導入は、単なるツール選定ではなく「開発体制全体の見直し」とも言える取り組みです。
そのため、現場の協力、段階的な導入、外部ベンダーとの連携が不可欠となります。

ツールそのものだけでなく、「導入設計〜定着までの支援体制が整っているか」も、ALM導入の成否を分ける重要なポイントです。

※ALMツール導入を成功させるには?〜サイバネットシステムの伴走支援〜

ALMツール導入を成功させるには、単なるツール導入ではなく「課題の明確化」「PoCでの検証」「プロセス標準化」といった段階的な取り組みが不可欠です。その実現には、専門的な知見を持つ支援体制が大きな鍵となります。
サイバネットシステムでは、PTC社のALMツール 「Codebeamer」 を提供し、要件管理からテスト・監査対応まで一元管理を可能にします。
例えば、Automotive SPICE(A-SPICE)やISO 13485などの規格準拠テンプレート、JIRA・Git・Excelとの連携機能により、規制産業でも効率的かつ確実な導入を実現いたします。
さらに、PoC支援や運用ルール設計といった立ち上げから、トレーニングや標準化支援による定着、法規制対応を見据えた改善提案まで、各フェーズを伴走型でサポートしています。

▶ 導入の成否を分けるのは「適切なツール選定」と「伴走する支援体制」の両輪です。

課題解決の先にある「持続的に改善できる開発体制」を、私たちは現場とともに築きます。

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3.まとめ 〜ALMツール導入の検討を前に進めるために〜

ALMツールは、ソフトウェア開発における情報の分断や属人化を解消し、品質と効率を両立させるための重要な基盤です。本記事では、導入検討の目安となる以下のポイントを整理しました。

 

どんな背景・課題があるときに必要か:複数プロジェクトの並行進行、部門間連携の不足、属人化や規制対応の負担など、開発の複雑性や要求水準が高まる局面ではALMの必要性が高まる。

導入のタイミング:新しい開発手法への移行や体制再構築、不具合の頻発やガバナンス強化など、現場の限界を感じたときが見直しの契機となる。

導入時の課題:ツール乱立への懸念、プロセス標準化の難しさ、PoCでの効果検証の難易度、導入体制の不明確さなどが典型的なハードルとなる。

 

こうした課題は一見大きく見えますが、段階的な導入、業界標準テンプレートの活用、専門的な伴走支援を組み合わせることで十分に克服可能です。


ALMは、すべての企業に今すぐ必須というものではありません。しかし、開発の複雑性や負荷が高まったときに、導入を検討すべき有力な解決策となります。だからこそ、“いつ・どのように導入するか” を考える視点が重要です。 PoCなど小さな取り組みから始め、自社に合った形で導入を進めていくことが、持続的に強い開発体制を築く第一歩になります。

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