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精密機器メーカー R社様ワークステーションやサーバーコスト削減をクラウド対応で実現


精密機器メーカーR社の概要

R社は、精密部品/機器の開発から製造まで携わる精密機器メーカーです。数年前、R&D部門を担うA事業所は本社ビル敷地内から、同市内のオフィスビル内に移転。総勢150名ほどが勤務し、そのうち100人ほどが設計開発に携わるエンジニアです。

POINT
  • ワークステーションやサーバーコスト削減をクラウド対応で実現
  • クラウド対応で、空調設定温度の見直しなど環境問題にも配慮

設計者CAEが加速したことで、悩ましい課題も

製品の複雑化や短納期化と併せ、一層の低コスト化も求められる中、同社の設計開発では設計初期段階でのCAE活用を推進してきました。従来は数人ほどの解析専任チームが対応していたCAEシミュレーションを、設計現場全体で展開する、いわゆる“設計者CAE”によってフロントローディングに取り組んでいます。フロントローディング体制により、開発期間は半分ほどに短縮され、開発案件も多くこなせるようになり、この数年の同社の売上額にも反映されてきています。

事業所内でのCAEの解析者数や解析ケース数が急増する中、課題となっていたのが、ワークステーションやサーバの費用でした。同社においては繁忙期と閑散期の不規則な波があり、年に数回の大規模解析にも対応しながらコストを抑え計算リソースを確保しなければならないといったことが新たな課題となっていました。

併せて、近年の環境配慮問題への対応として、全社で省エネに取り組んでいました。それゆえに館内の空調設定温度の制限が設けられていましたが、設計者が多い故に、ワークステーションやサーバのせいで、汗ばむほどに室温が高くなりがちで、これでは機器にもよい影響を与えない上、技術者の集中力も阻害してしまっていました。

そうした課題から、R社ではCAE解析業務 のクラウド化を検討しましたが、セキュリティへの不安が払しょくできず、かつコストメリットもうまく明確にできませんでした。

クラウドサーバは従量課金で利用料金がかかります。その点、「ワークステーションやサーバは購入して管理する方が、追加料金はかかることはないのだから」といった反論もありました。セキュリティについては、ニュースで製造業の情報漏洩についての報道が多くあったこともあり、現場にクラウドへの漠然とした不安が広まっていました。結局、R社ではクラウドサービスの導入は一般事務の限られた範囲に安価なクラウドBIツールが採用されたのみで、設計開発での導入はいったん保留となってしまいました。

2020年に入ると新型コロナウイルスが世界でまん延し、社会全体で行動制限をベースとした「ニューノーマル(新常識)」による生活様式を余儀なくされたことで、R社でもリモートワークによる在宅勤務体制の導入に踏み切らざるを得ませんでした。出社が前提の解析環境であったため、在宅勤務体制への移行は簡単にはできず、さまざまな課題があり、解決策としてクラウドへの移行も再検討されました。

コロナ禍でのリモートワークをめぐる問題

R社でのリモートワーク開始時には、社内に設置されたサーバにアクセスするVDI(仮想デスクトップ)を導入しました。設計開発部門は、最初の緊急事態発令時から在宅勤務制度を導入し、在宅作業のエンジニアたちは3D CADやCAEをVDI経由で利用していました。

そこで問題となったのが、VDIを経由する際の、特にCADやCAEなどグラフィックリソースをたくさん使うソフトウェアの挙動でした。社内のマシンに複数のユーザーがアクセスするため、ネットワーク帯域が不足し、時間帯によってはソフトウェアへの操作がおもったようにできなくなる、あるいはフリーズするなど作業効率が落ちてしまう問題がありました。

さらに、VDI接続先のマシンの管理問題もありました。接続先のマシンの電源が入っていなければ、当然、VDI経由でソフトウェアは利用できません。そのため、常にマシンを立ち上げたままにしておく、あるいは誰かが出社して電源を入れなくてはなりません。これでは、接続元の自宅で電気代がかかる上に、社内でも引き続き一定の量の電気を消費し続けることになり、環境配慮の視点から望ましいことではありません。

またR社では、最初の緊急事態宣言が解除された後も、任意で在宅勤務は継続されていました。そのため、在宅勤務を予定している社員のマシンは電源を入れたまま帰宅する必要があり、あるいはウイルス感染や急病などで急遽在宅勤務となった社員のマシンは出社している誰かに電源を立ちあげてもらうなどの対処が必要でした。特に、後者の場合は、社内に誰もいなければ、VDIを利用したい本人が会社に許可を取りいったん出社するか、あるいは業務遂行を諦めなればならないこともあり得ます。

加えて問題になったのは、コロナ禍に追い打ちをかけるように襲った半導体不足と調達混乱でした。マシンを新たに買い替えたり、増やしたりしようとしても、ワークステーションやサーバの生産がままならないことから品薄で、しかも問題の完全解決の見通しは現在もまだ立たない状況です。

R社では、コロナ以外にも海外拠点の自然災害や、地政学的問題に見舞われる中で、今後の不確実な状況への対処は必須と考えて、リモートワークの体制は臨時ではなく恒久的に導入することを決めていました。そして、クラウドサーバであれば、上記のようなオンプレミスのマシンに起因する問題を一気に解消できることは容易に想像できました。

そうはいっても、やはり過去の検討で課題となったコスト面やセキュリティ面については、引き続き検討が必要でした。

サイバネットCAEクラウドで、クラウドへの懸念を一気に解消

R社がCADやCAEが使えるクラウドサービスを幾つか検討する中、同社はもともとAnsysのCAEソフトウェアを長年使い続けてきたこともあって、Ansys製品が簡単にクラウドで利用できる「サイバネットCAEクラウド」に白羽の矢を立てました。

サイバネットCAEクラウドは、長年のCAEソフトの販売・サポートを通して培ったサイバネットのノウハウを基に構築した、設計・解析技術者のためのクラウド版CAE環境です。

社内で懸念していたコストについては、R社で今回の導入推進に関わったCAE解析部門 課長のS氏 は、「サイバネットからの丁寧なアドバイスと合わせて、ベンチマークデータや最新情報を提供してもらいながら検討した結果、オンプレミスで運用を続けるよりも、R社の課題に対して柔軟に対応できるクラウドの方が投資 に無駄がないという判断に至りました」と言います。

「一度購入したハードウェアは、その当時では最高の性能だったとしても、数年も経過すれば陳腐化してきてしまい、それが業務効率や設計の成果にも影響します。その時々で必要かつ最新スペックのマシンが利用できるクラウドサーバの方が、投資対効果が高いと考えました」(S氏)。

さらに、Ansysの新しいライセンス体系「Ansys Elastic Currency(AEC)」をCAEクラウドと合わせて導入したことに より、クラウドサーバでのソフトウェアライセンスコストは使った分だけ 従量課金になるため、その時々に必要な計算リソースを確保しながら、コストの最適化が可能になったと言います。

サイバネットCAEクラウドは、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureを基盤とし、十分なセキュリティ対策が施されています。可用性、信頼性、拡張性の高いクラウド基盤上でサービスは運用されています。

さらにサイバネットのクラウドスペシャリスト が、R社の情報システム部と、S氏が在籍する開発現場との間に入ってコミュニケーションを取りながら、R社のセキュリティポリシーに合わせて、十分にセキュリティに配慮したクラウドシステムの構築を進めました。

「社内全体としては、事務関係を中心にクラウドサービスの導入が先に進んでいました。情報システム部のクラウドサービスへの安全性の評価も、数年前よりは高くなっていた状況も後押ししていたと思います 。加えて情シスが求めるセキュリティ対策をCAEクラウドでどのように実現するのか説明する自信があまりなかったのですが、サイバネットのクラウドスペシャリストに間に入ってもらったことで、情シスに納得して許可してもらうことができました」(S氏)。

R社が評価したのは、サイバネットCAEクラウドのGUIでした。その利点について、「シンプルで分かりやすく操作自体はすぐに覚えられ、サーバの起動・停止などの制御がブラウザ上で簡単に行えるため、情報システム部に頼り切りになることなく、在宅勤務体制でも効率よくリモートワークが行えています」とS氏は述べています。

またサイバネットCAEクラウドでは、高速リモートデスクトップサービスを提供しています。CAEソフトの画面を、従来の10分の1のデータ量まで圧縮してクライアントに送り、クライアントで展開することで、リモートアクセス時の遅延を極力少なくしています。さらに、Ansys以外のソフトウェアもクラウド上で利用できることも大きな利点であると言います*

*注:CAEクラウドで利用できるソフトウェアについては、サイバネットまでお問い合わせください。

導入前、S氏が気になっていたのは、在宅業務時のソフトウェアの挙動や、CAEのプリポスト処理までクラウド上で行えるかどうかでしたが、在宅作業時でも、プリポスト処理から計算処理までひととおり、通常の業務と変わりなく行えたということです。「最近、台湾拠点に出張した際も、現地の端末でサイバネットCAEクラウドにアクセスし、ストレスなくCAEのシミュレーションが行えました」(S氏)。

最後に

「必要に応じて計算リソースの確保がしやすくなったことで、大規模な流体解析や連成解析にも積極的に取り組めるようになりました」と、S氏は言います。従来は、計算リソース不足のためモデルの簡略化や解析条件の見直しで対応していましたが、必要な計算リソースを簡単に用意できるCAEクラウドにより、大規模な流体解析や連成解析も実行可能になったとのことです。

さらにサーバやワークステーションの大半をクラウドに移行したことで、夏季も居室のエアコンがしっかり利くようになり、快適な環境で業務ができるようになったと話しています。

現状では、ワークステーションやサーバをクラウドへ移行したことにより居室の省エネ化が実現しました。今後はサイバネットから提供される予定の「CO2削減量レポート」も活用していく計画とのことです。さらにクラウドの利用方法も、より無駄のない使い方を徹底して、全社で環境配慮へ取り組んでいきたいということでした。

今後、R社では、A事業所以外の拠点にも、サイバネットCAEクラウドの導入を広めていく計画です。