「サイバネットCAEクラウドを選んだ決め手は、充実した機能や堅牢なセキュリティを実現していることに加え、サイバネットのCAEソフトウェアやシステムに関する高い技術力でした」 大阪ガス株式会社 エネルギー技術研究所 計算科学・材料ソリューションチーム マネジャー 博士(工学)、気象予報士 西村浩一氏、主任研究員 博士(工学) 森哲哉氏
- ライセンスサーバーをクラウド化し、BCP対策とライセンス活用の効率化、運用負荷の抑制を実現
- ピーク時にもシステムリソースの柔軟な拡張が行える、計算サーバーのクラウド化にも対応可能な基盤を構築
大阪ガスの事業概要
都市ガスの製造・供給・やガス機器販売、電力の発電・販売を行う「国内エネルギー事業」、天然ガスや石油などに関する開発・投資を推進する「海外エネルギー事業」、そして、エネルギー事業で培った技術とノウハウを活かした都市開発や、材料ソリューション、情報通信ソリューションを提供する「ライフアンドビジネスソリューション事業」の3つを事業の柱に据え、ビジネスを展開する大阪ガス株式会社(以下、同社)。近年では、関西域外や海外におけるエネルギー事業の拡大、環境負荷の少ない電源ポートフォリオの構築のほか、新領域の事業拡大にも注力。「Daigasグループ」のブランド名のもと、170社以上のグループ企業が一体となり、革新的なエネルギー&サービスカンパニーへの飛躍を目指している。
同社は、サイバネットシステム株式会社(以下、サイバネット)が提供する「サイバネットCAEクラウド」を導入し、CAEソフトウェアのライセンスサーバーのクラウド化とともに、将来的な計算サーバーのクラウド化にも対応可能な基盤の構築を実現した。サイバネットCAEクラウドの導入に至った背景と活用法、今後の展望について、同社エネルギー技術研究所の西村氏、森氏にお話を伺った。
課題は災害や障害の発生時にも、シミュレーションを停止させない環境の実現
同社 エネルギー技術研究所では、1980年代後半からコンピューターを活用したシミュレーションを開始して以来、商品開発や営業支援、トラブルの未然防止などを目的に、流体・音響・構造・気象シミュレーション技術の開発と活用に取り組んできた。森氏は、「例えば、家庭用ガス機器の分野では、商品開発の支援を目的として、家庭用燃料電池『エネファーム』で使われる固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電流密度分布や熱流動状態の可視化をはじめ、耐久性評価を目的に、Ansys-Fluentを用いた電流・熱流体シミュレーションを行っています」と説明する。
そこで課題・要望として浮上していたのが、①障害や災害発生時でもシミュレーション業務を停止させないBCPの推進、②CAEソフトウェアの効率的なライセンス活用、そして、③大規模計算のピーク時にも柔軟にリソースを拡張可能な環境の実現、である。これらの課題解決に向け、同社が検討したのはCAE環境のクラウド化だった。
はじめにBCPの推進であるが、2018年、近畿地方に甚大な被害をもたらした台風21号の影響は同社にもおよび、停電で事業所内に設置されていたライセンスサーバーが停止。ネットワーク経由でCAEソフトウェアのライセンス管理を行うライセンスサーバーが稼働しなくなったため、シミュレーション業務が行えなくなる事態に見舞われたのだ。森氏は「このような事態に対し、ライセンスサーバーをクラウド化すれば、災害や障害の発生時にも他拠点や自宅からアクセスすることで、シミュレーション業務を継続できると考えたのです」と、説明する。
また、CAEソフトウェアの効率的なライセンス活用については、シミュレーション業務の拡大に対応する人的リソースの拡充、およびCAEソフトウェアの有効活用があった。西村氏は、「ライセンスサーバーをクラウド化すれば、他拠点や関連会社のスタッフも当研究所が利用しているCAEソフトウェアを使えるようになり、シミュレーション業務の人的リソース不足が解消に繋げられるほか、既存ライセンスの有効活用も図れると期待しました」と語る。
そして、柔軟なリソースの拡大が可能な環境構築だが、大規模技術計算を行うサーバーもクラウド化し、必要な時に必要なだけ、CPUやGPUなどのリソースを利用可能なCAE環境を実現することで、ピーク時のサーバー待機時間の抑制や、サーバーなどのハードウェア資源の調達・設定・構築にかかる手間やコストの削減を見込んだという。
サイバネットのサポートも評価ポイントとなり、サイバネットCAEクラウドの導入を決定
これらの課題解決に向け、複数のサービスを比較検討した結果、最終的に選択されたのがサイバネットCAEクラウドである。サイバネットCAEクラウドはポータル画面を通じてサーバーを作成するだけで、CAE環境をクラウド上に迅速かつ柔軟に構築可能なサービスだ。あらかじめCAEソフトウェアがセットアップされたイメージが用意されており、利用したいイメージを選択しサーバーの作成ボタンをクリックするだけでCAE環境が構築できる。仮想サーバーの構成やスペックの変更もポータル画面を通じて簡単に行えるほか、高速なリモートデスクトップ環境により、オンプレミスと同様の操作性も実現。セキュリティについても利用者ごとにプライベートなクラウド環境を用意するとともに、サイバネットCAEクラウドへの接続方式もインターネット、VPN、専用線などから選択可能だ。
サイバネットCAEクラウドを選択した理由は、これらの充実した機能群が備わっていることをはじめ、必要十分なセキュリティが確保されていること、そして、CAEソフトウェアだけでなく、インフラやセキュリティに関するサイバネットの高い技術力と、手厚いサポートにあった。
森氏は、「当時、複数のSIベンダーに提案を依頼したのですが、こちらが掲げる要件を十分に理解し、適切な提案をしてくれたのはサイバネットだけでした」と強調する。
「また、サイバネットCAEクラウドの仕様評価を行った時に、ソフトウェアのライセンスが読み込めないという問題が発生しました。原因はライセンス管理ソフトウェアのネットワーク設定にあったのですが、サイバネットはCAEソフトウェアからネットワーク、PC に至るまで徹底的に調査して原因を突き止めるとともに、当社の情報システム部門にも協力を依頼するなど多方面にわたって尽力してくれ、無事、問題を解決してくれました」(森氏)
障害時にも業務が止まらない“安心感”を獲得。将来的な計算サーバーのクラウド化も視野に
同社は2020年6月からサイバネットCAEクラウド上でライセンスサーバーの運用を開始したが、様々なメリットがもたらされているという。1つは当初より掲げていたBCP対策の実現だ。森氏は、「万が一災害が発生しても、サイバネットCAEクラウドによりシミュレーション業務が継続できるという安心感を得られたことは一番の導入効果ですね」と語る。また、ライセンスサーバーの運用をサイバネットCAEクラウドに移行したことで、保守メンテナンスや障害時の対応などに手を煩わされることがなくなり、コア業務である研究活動に専念できるようになった。
西村氏も「既存のCAEソフトウェアを別拠点や関連会社から利用できるようになったことも大きな効果として挙げられます。関連会社のスタッフにシミュレーション業務を行ってもらう際に、これまで要していたライセンス発行にかかる手間や時間がなくなりました。そうしたライセンス利用に関する効率化も大きなメリットですが、シミュレーション業務におけるマンパワー不足の解消にも有効になると期待しています」と評価する。
現状ではライセンスサーバーのクラウド化に利用されているサイバネットCAEクラウドだが、将来的には大規模技術計算サーバーの運用も行っていきたいという。
「先に述べたように、ピーク時には大勢のユーザーが計算サーバーを利用するので、どうしても待機時間が発生していましたが、そうした問題も解消できるようになります。また、テレワーク環境下でのシミュレーション業務の加速にも繋げられるようになるでしょう」(西村氏)
サイバネットCAEクラウドの導入で、シミュレーション環境のBCP対策の推進とライセンス活用の効率化を実現した大阪ガス。森氏は、「サイバネットはCAEソフトウェアだけでなく、ネットワークやインフラ、セキュリティについても高い技術力と知見、多くの実績を持っています。引き続きサイバネットには、当社のシミュレーション業務の効率性向上や課題解決に向けた支援をお願いしたいと考えています」と語った。
大阪ガス株式会社: https://www.osakagas.co.jp/