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事例・技術情報

数学教育で数式処理システムを普及させていく為には
甲南大学 知能情報学部 
高橋 正 教授

甲南大学にてMapleを利用した授業をされている高橋 正教授に、大学の全体や学部・学科単位などで幅広くMapleライセンスを利用できるサイトライセンスを活用した教育・授業について、また、長年テーマにされている数式処理システムの数学教育への応用についてお話をお伺いしました。

高橋 正教授のプロフィール


Maple サイトライセンス導入のきっかけを教えてください。

Mapleは1ユーザとして開発された当初から使っていますが、今日はMapleの教育利用ということで、現在甲南大学に導入されているサイトライセンスについて言及させていただきます。このサイトライセンスは、2008年度に甲南学園として新学部の環境を整備するために導入されました。

甲南大学では、理工学部の情報システム工学科を母体として「知能情報学部」を設立するために、設備および研究・教育環境を充実させました。Mapleもその一環として導入が決定され、多くの教員・学生が利用できるサイトライセンスにて導入・利用することとなったようです。私自身が赴任してきたのはその後の2010年度ですので、こうしたいきさつは2008年度に学部発足当時の事情を知っている方から後で教えていただきました。

甲南大学では充実した環境で様々なことを学べる環境が整っているのですね。具体的にどんな授業でMapleを利用されていますか?

学部の授業では、「代数学」と「数学基礎」、及び「卒業研究および演習」で利用しています。
「代数学」では、代数学で一般的に扱われる群・環・体の基礎的な内容を扱います。この授業科目では、年間に2回から3回、パソコン室で群演算を演習しています。その際に、Mapleを使用しています。

「数学基礎」は、文科系の学生が多く受講する授業科目です。この科目では、日常における現象を数学的に解説することにより、数学の有用性および美しさを実感させることを目的としています。データや実験数学のシミュレーションなどを、Mapleを用いて見せました。

「卒業研究および演習」では、計算代数の理論をゼミ形式で学習し、各自の課題を設定して卒論を作成する際にMaple を使用しています。

また、「卒業研究および演習」の前に行う学部3年生のゼミでは、連立代数方程式の解法、媒介変数表示された関数の陰関数表示の導出、初等幾何学の証明への応用、数式処理システムを用いた数学教育への応用などを紹介しています。このゼミでもMapleを様々な形式で使用しています。

その他、大学院のゼミでも、計算代数の内容を学習するのですが、この授業においても受講生に課題を与え、それを解決する際にMapleを使用するように指導しています。

色々な授業でMaple をご活用頂きありがとうございます!サイトライセンスをご導入頂いたことで、授業や学年を問わず利用の場が広がったのですね。
次に、高橋教授ご自身のMaple を利用した研究内容について教えて頂けますか?

私の研究では、「特異点定義方程式のパラメータ構造の研究」と「数学教育における数式処理システムの効果的利用に関する研究」においてMapleを利用しています。

「特異点定義方程式のパラメータ構造の研究」では、消去イデアルの計算をする際に、また、「数学教育における数式処理システムの効果的利用に関する研究」では、教材開発の際にMapleを使っています。

「数学教育における数式処理システムの効果的利用に関する研究」というと具体的にどういう活動をされるのですか?

そうですね、全て話すと長くなるので、今回は最近行った取り組みについてお話します。

最近の取り組みでは、2012年3月に日本数式処理学会教育分科会の研究会で「数学教育における数式処理システムの利用は普及しないのか?」というパネルディスカッションの司会をしました。

パネリストは東日本国際大学 中澤 房紀氏、愛知教育大学 飯島 康之氏、早稲田大学高等学校 吉田 賢史氏、福岡教育大学 藤本 光史氏で、それぞれの立場から見た数学教育における数式処理システム活用の可能性について話をしていただきました。

これは日本数式処理学会の教育分科会が企画したのですが、このパネルディスカッションを行うことで、数式処理学会会員及び一般の方々に数式処理システムを数学教育において効果的に活用してもらえるきっかけにしたかったのです。しかし、やはり長年取り組んでいますが、なかなか数式処理システムを数学教育で普及させていくのは難しいと感じました。

数学教育で数式処理システムを数学教育で普及させるのが難しい・・・確かに、私たちも数式処理ツール「Maple」を販売する立場として、日々どうすれば数式処理が広まっていくのか色々考えていますが最終的な答えが出ていない状態です。 高橋教授自身はどうすべきだとお考えですか?

大きなところでは、日本の教育に対する全体の仕組みが変わるべきだと思っています。特に大学入試です。例えば、大学入試に数式処理システムを利用できるようにすることです。

大学入試において数式処理システムを使用できるようになれば、高校では数式処理システムを利用した授業を行います。そして、その授業を準備することの手間も惜しまなくなるでしょう。このことはかつて、京都大学名誉教授の一松 信先生が言っておられました。

当時、私は、「それは極論だな」と思いましたが、最近は、「まさにその通り」と思えるようになりました。ただ、それを行うにはものすごくパワーが必要です。このパワーは、信念・説得力・研究業績・政治力などを含みます。その意味では、私では力不足だと思っています。

大きな変革を起こすには、極端な話ですが、数式処理システムの教育利用を推進している人が文部科学大臣になって、新聞記者の前で突然乱心するくらいになればと思います(笑)。大きな改革は、小さな改革の連鎖がなければ成就しないでしょう。その意味では、まだまだ小さな改革を目指すことが必要だと思っています。

大きな変革についてはなかなか難しそうですね(笑)。でも、確かに高橋教授のおっしゃることは一理あるかと思います。小さな改革を目指すという意味で、最後にサイバネットシステムや企業に対する期待を教えてください。

サイバネットさんや他の企業、さらには、数式処理のフリーツール化を広めている方々にお願いしたいことは、自分達の世界だけでコンテンツを持つのではなく、例えば作成した数学教材を色々なツールで発展的な教材にしていくことが、数式処理という技術(ソフトウェア)が普及するためには必要だということです。例えば、サイバネットさんだとMapleのコンテンツをいくつかお持ちだと思いますが、このようなコンテンツを、他の数式処理ツールでも利用できるような教材としてオープンにしていただくことです。色々なツールで利用できるようになると、使うユーザも増えますし、その教材がオープンソースで新たな展開をする契機になると思います。
閉じた世界は発展できないと思いますし、私自身もより広い世界に発展する夢を持ち続けたいと思っています。

取材を終えて

Maple を様々な場面でご利用いただく姿が印象的でした。また、数式処理ツールを販売する立場として、色々と考えさせられるユーザインタビューでした。貴重なお時間有難う御座いました。

(2012 年 7 月)



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