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事例・技術情報

「電力の見える化」と「工学教育」への
数式処理の活用
芝浦工業大学 工学部 電気工学科 パワーエレクトロニクス研究室
高見 弘教授

今回は、電力の見える化ツールの作成やILQ制御(Inverse Linear Quadratic)でMaple を企業との共同研究や大学の講義など様々な分野でご利用いただいている芝浦工業大学の高見弘教授にお話をお伺いしました。

高見 弘先生のプロフィール


先生の主な研究内容について教えて下さい。

研究内容はパワーエレクトロニクス全般ですが、コンバータ・インバータ・モータ制御や電力制御を主にやっております。企業との共同研究では、Mapleを使って制御系の設計を行い、シミュレーションで検証し、実際にコンバータやインバータを製作してモータ(同期モータ、誘導機モータ)を制御したり、いろいろな実験を通してモノを作っています。

先生は様々な企業と共同研究を行っているそうですが、その内容についてお聞かせください。

主なものは、産学協同スマートコミュニティ関連と、同じく電力関連の国の補助金で研究を進めるプロジェクト(以下、国プロ)です。まず、国プロからお話します。 正式には「地域モール街需要予測に基づく店舗連携電力使用量削減活動支援サービス実証モデル事業(平成21年度低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実施モデル事業)」といいます。分かりやすく言うと「ショッピングモールなどの電力の見える化を行なって、節電を進めましょう」という研究です。関東経済産業局から委託されて、これらを事業としている(株)情報数理研究所様、コスモライフ(株)様、(株)トラストシステム様と共同で千葉県内の大規模ショッピングモールを対象として研究を進めました。 まずは、利用電力の見える化と需要予測を行い、電力をどれくらい削減しないといけないかも含め見える化しましょうと。またそれをリアルタイムで情報を発信して、各テナントが意識的に電力削減・節電を心がけるようにしましょうというシステムです。

もうひとつのスマートコミュニティへの参加ですが、エネルギーの問題・地球環境の問題等、今急がなくてはいけない、早く解決していかないといけない問題ですので、それで取り組みをしようと思っていました。その中で、横浜スマートコミュニティ福岡スマートコンソーシアムから一緒にやりましょうということで始めました。横浜スマートコミュニティは発足時から関わり、50社以上の会社が参加しています。

ご研究では、Maple をどのように利用されましたか?

例えば、先の国プロにおいて、天候などさまざまな要因を含んだ各テナントの使用電力の傾向や特徴を分析・検討するための「電力の見える化ツール」および節電のための「電力予測エンジン」の開発を行うためのツールをMapleで作成しました。実際の電力の測定値は(株)情報数理研究所様から提供していただきました。元々ずっとC言語をやっていたので、C言語で電力の見える化ツールを作成しようと思っていたのですが、C言語だとグラフや、電力の見える化をアニメーションで表現するのがちょっと難しいなと、結構大変だろうなと思っていました。Maple なら 文章やリスト、グラフや数式がワークシート上で簡単に表現できるので、GUI 部分で見える化を表現するのが簡単になるだろうと思い開発を始め、3ヶ月くらいでツールを作ることが出来ました。このツールはショッピングモールの電力需要予測のエンジンで、GUIで指定した予想日に対して電力需要予測を行い、結果をプロットしています。


Mapleで 作成した電力の見える化と需要予測ツール

このツールの作成のためにMaple を使い始められたのですか?

いいえ。それ以前からです。元々は最適制御の逆問題(ILQ制御)を解析的に解きたくて色々なツールを探していました。1入力1出力(SISO)システムの制御であれば数値計算ツールでもボード線図等を描いて容易に制御系の設計ができますが、多変量(MIMO)システムの制御になりますと、手計算でも無理ですし、シミュレーションを試行錯誤的に繰り返すのも本当に大変です。それよりも数式で簡単に表現できて簡単な方法はないかなと思い、Maple 以外の他の数式処理ツールを使い始めました。ただ、そちらのツールは、式の入力や専門的な数学を知らないと出来ないところがあって、学生が利用するのに大変だなと思いました。そこでMapleに出会いました。Maple は入力や式の展開等非常にやりやすそうだったので。特に、最初にMaple を見て興味をもったのが、Maple上で作られたGUIアプリケーションでした。パラメータを変えてその結果の変化を見られるようなGUIだったのですが、値を入力するだけでなく、バーを動かして数値を変えたり、その結果でグラフが変わる(GUI部分)ところなど面白いなと思って。 これを使えば、もしかすると、バーを動かすだけで色んな条件を変えて、グラフを見ながら、最適な値を絞り込んでいけるじゃないかなと思いました。 じゃあやってみようかと思い Maple を使いはじめたんです。 Maple を使い始めたときは はじめに利用していたツールと同じように解を出すだけだったんですが、やっていくうちにだんだんこれも追加、追加という感じで色々な便利ツールを自前で作成していきました。

先ほど学生さんの話が出てきましたが、Maple を利用した授業等も行っていらっしゃるのですか?

はい。タイの泰日工業大学から芝浦工業大学に留学してきた先生のオファーで、タイで集中講義を行ったとき、Mapleを用いて制御工学の授業を行いました。泰日工業大学は出来て6年くらいの大学です。日本の企業が出資して出来た大学で、タイの自動車関係の企業に就職する学生が多い大学です。 講義の半分は日本語が通じます。就職先が日本の自動車関係の企業なので、学生も本当に日本語を勉強したがっていますね。学部3年生の1クラス80名くらいで、授業時間は2コマ×3時間を行いました。 制御工学の基礎としてのラプラス変換から入って、伝達関数を求め、時間応答、周波数応答などを行いました。
タイの先生が授業の内容やMaple に興味をもち、こういう風にやればMapleで授業が出来るのがわかったみたいです。そして、Maple のワークシートをタイの先生に差し上げました。

タイにもMaple を広めて頂いたのですね!ありがとうございます。最後になりますが、今後のご研究や将来の展望などがあればお願いします。

将来の展望として、数式処理をもっと世の中に広めていきたいですね。数式を利用して解析的に得られたものは数値とは比べ物にならないほどの(物理的な)情報を有しており、より深く解析、設計が可能になります。研究室や共同研究における重要な設計ツールとして力を入れていますし、論文も色々出始めていますので数式処理で色々できますよ、というのを広めたいですね。
また、電力の見える化をツールの改良や公開を行っていきたいです。実は長崎で開催されたスマートコミュニティの学会で、「電力需要の見える化」について発表したのですが、周りの先生方や色々な会社の方からの反響が大きくて。話していると同じ事をやっている方がたくさんいらっしゃることを知りました。 うちはここまでしか出来ませんでした、こういう風にやりましたとか。
今回開発した「電力需要の見える化」ツールも発展段階で特異日とかがうまく予測できていない部分とか、店(テナント)のパターンによっては予測しにくいものもありますので、必ずしも全てに対していいとは限らないんです。 例えば、飲食店ならこういうのがいいですよ、とか衣料品店ならこういうのがいいですよ、とか人の動きも時間帯も違いますし。Maple で作成した 「電力需要予測」を改良してたくさんの人が使えるようになるといいなと思うんです。また色々な見解の方がいらっしゃるのでその方達から見たときにこういう風にしたほうが良い等あると思うので、是非公開して色々使っていただきながら改良していただければと思います。特にこだわったのは、電力予測エンジンは誰でも自由にそして手軽に修正変更し、すぐにその評価ができるよう工夫した点です。

取材を終えて

昨今、電力の見える化について、省エネ対策他で取り上げてられており、「電力の見える化と需要予測」ツールを様々な方に活用していただきたいという先生の熱い思いが伝わってきました。高見先生はこちらのツールのMaple ワークシートを公開・編集可能とのことでしたので、ご興味ある方は高見先生までご連絡頂ければと思います。また研究されている中で様々な交流がうまれ、タイへの授業やスマートコミュニティへの参加等、積極的活動されている姿が印象的でした。高見先生、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(2012 年 5 月)



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