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数学の理解を広げ、数学の問題を考察する
関西学院大学 理工学部 数理科学科 示野 信一 教授
関西学院大学 理工学部 情報科学科 西谷 滋人 教授

今回は、関西学院大学 示野教授、西谷教授のお二方にお話をお伺いします。


示野先生のプロフィール

西谷先生のプロフィール

関西学院大学が取り組む先端の数学教育について教えてください。

示野教授
2009年度からスタートした数理科学科は、「数学」を核に応用も視野に入れた教育を目指しています。関心のある学生は、「数学」と周辺分野の関わり、つまり応用数理を意識して勉強していく選択枝が用意されており、コンピュータを数学研究のツールとして使いこなせるようになることが数理科学科の教育目的の一つと考えています。

先生の主な研究内容について教えて下さい。

示野教授
私は対称空間の幾何学と解析学を研究しています。代数・幾何・解析が絡み合う数学分野です。近年、研究でMapleを有効活用する機会が何度かありました。

西谷教授
私は計算機を用いた金属材料や半導体などの材料開発をしています。材料のマルチスケールシミュレーション分野の中で、電子レベルの第一原理計算、原子レベルの分子動力学、モンテカルロなどの手法を使用して、格子欠陥や状態図の研究をしています。

関西学院大学では「サイトライセンス」をご導入いただいていますが、今後どのようにMapleを活用した授業や研究を行っていくご予定ですか?

示野教授
学内にMapleが導入済みで、数理科学科独自のコンピューター演習室も用意し、Mapleを使用できる環境になっていますので、Mapleを教育現場で積極的に使っていこうと考えています。数理科学科では2年生向けに2科目の数式処理演習という授業があります。Mapleを用いた実習中心の授業です。Mapleの基本操作から学び、Mapleを道具として利用して「数学」の理解を広げ、「数学」の問題を考察することを目的としています。これは来年度から開講される科目で、現在準備を進めています。

西谷教授
示野先生の所属する数理科学科では2009年度の開設とともに、カリキュラムのなかでMapleを教える演習を組んでいます。全学生がMapleのコマンドを覚えていることを前提に授業を進めることができれば、授業内容をいい意味で、取捨選択することができます。つまり、計算や数式展開の細かな部分の省略が可能となります。また、授業で示した式の導出や図をネットに公開しておけば、後で自分の手で編集でき、試行錯誤を通して概念の修得と定着が期待できます。これが実現できれば、高等教育での数学講義や演習が次世代に進化することになると多いに期待しています。

Mapleを利用した講義の内容を教えて下さい。

西谷教授
今は数式処理演習と数値計算で利用しています。数式処理演習はグループでの共同学習を通して、「数学」の問題を解く方法を思い出してもらう授業になっています。数値計算では3つの使い方をしています。例えば、逆行列を教える場合で説明しますと、まず、Mapleの視覚化機能を使って、一次変換によるベクトルの移動を2次元座標上に示し、逆行列の意味を思い出してもらいます。次にMapleで逆行列を求めるのですが、これはコマンド1個で済みます。最後に数値計算のプログラムをMapleスクリプトで見せることでどのように解いているのかを示し、実際にコードに組み込む必要が出てきた時の参考にさせています。また、授業では更にBLASなどのLibraryにある高速ルーチンを使って速度を実感してもらっています。

なぜMapleを授業で利用するソフトウェアとして選ばれたのですか?

示野教授
私にとっては以前から使い続けているからというのが一番の理由ですが、使いやすさ、数学関連の豊富な機能、信頼性の点で、Mapleはもっとも有力な選択だと考えています。


西谷教授
情報科学科が2002年に理工学部内に開設されるときの設置経費で購入を決めました。その後も継続的に利用率が高く、また、文系の学部や高等部でも高頻度で利用されることから、学院全体で継続的にサイトライセンスの契約を結んでいます。Mapleを選んだのは簡単に計算や視覚化ができて、コマンドを覚えているのが理由ですが、私にとってMapleは母国語と同じレベルなんです。また、以前使用していた数式処理ソフトMathmaticaは構文を思い出すのに時間が掛かりましたが、Mapleはその様なことがほとんどなかったことがMapleを使い続けている理由です。これは、Lispに似たMathematicaが論理型の言語だったのですが、私自身はBasicやC言語などのprocを使っていたので、その構文が似ていたせいだと考えています。

教育でMapleを使う際に気をつけていらっしゃる点はありますか?

示野教授
Mapleを体験するとその機能に驚くあまり、「数学」を勉強する必要がないのでは?という感想を持つ学生がいます。一方で、Mapleが計算の答えやグラフィックスを出力したところで終わってしまう学生も見られます。実際は、Mapleを使いこなすには、考えている問題や関連する「数学」に対する理解が必要であり、Mapleに何をやらせるか、Mapleの出した結果をどのように考察するか、という点が非常に大切です。Mapleをツールとして使って問題解決していく姿勢を身につけるには、一定の経験が必要だろうと思います。授業の中でこれを実現していくことは容易ではありませんが、学生に考えさせることを常に意識して教育しています。

西谷教授
特にはないのですが、理屈を説明するよりも、実際に使用して見せることで直感的に学生さんの記憶に残すよう心がけています。

HPの中で、Mapleを使った教材が非常に多く見受けられましたが、問い合わせや反響も多いのでは?

示野教授
西谷先生はHPで非常に有益な情報を発信されており、私も参考にさせてもらっています。私の方は今後、教育や研究で実践したことをウェブを用いて積極的に発信していきたいと考えています。HPを見てメールを下さる方もいらっしゃいますし、また思いがけないところで見て下さっている方の存在を知ることもあります。色々な方々と交流し、私の方が教えてもらうためにも、ウェブによる情報発信は重要だと考えています。

西谷教授
HPからの問い合わせは少ないのですが、何かの折に先生のHP見ましたよとお声を掛けていただくことがあります。来年には書籍にまとめて出版を予定していますので、HPの内容をもとに研究室の学生さん達と体裁や内容について再度吟味をしているところです。

Maple、サイバネットへの要望や将来の展望などがあればお願いします。

示野教授
今やMapleは「数学」やその応用をカバーする巨大なソフトウエアとして発展を続けており、全体像がある程度つかめた時代とは隔世の感があります。研究や教育で私が使うのは全体のごく限られた機能ですが、今後とも使いやすさと信頼性を維持しながら発展していって欲しいですね。サイバネットシステムさんの方でもウェブで多くの情報を公開されており、Mapleの情報は充実してきていますが、オンラインヘルプの日本語化の拡大、ユーザー交流の場の提供など、より使いやすくなることを望んでいます。

西谷教授
Mac版を使っているのですが、editorの機能が無くなったようですね。昔はemacsライクなキーバインドでカーソル移動や編集ができたのですが、今はできません。ぜひ復活させて頂きたいですね。また、Mapleスクリプトをプログラミングの前段階でよく使うのですが、emacsなどに比べるとeditor機能が劣っています。確かに、ワークシートはレポートのWYSIWYG的な方向で成功していると思いますが、一方で、タブ、整形、カラー表示、キーバインドなどが充実したeditor機能を加える方向も考えて頂きたいと希望します。LaTeXを使いたがる数学者は、きっとそういうプログラマー的な使い方を好むと思いますので。

サイバネット:最後に学生に向けたメッセージをお願いします。

示野教授
理工系や社会科学など「数学」をツールとして使う分野に比べ、「数学」を専門とする学生の方が「数学」の使い方を知らない、応用に関心がないという面があります。もちろん、「数学」の基礎をしっかり勉強した後に、必要性や志向に応じてそれを活用していくという順序でも何ら問題はないのですが。Mapleや「数学」を学び、使いこなすには多少の経験が必要ですが、苦手意識などのマイナスイメージを持たず、自身が「数学」を理解できた状態、コンピュータを有効に使いこなしている姿をイメージしながら取り組んでいって欲しいと思います。

西谷教授
私は大学での「数学」は落ちこぼれでした。高校までは大学受験があるので演習を十分にしていたのですが、大学に入ると演習書で時間を取られるより、お酒を飲んで唄ってました(笑)。でもMapleが学生時代にあればもっと勉強していたと思います。大学の演習をする際に時間を取られてしまう微積分や行列といった「単純計算」やその公式を探すのにかかる手間をMapleはコマンド1個ですぐに行ってくれます。「数学」や物理の根本をもっと理解するために、ぜひ使ってほしいですね。

取材を終えて

学生さんへの先端教育を担う教授として、Mapleを通じて「数学の理解を広げ、数学の問題を考察する」というお言葉が印象に残りました。示野先生、西谷先生、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(2009 年 9 月 14 日)



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