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レーザーとはどのようなものか仕組みと
光学分野における2つの種類

光学分野におけるレーザーの知識を深めたい方に向けて、
仕組みや種類について解説します。

「レーザー」は日常の中でもよく耳にする言葉ではないでしょうか? しかし具体的に「レーザーとは何か」と問われると、ご存知ない方も多いかもしれません。 レーザーはさまざまな分野で活用されているものですが、実はさまざまな種類にわけられます。

今回の記事では、レーザーとはどのようなものか、概要と仕組みについて解説します。 そして光学分野における2種類のレーザーの特徴もご紹介しますので、レーザーについての知識を深めたい方はぜひ参考にしてください。

レーザーとは?

レーザーとは光を増幅させて放射する仕組みのことを指します。
つまり光の一種といえますが、通常の光源とは違い単色です。
自然光や人工光などの一般的な光は、さまざまな波長の光が入り混じっている状態であるため単色ではありません。
対してレーザーとは光の中からひとつの波長だけを選択して、単色のみを増幅させるものを言います。
また広範囲に広がる通常の光とは違い、一箇所に対してピンポイントで照射できるのも特徴です。
レーザーは光を増幅させて放射する仕組みのことですが、放射される光は自然光と比べるとまっすぐピンポイントで照射されます。

レーザーの仕組み

それではレーザーは一体どのようにして光を増幅させているのでしょうか。
基本的な原理とともに、光の波長ごとの用途について見ていきましょう。

レーザーの基本的原理

レーザーの仕組みは外部からエネルギーを吸収した原子が励起状態となり、遷移することにより光が放出されることです。
励起状態とは、エネルギーを吸収した原子が高いエネルギー状態へと移ることを指します。
励起状態の原子は高エネルギー状態になったかと思えば、すぐに低エネルギー状態に戻るなど不安定です。
原子のエネルギー状態の変化のことを「遷移」と言います。
そして原子は高エネルギー状態から低エネルギー状態へと移る際に、エネルギー差分の光を作り出します。
放出されたエネルギー差分の光は、他の原子にぶつかり、他の原子の遷移を引き起こします。
以上のように原子の状態の変化とエネルギー放出が繰り返されることにより、光が増幅されるのです。
増幅された光は同じ方向へと放射され、レーザー光となります。

レーザーの波長ごとの用途

レーザーは波長により用途が変わります。
波長ごとのレーザーの用途についても把握しておきましょう。

【波長ごとの用途】

  • 450〜635nm:室内照明・プロジェクター
  • 400〜800nm:記録・読込・感光・測定
  • 800〜980nm:感知・通信・医療・加工・測定・光通信
  • 1,300〜1,600nm:長距離光通信

人が目で見られる光の波長は、800nm前後までです。
800nm以上となると近赤外波長とされ目で見られなくなります。
そのため人が視認するための用途では低い波長の光が用いられ、精度や出力が必要な用途では光波長の光が用いられます。
800nm以上の光は通信にも利用できますが、低波長の光は損失が多くなり長距離伝送に向きません。
そのため長距離の光通信では1,300nm以上が利用されます。
レーザーの波長は400〜1,600nmと幅広いものの、波長により用途が変わることも知っておいてください。

レーザーの種類

レーザーにはさまざまな種類があります。
主な分類では「気体」「固体」「化学」「液体」の4種類に分けられます。
しかし今回の記事では、光学分野でよく用いられる「液体」と、「固体」の中の「半導体レーザー」をご紹介します。

液体レーザー

液体レーザーは媒質が液体であることが最大の特徴となります。
一般的に活用されているのは、有機溶媒の中に色素分子を溶かし込んだ色素レーザーです。
有機キレート化合物レーザーや無機レーザーは危険性があったり、効率的でなかったりするためあまり用いられていません。
色素レーザーの色素分子は発光スペクトルを大変幅広く持っています。
そのためさまざまな波長の光を連続して選択・変化させ続けられるため、レーザーによる分光測定や分析によく用いられています。
色素には短波長の光を吸収する性質があります。
そのためエネルギーを吸収した色素は励起状態となり、遷移によりエネルギーの放出を行い、レーザー光を生成する仕組みです。

半導体レーザー

半導体レーザーとは媒質に半導体が用いられている種類のことです。
特徴として原子のエネルギー放出で起こる光の波長域が広いことがあげられます。
半導体レーザーは光通信にも用いられますが、主に次の2種類が活用されています。

ファブリペロー型半導体レーザー(FBレーザー)

ファブリペロー型半導体レーザーは、シンプルな構造で汎用性の高い種類です。
半導体レーザーの基本小僧である「N型クラッド層」「活性層」「P型クラッド層」の3種類によるダブルヘテロ構造により構成されます。
活性層から誘導放出されることにより放射される仕組みです。

短距離の光通信の他にも、さまざまな用途で用いられているのがファブリペロー型半導体レーザーです。
しかし一般的なファブリペロー型半導体レーザーを光通信で用いると、伝送品質を低下させる恐れがあります。
高速パルスでの直接変調により、離散的な発光波長である「縦モード」と呼ばれる状態になることが品質低下の原因です。
また複数の波長で構成されていることから、信号波形が広がることも伝送エラーが起こりやすい原因とされます。

分布帰還型レーザー(DFBレーザー)

分布帰還型レーザーはひとつの波長のみでレーザー発振します。
レーザーの構造自体がファブリペロー型半導体レーザーとは違い、回折格子が用いられていることが特徴です。
回折格子とは鋭利な凹凸のある形状のことを指します。
分布帰還型レーザーではP型クラッド層に接する部分のN型クラッド層が、ギザギザとした凹凸形状をしています。
回折格子に光が照射されると、凹凸に対して2倍幅の波長となり光が増幅される仕組みです。

以上のように分布帰還型レーザーではひとつの波長のみを増幅させます。
そのためファブリペロー型半導体レーザーのように信号波形が広がることがありません。
長距離かつ高速の光通信にも対応可能です。

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、レーザーとはどのようなものか、仕組みや種類がご理解いただけたと思います。
レーザーとは単一の光を増幅して、まっすぐにピンポイントで照射するものです。
しかし一口にレーザーと言っても、さまざまな種類があります。

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