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光ファイバの基本構造と
種類・材質ごとに生じる用途と特徴の違い

光ファイバの導入を検討されている方に向けて、
基本的なつくりや種類など導入の際に知っておきたい知識をご紹介します。

「光ファイバ」と一言で言っても、さまざまな種類があることをご存知でしょうか?
そして光の伝送は種類や材質によりさまざまに異なります。
そのため導入を検討する際には、基本的な知識を得てから選ぶことが大切です。

そこで今回の記事では、光ファイバの基本のつくりに加え、種類や材質ごとに生じる特徴の違いについて解説します。
用途や目的にあったものを導入するための参考としてご活用ください。

光ファイバとは?

光ファイバとは光を伝えるための伝送路のことです。
光を用いて通信する方式を採用している製品において、光信号を流し伝えるためのものとされます。
しかし最近では光を用いた通信だけでなく、センサー・ファイバレーザーなどでも活用されています。

光ファイバの構造

光を送るためのものであった光ファイバは、近年になり活用のシーンが増えてきています。
それではどのようなつくりとなっているのでしょうか?
詳しく解説します。

光ファイバの基本構造

光ファイバの基本のつくりは、クラッドの中心にコアを内包する同心円状です。 クラッドはコアを物理的に保護して、コアとの屈折率の違いにより光を全反射させる役割を担います。
そしてコアとは光を伝える大元となる部分で、高い屈折率を持つことが特徴です。
クラッドとコアはいずれもガラス繊維で作られますが、クラッドの方が光の屈折率が低くなるように作られます。
そのため外装であるクラッドと内包されるコアの屈折率の違いにより、光の信号は全反射する仕組みです。

LDモジュールにより光信号を伝送

光信号を効率的に伝えるために、LDモジュールが利用されています。
LDモジュールとは金属のパッケージの中にリードを擁し、もう片方に光ファイバを固定する部品です。
LDモジュールの中には球型のレンズと棒状のロッドレンズが使用されており、効率よくレーザー光を伝えます。
レンズは光を拡散する作用を持つことから、コアへの集光を効率的にします。
屈折率の異なるクラッドとコアで光の反射率を高める仕組みです。
しかしLDモジュールを使用することにより、さらに光を伝える効率を高めています。

光ファイバの種類

光ファイバの基本のつくりは、クラッドの中にコアを内包する形状が基本です。
しかし4つのタイプがあり、タイプによりつくりや光信号を伝える方法が変わります。
それではそれぞれの種類について、特徴などを見ていきましょう。

シングルモードファイバ(SMF)

シングルタイプのファイバは、最もよく利用されているタイプです。
コアの大きさは小さく、一般的に直径10μmほどしかありません。
そのためシングルタイプのファイバでは伝送形態がひとつのみであり、光は直線的に伝えられます。
複数の光パルスを伝えられないことはデメリットといえます。
またコアの直径が細いことから折り曲げへの耐性が低く、破損しやすいこともデメリットでしょう。
しかし直線的であることから、光信号の到着時間が遅延する可能性が低いことがメリットとなります。
他のタイプに比べて価格も低めです。
シングルのファイバは光信号の伝送形態がシンプルで、一般的に広く活用されているタイプです。

用途

シングルのファイバの特徴から、近距離間の中小容量通信に用いられているのをよく見かけます。
しかし現在では長距離における大容量通信も高速で行えるタイプが多く利用されています。

マルチモードファイバ(MMF)

伝える形態がひとつのみのシングルモードファイバに対して、マルチモードファイバでは複数の光パルスを伝えられます。
複数の光パルスを伝えられる理由は、コアの直径が50μmほどと大きいためです。
大きなコアの中では複数の反射確度が異なる光パルスも伝えられます。
直径が大きいことから、シングルのファイバの弱点であった折り曲げへの耐性も備えているタイプです。
マルチに対応するファイバはさらに、次の2つのタイプにわけられます。

  • ステップインデックス型(SI)
  • グレートインデックス型(GI)

ステップインデックス型では、クラッドで光信号を反射させます。
光は反射を繰り返しながら進むため伝えるのに時間がかかり、パルスが重なることがデメリットです。

グレートインデックス型では、外側より中心の屈折率を高くしてパルス光の広がりを小さくしたタイプです。
ステップインデックス型のデメリットとして、反射によりパルスが重なってしまうことがあげられました。
しかしグレートインデックス型ではパルス光が重ならないような仕組みが構築されています。

用途

ステップインデックス型は、コアの直径が大きいことを利用して、光の力を伝えるためによく利用されています。
光を伝えるのに時間がかかり、光パルスが重なるため通信に使われることは多くありません。
対してグレートインデックス型では光パルスの重なりがなく、短距離であれば通信用途に用いることも可能です。

ダブルクラッドファイバ(DCF)

ダブルクラッドファイバは、名前の通りくクラッドが二重になるタイプです。
光はコアと内側と、二重になったクラッドの間の両方で伝えられます。
そのためシングルのファイバとしても、マルチに対応するファイバとしても利用できる利便性の高さが魅力です。
コアの内側ではシングルのファイバの光が伝えられます。
そして二重になったクラッドの間では、マルチモードファイバの光を伝えられる仕組みです。
2タイプの伝送に対応することで、どちらの光信号に対しても損失を抑えながら接続できることが強みとなります。
以上のようにクラッドが2つあるタイプでは、クラッドが二重になっており、2タイプの方法で伝えられる仕組みです。

用途

クラッドが2つあるタイプのファイバは、ハイパワーのレーザや光アンプ増幅媒体としてよく見られるタイプです。
またCATVポンプ/信号カプラ、蛍光イメージングなどの用途にも適しています。

フォトニック結晶ファイバ(PCF)

フォトニック結晶ファイバは、コアをホールで囲う形状です。
「微細構造ファイバ」「ホーリーファイバ」と呼ばれることもあります。
コアの周りには多くの孔が規則的・幾何学的に配置されており、蜂の巣のような形状が特徴的です。
そして蜂の巣のように開いた孔の部分は、屈折率がとても小さくなっています。
フォトニック結晶ファイバの特徴を活かすと、マルチに対応するファイバでのシングルモードで伝えるのも可能となります。
また非線形効果を得ることも可能です。

フォトニック結晶ファイバはさらに次の3タイプにわけられます。

  • エンドレス・シングルモード用フォト結晶ファイバ(ESM)
  • スーパーコンティニウム光発生用フォト結晶ファイバ(SC)
  • フォトニックバンドギャップ型フォト結晶ファイバ(PB)

エンドレス・シングルモード用フォト結晶ファイバでは規格化集荷数が2.4以下だとシングルモードで作動します。
スーパーコンティニウム光発生用フォト結晶ファイバは、違う波長の光を広範囲に発生させられることが特徴です。
フォトニックバンドギャップ型フォト結晶ファイバでは、従来のシングルのファイバでは取り扱いが難しかった光に対応します。
たとえばシングルのファイバでは溶けてしまうような大容量の光でも伝送が可能です。
フォトニック結晶ファイバはコアをホールで囲っていることが特徴ですが、そのつくりにより数タイプにわけられます。

用途

フォトニック結晶ファイバは超長距離伝送を目的とした用途に適しています。
孔の部分で伝えるためのつくりを実現でき、添加物が不要であることから伝えるときの損失が少ないためです。
またフォトニックバンドギャップ型フォト結晶ファイバでは、波長多重伝送・工業用大パワー光伝送などの用途に用いられます。
大きなパワーを持つ光を通しても、溶けたりプラズマが発生したりする可能性は低いでしょう。

光ファイバの材質

光ファイバの材質はガラス繊維が基本です。
しかし光以外のものを伝える用途にも活用されるようになったことから、材質も多様化してきています。
以前は石英ガラスがほとんどでしたが、次のようにさまざまな素材により作られるようになりました。

【素材一例】

  • 石英:0.2〜2.1μm
  • 多成分ガラス:0.4〜1.1μm
  • プラスチック:0.4〜1.7μm
  • フッ化物ガラス:0.4〜5.0μm
  • カルコゲナイドガラス:2.1〜9.0μm

材質は伝送波長に影響を及ぼします。
一覧では伝えられる光の波長に関しても記載しました。
選ぶ際には、素材ごとに対応する波長をチェックすることが欠かせません。
対応している素材で作られたものを選ぶようにしましょう。

光ファイバを選ぶなら用途にあった種類や材質のものを

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、光ファイバについての基本的な知識がご理解いただけたと思います。
つくり別にいくつもの種類があり、種類により用途もさまざまです。
また材質により伝えられる光の波長も変わるため、あらかじめ対応する波長を確認することも欠かせません。

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