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UV殺菌灯の仕組みと効果、注意点について

UV殺菌灯の仕組みと効果、注意点について

新型コロナウイルスの感染拡大により、UV殺菌灯(紫外線ランプ)の導入を検討する人が増えてきているといいます。
しかしUV殺菌灯は、本来地表には届かない強い紫外線(UV‐C)を照射するものなので、人体への影響も大きく、安易に使用することは大変危険です。
紫外線の殺菌効果、UV殺菌灯の仕組みや取り扱いについて、詳しく解説いたします。

UV殺菌の仕組みと効果

紫外線には、細菌やウイルスを殺す効果があることはよく知られています。
特に紫外線C波(UV-C)には、生物の細胞を殺すほどの、強い殺菌作用がありますが、人体への悪影響も確認されています。
お馴染みの紫外線A波、紫外線B波、紫外線C波は何が違い、UV殺菌というのはどのように細胞に作用するのでしょうか?

紫外線の種類

太陽からの光(電磁波)は、可視光線、赤外線、紫外線がまじりあって地球に届きます。
赤外線は、熱として感じる光のことで、目には見えません。
可視光線は目に見える光の名称で、植物の光合成に影響を与えています。
赤外線と同じように目には見えず、可視光線よりも波長の短い光が、紫外線となります。
紫外線(ultraviolet=UV)には、波長の長い順番に、A、B、Cの3種類があります。

【紫外線の種類】

  • 紫外線A波(UV‐A)……波長は315nm〜400nmと長く、オゾン層を通り抜けやすい。
  • 紫外線B波(UV‐B)……波長は280nm〜315nm。地上の全紫外線量の約10%
  • 紫外線C波(UV‐C)……波長は100nm〜280nmと短く、オゾン層に吸収され、地上にはほとんど届かない。

太陽から降り注ぐ紫外線のうち、最も有害な紫外線C波は、地球の周りの大気やオゾン層にさえぎられます。
紫外線B波もオゾン層で減らされ、有害な紫外線が地表に届きにくいため、地球上は生物が生きていける環境となっています。

紫外線C波(UV‐C)の殺菌効果

地表には届かない紫外線C波(以下、UV‐C)には、強い殺菌効果があります。
その殺菌効果を利用して、菌類、ウイルス、カビなどの除菌・殺菌を行うシステムが紫外線殺菌です。

細菌やウイルスを含むすべての生物には、細胞核の中に、DNAが存在します。DNAとは、いわば「体の設計図」で、体の細胞、臓器などがDNAの情報にもとづいて作られています。

DNAに一定基準の紫外線を照射すると、DNAの核酸に吸収され、DNAの鎖を変化させます。鎖が変化し、コピー機能を失ったDNAは、正常に増殖することができなくなり、死滅(不活性化)するのです。

細菌などのDNAは、260nm付近の紫外線をよく吸収します。
そのため紫外線の殺菌力は、260nm付近のものが最も強く、直射日光の紫外線(約350nm)の1600倍の殺菌力があると言われています。

この殺菌力をもつ波長域の光線(紫外線)を利用して、照射することで殺菌を行うものが「紫外線殺菌灯(紫外線ランプ)」です。
現在使われている殺菌灯は、253.7nmの波長のものが多く、細菌やカビ、ウイルスなどを短時間で死滅させる力があります。

UV殺菌灯を使用する際の注意点

殺菌作用のあるUV殺菌灯(紫外線ランプ)は、もともと病院や工場などといった、殺菌を必要とする業務上の施設などで使われてきました。
しかしここ数年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、紫外線ランプの使用は一般家庭にも広がっています。
手軽に入手できるUV殺菌灯(紫外線ランプ)ですが、使用にあたっては、細心の注意と厳重な管理が必要となります。

人体への影響

先ほどもお伝えした通り、紫外線は細胞のDNAを破壊してしまうため、人体に当たるとDNAに損傷が起きます。
UV殺菌灯は、本来地表には届かない強い紫外線、UV‐Cを使用して殺菌するものなので、夏や雪山での直射日光などよりも圧倒的に強い紫外線が照射されています。

そのため、UV殺菌灯の青白い光に当たってしまうと、皮膚にひどい日焼け症状を起こしたり、角結膜炎などの目の炎症が起きたりすることがあり、眠れなくなるほどの強い痛みを起こすこともあります。
また場合によっては、目や皮膚に障害が残る危険性もあるので、使用には細心の注意が必要となります。

物への影響

紫外線は、物に当たると、物の表面で吸収されてしまいます。
人間や動物には修復能力があるものの、物には修復能力がないため、紫外線が当たることでダメージが蓄積されて、劣化していきます。
布に紫外線が当たり続けると、色が変化(退色)してしまうことも、物の劣化現象のひとつです。

殺菌効果の範囲が限られている

紫外線が当たる角度も関係し、斜めから紫外線が当たることでエネルギーは弱くなります。
そのため、殺菌効果も弱くなります。
また、光は直進するため、物の裏側(陰になる部分)など、光の当たらない部分での殺菌効果はありません。

新型コロナウイルスへの有用性

新型コロナウイルスの感染拡大により、手軽に殺菌・除菌ができるものとして、UV殺菌灯の使用が一般家庭でも広がってきています。
しかし、殺菌灯の光は人体への影響も大きく、扱いに厳重な注意が必要なことから、まだ実用性が高いものとはいえません。

新型コロナウイルスへの効果

他の細菌やウイルスのように、新型コロナウイルスも、253.7nmの波長の紫外線をコロナウイルスに照射することで、ウイルスを損傷させ、不活性化することが確認されています。
また新型コロナウイルスの変異株においても、ウイルスの不活性化に紫外線が効果あることが判明しています。

【参考】 紫外線照射による新型コロナウイルス不活化のメカニズム

一般消費者が使用するUV殺菌灯の実用性

紫外線の新型コロナウイルスへの有用性が確認されてきていることから、UV殺菌灯(紫外線ランプ)の利用が一般家庭でも広がってきています。

しかし、重ねてお伝えしてきた通り、UV殺菌灯に使われているUV‐Cは、本来地表に届くことのない強い紫外線です。人間や動物、物質への影響も大きく、危険な光であることを認識しなくてはなりません。

紫外線の殺菌効果は、照射の距離や角度なども関係し、紫外線の当たっていない面(陰になる部分など)に殺菌漏れが生じたりするため、十分な殺菌効果が得られない場合もあります。
また、ウイルスを確実に殺菌するためには必要な量のUV‐C の照射が不可欠となり、数秒程度の照射では、ウイルスの殺菌効果はありません。

UV殺菌灯で、安全かつ確実にウイルスを殺菌するためには、専門家のアドバイスのもと、安全な装置を選び、使用する必要があります。
一般の消費者が、容易に購入して使用することは、大変危険で扱いも困難なため、おすすめできません。

安全で確実なUV殺菌装置の開発、扱いのために

UV殺菌の仕組みや効果、UV殺菌灯(紫外線ランプ)を使用する際の注意点などについてお伝えしてきました。

サイバネットでは、紫外線による殺菌効果のシミュレーション技術を提供しています。
このシミュレーション技術で、紫外線照射によって生じる「陰になる部分の殺菌漏れ」や「光の当たり具合による必要照射時間」などを詳しく予測できます。
殺菌装置の開発期間の短縮、製品化のコスト削減などが期待できるサイバネットのエンジニアリングサービス(委託設計/解析)をぜひご活用ください。

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