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用語集

GLOSSARY

伝送特性

伝送特性とは

通信において、信号送受信装置や伝送媒体の、信号伝送上の特性を伝送特性といいます。光ファイバ通信においては、光ファイバの伝送特性が通信システム全体の性能を大きく左右する場合が多くあります。特にシングルモード光ファイバを使用する高速長距離光通信では、損失特性と波長分散特性が重要です。

デジタル信号の伝送損失の様子を図に示します。送信時(左図)に大きなレベルを持つパルス波形(ON-OFF信号)が長距離を伝播すると信号が減衰しますが、受信時(右図)に損失が大きいとノイズの影響が大きくなり、ON-OFFの判別エラーが発生しやすくなります。

伝送特性01

光デジタル信号送信側時間波形(左)

伝搬後受信側時間波形:光ファイバの損失による影響(右)

一方、波長の違いによって光ファイバの伝搬速度に差が発生します。これを波長分散といいます。この波長の差は、光源の持つ波長スペクトルの広がりや、変調による波長スペクトルの広がりに依るもので、長距離伝搬後の信号波形の乱れをもたらします。

波長分散によるデジタル信号への影響の様子を図に示します。時間的に変化しているパルス波形の光信号を単純化して、波長AとBの2つの光の合成波とします。この光信号を送信すると、送信時(左図)では正常な波形が、長距離の伝搬後(右図)には乱れます。波長分散により波長ごとの伝搬速度の差が表れ、全体としてON-OFFの判別の難しい形状となり、エラーが発生しやすくなります。

伝送特性02

2波長で合成されている入力信号:波形の形は各成分、合計共に同形(左)

伝搬後の信号:2波長の各波形は乱れていないが、時間がずれているため合計の波形は乱れ発生(右)

一般のシングルモードファイバでは、「損失が最小となる波長」と「波長分散が最小となる波長」が異なるため、注意が必要です。

損失波長特性を下図に示します。「損失が最小となる波長」は通常1.55μm帯(矢印)です。

伝送特性03

光ファイバ損失波長特性の特徴:最小の損失は1.55μm(右側矢印)

波長分散特性を下図に示します。波長分散はps/nm/kmの単位で示され、波長差nm当たり、距離km当たりの伝搬時間差ps(ピコ秒)の意味を持つ数価です。「波長分散が最小となる波長」は、通常1.3μm帯(矢印)です。

伝送特性04

光ファイバ波長分散特性の特徴:波長分散最小(ゼロ)は1.3μm付近(左側矢印)

2つの図でわかるように、最適の波長が異なるため、高速で(10Gbitオーダー)、長距離(中継器間隔が数10km超)の光ファイバ通信においては、損失と波長分散のどちらも考慮しなければなりません。なお、波長分散に対し対策を施した分散シフトファイバなどが実現されています。

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