今回の設計コンテスト、優劣を決めるMFは(入射瞳径EPD)×(最大画角)です。
それを頭に入れつつ、まずは仕様をじっくり眺めました。
やはり気になるのは波面収差の仕様、「RMS波面収差が0.070 λ以下」です。
これは直感的に考えてもかなり厳しい仕様です。
簡単に計算してみると、RMS波面収差が0.07λのときストレール比は0.8になります。
発生する収差がゼルニケ多項式の3次の球面収差(Z9)だけと仮定すると
のような波面となります。
このような結像性能を一般的に回折限界と呼ぶようです。。
ということは、回折限界の性能を持つモデルを設計しなければいけません。さぁ大変。
EPDを大きくとると、球面収差は大きくなる傾向があります。球面収差が大きくなると、波面収差も大きくなります。
ということは、今回設計する光学系、やはり球面収差を徹底的に除去しなくてはなりません。
ここで思ったのは、各画角の光束が1つのレンズの異なる領域を通過してしまうと球面収差の補正が大変だなぁ、ということです。
こういった光路だと、軸上画角の球面収差補正と軸外画角の球面収差補正を別々に考えなければいけません。
さらに画角依存収差(コマ収差や非点収差)の補正も考えなければなりません。
じゃあ球面収差の補正は各画角の光束がほぼ同じ領域を通過するところでしたらいいのでは?と考えました。
下のような光路だと球面収差の補正がしやすそうです。
光束が重なると、全画角の球面収差を一括して補正することができます。
さらに、軸外画角の光線通過位置が低くなるので、画角依存の収差もあまり発生しなさそうです。
ただ、こういった光路は光学系の“後半部分”で出てこなければいけません。
光学系の前半部分では、画角によって光線入射角度が異なるので、各光束がどうしても重なりません。
画角を大きくとるためにはどのようなレンズ構成がよいのでしょうか?
先ほど予想したように光学系の後半部分で各画角の光束を重ねる必要があります。
このような光路をとらせるための光学系の前半部分の構成を予想します。
たとえば、前半部分が凸レンズだと、
光の射出角度はきつくなります。
一方、凹レンズだと、
ゆるくなります。
つまり、画角を大きくとって、かつ光学系の後半部分で光路を重ねるためには、前半部分が負のパワーを持つレンズ群でないといけなさそうです。
これで光学系の最初と最後の部分の予想レンズ構成ができあがりました!
残るは光学系の真ん中のレンズ構成です。
どういった構成がいいのでしょうか。
真ん中のレンズ構成を予想するために考えたことを以下にメモします。
そこで先人の知恵を拝借しました。
今まで設計されてきた様々な光学系の中から、以下の3タイプが良さそうなのでは?と予想しました。
レンズ枚数が多く、収差の補正がよく行われている光学系は・・・?と考えて思いつきました。
ステッパー光学系です。
ただ、ご存知の通り、ステッパー光学系は有限共役系です。
でもこのステッパー光学系、最初の凸レンズ群を取り除けば入射光側がコリメート光(=無限共役系)となりそうです。
以下はステッパー光学系からレンズを何枚か抜いて無限共役系とした光学系です。
予想したレンズ構成とも一致します。
レンズ枚数が多いから2次結像系もありえそう。。当初は漠然とそう思っていました。
ただ、よく観察したところ、収差補正上の自由度が高いことに気づきます。
まず、通常の光学系でもそうですが、絞り位置では軸外画角の主光線が光軸と交わります。
このとき、軸上画角のマージナル光線は通過位置に高さがあるため、絞り位置付近のレンズではマージナル光線を主にコントロールすることができます。
その発想をこの2次結像系にあてはめます。
2次結像系では、1次結像位置で軸上画角のマージナル光線が光軸と交わります。
結果として、この位置では軸外画角の主光線を主にコントロールできそうです。
つまり、通常の光学系と違って、2次結像系ではそれぞれの光線を優先的にコントロールできる位置が別々に存在することになります。
これは良さそうです。
ただ、このレンズタイプ、予想したレンズ構成とは異なり正レンズ群が先行しています。
ですが、それを上回る(かもしれない)長所を見つけることができましたので、予想レンズタイプの1つとしました。