「脳神経血管領域におけるMRI画像について、当施設ではFusion 3D 画像処理を行っている。処理画像は臨床的に非常に有用であり、診断のみならず患者等のインフォームド・コンセントまで使用される。また、処理画像にINTAGE Volume Player 5(サイバネット社製)を使用し表示することにより、新たな3次元画像の可能性を感じさせる。」
東海大学医学部付属大磯病院 放射線技術科 渡辺一廣氏
使用製品 Real INTAGE
東海大学医学部付属大磯病院では、シミュレーション用3D画像作成にReal INTAGEを活用しています。渡辺様にお話をお伺いしました。
MRI領域における3D画像処理は、CT領域に比べると適用が少ない。これは、現段階ではCT画像が分解能に優れているためと、MRI画像は同一部位で幾つもの撮像を行い、それぞれの画像の持つ意味合いを総合して診断を行う特質があり、あまり3D画像を必要としないためと考えられる。
今回は当施設で行っている頭部MRI領域におけるFusion 3D 画像を紹介し、3D画像の有用性を改めて問う。また、処理した3D画像をどの様に提供するかについて、INTAGE Volume Player 5(サイバネット社製)(以下IVP5)を用いたソリューションの一端を紹介する。
Fusion 3D 画像処理の手順を、脳梗塞の症例を例に図1に示す。MRA画像をベースにDiffusion 画像を線形補間し、3軸のレジストレーションを行う。
Fusion 3D VR 画像処理として、MRA画像をグレースケールの3D Volume 画像にDiffusion 画像の梗塞部位の高信号成分のみを自動抽出しカラー画像とし、この2画像をblend しFusion 3D 画像を作成する(図2)
図1 Real INTAGE (3D ワークステーション) によるレジストレーション |
図2 Real INTAGE (3D ワークステーション) によるFusion 3D 画像処理 |
症例は左中大脳動脈閉塞よる急性期の脳梗塞である(図3)。従来のDiffusion 画像と比較すると梗塞部位の解剖を3次元的に非常によく把握することができ、テンプレートの設定により図3に示すように血管と梗塞部位との位置関係も3次元的に把握できる。よって、患者等のインフォームド・コンセント用の画像として十分使用できる。
症例は神経膠腫(gradeⅢ)であり(図4)、手術を目的とするため腫瘍本体・動静脈・脳表等画像が必要とされ、従来、目的部位ごとに多数のシーケンスが走らされるのが現状であった。
しかし、全脳造影MRA画像をベースに3DVR画像処理やFusion 3D画像処理を行うことによりDiffusion 画像との2シーケンスだけでも腫瘍と動静脈の関係が明確にでき、Fusion 3D 画像と造影MRA画像を比較することによって腫瘍性状や進展方向等が推定できる可能性がある。また、脳表VR画像により実際の手術時のナビゲータとしての役割も果たせる。
症例は左中大脳動脈狭窄症(M2分岐部)であり、外頚動脈とのバイパス手術を目的に検査が行われた。問題となったのは、中大脳動脈の狭窄部より先の血管が脳表のどの位置を走行するかであった。3DCTAでは血管をマッピングした脳表VR画像をうまく処理することができず、非造影のMRA画像を用い狭窄部より先の血管のみを抽出し、これを元の画像にFusion することにより血管をマッピングした脳表VR画像(図5)を作成することができた。この画像をナビゲータとして、実際に手術が施行された。
症例は左顔面痙攣で(図6)、所見は左顔面神経起始部直下を左前下小脳動脈と左椎骨動脈が上下に並走し、左椎骨動脈は顔面神経根幹方向内側に左前下小脳動脈は外側下方向へ走行する。これらの血管による顔面神経への圧排が考えられる。cisterno 画像だけでははっきりしない動脈と脳神経の区別も、血管のみ抽出したMRA画像とFusion することにより明確に表現された。顔面神経部位での3D画像処理は解剖的な理解を深めるために有効であった。また、内視鏡モードを用い手術のナビゲータとして利用できる可能性が示された。
今回紹介した症例はFusion 3D 画像処理を行うことで、Fusion を行う2つのMRI画像の臨床所見を1つの画像に3Dで表現したものである。特にFusion 3D 画像処理を行うために特別なシーケンスを用いた撮像を行ったものではない。どの施設でも普通に行われている撮像であり、3Dワークステーションがあれば同じような処理が可能である。これからの時代に望まれる3D画像とは、患者が見ても、専門医が見ても、だれが見ても分かりやすく説得力のある画像だと思う。
また、当施設では3TのMRI装置を持たないが、頭部領域において今回行ったFusion
3D 画像処理を3Tの画像データで行えば、より細かな血管・神経まで描出することができ、よりマクロな世界を3D画像で表現できるものと考える。
IVP5は3Dワークステーションではない。しかし、3Dビューワというだけでなく、仮想内視鏡まで操作できる。そのまま3Dボリュームプレーヤという表現が一番的確である。但し、実際に使用しないとこの利便性と汎用性については理解されないだろう。
当施設では、よりライブな3D画像を依頼医に提供するためにIVP5を使用している。これは依頼医が好きな場所で自由に3D画像を操作できなければ本当の3D画像とはいえないと考えるからである。そういった意味では、IVP5は現段階では理想的な3D画像ツールである。
IVP5の使用法は、最初にINTAGE 3Dワークステーションにて3D画像処理されたものを3D Volume データ(IVPデータ)としてワークステーション上に保存する。このIVPデータをUSBメモリにて個々のPCにデータを移動させ、サイバネット社のホームページよりダウンロードしたフリーソフトIVP5により3D画像を操作するものである(図7)。
操作性については3Dワークステーション上で処理された3D画像を観察するのと同等の感があり、特に仮想内視鏡モードの操作性に優れている。また、操作の応答速度等はPCの性能により異なる。
3D画像処理において3Dワークステーション上における画像処理技術ついては大きく進歩してきたが、フィルムレス・PACS化という時代を迎え、3D画像処理を行った後の画像をどのようにするのかという大きな問題を抱えている。ここでIVP5におけるデータ圧縮についてMRAのデータを例に挙げて述べる。MRAのDICOMデータ65MBを抽出等行わず、図8に示すように画像全体を3D Volume IVPデータとして保存すると33MBに圧縮され、データ量は約1/2となる。また、血管抽出を行った血管のみの3DIVPデータでは元のDICOMデータの1/100以下に圧縮される(図8)。
このように、MRA撮影の目的が血管の描出のみであればDICOMデータを保存せず3DIVPデータで保存すれば、1/100のデータ量となる。その上どのPC上であれ、データを呼出しただけで3D画像として診ること・操作することが可能である。また、3D画像が0・6MBの大きさであればWeb上での画像配信も可能であり、遠隔診断等に役立てることも考えられる。
いずれにしろ、DICOM規格にとらわれずにIVPデータ保存のような手法を用いなければフィルムレス・PACS化を迎え、3D画像の抱える問題は解決しないと考える。
お忙しい中、インタビューにご協力いただきまして、誠にありがとうございました。