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マイクロマグネティックスの説明とシミュレータと背景

マイクロマグネティックスとは

マイクロマグネティックスとは、
磁性体内の微細な磁区や磁壁の変化(磁化挙動)を扱う学問分野です。

マイクロ領域でみる磁性体の構造

磁性体の構造はマクロで見ると下図のように矢印のような磁石の強さと向きを表す物理量である磁気モーメントを持ちます。ミクロな視点として、原子レベルで見ると細かい磁気モーメントで構成されており、磁気モーメントが一方向にそろっている領域を磁区、磁区と磁区の境界層が磁壁と呼ばれます。

磁性体内の磁化状態は安定状態でも、詳細にみると一様でなく、磁性層の中で磁化の揃っている領域、磁区が交互にある状態となり、磁区とその境界領域である磁壁の構造や変化といった磁化挙動が、磁性体の性能に大きく影響します。そのため、材料表面の研磨や製造時の不純物、格子の欠陥によって磁区と磁壁の割合が変化、また対称/非対称の磁区構造により、保磁力や残留磁化などの性質が変化します。

磁壁と磁区

磁壁や磁区の外部磁界への応答性能は保磁力、残留磁化等の磁性体の重要な性質に影響

マイクロマグネティックシミュレーションが必要になる背景

磁性体アプリケーションの多様化

従来より開発されているインダクタやアクチュエータ、変圧器に加え、近年では産業機器や自動車向けのモータ、磁気センサ、MRAMなど磁性体/永久磁石を用いた様々なアプリケーションが開発されております。これらのアプリケーションは日常生活・業務環境に欠かせないものとなっておりますが、設計において注視する箇所が大きく異なります。インダクタやアクチュエータなどは磁気的な特性である線形の透磁率や非線形性のBHカーブ特性など材料物性値や形状探索を行う一方で、磁気センサやMRAM、磁気メモリなどの磁気デバイスは微細な磁区や磁壁の変化を注視します。

従来の磁気アプリケーション

・ 物性値
・ 形状

近年の磁気アプリケーション

・ 物性値
・ 形状
・ 磁壁
・ 磁区

 

マイクロ領域の磁区と磁壁の形成とその重要性

磁区や磁壁のでき方は、磁性体の元素組成やサイズ、粒界、配向などの微細構造、形状により決まるため、磁区や磁壁を扱うマイクロマグネティックスの知識が必須となり、大きく磁性体材料を用いたアプリケーションとして扱われますが、設計/開発においては異なる視野が必要です。また磁区や磁壁の挙動は汎用の電磁界解析で考慮することができないミクロな内容となります。

BH曲線も磁区や磁壁の影響を受けた物性値になるため、汎用的な電磁界解析ではBH曲線やその傾きである線形の透磁率、電気伝導率といった材料物性値を用いることで、磁束密度や磁界強度、電流密度の評価を行いますが、磁壁や磁区の動きを模擬しておらず、挙動を確認することもできません。
そのためMRAMや磁気センサなど磁気モーメントや磁壁の動きを扱うアプリケーションに対してマイクロマグネティックスと呼ばれる分野の知識および専用のシミュレーションソフトウェアが必要となります。

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