ESL(electronic system level)言語として,気にかけているエンジニアが多いBluespec SystemVerilog。その評価結果を日本ビクターが語った。ビクターの講演は,6月26日に東京で開催の「Bluespec User Group Meeting 2009」(主催は米Bluespec, Inc.の国内代理店のサイバネットシステム)で行われた。

講演する青野啓介氏 プライマリの設計業務をこなしながら,4カ月間でBluespec SystemVerilogを評価した。日経BPが撮影。スライドは日本ビクターのデータ。
講演する青野啓介氏
プライマリの設計業務をこなしながら,4カ月間でBluespec SystemVerilogを評価した。日経BPが撮影。スライドは日本ビクターのデータ。
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 ESL言語と言えば,C言語を拡張した言語が多い。C言語をベースにすることで,ソフトウェア設計者にもハードウェア設計への道を開く----C言語ベースのESL言語の謳(うた)い文句である。そうしたESL言語の中で異彩を放つのが,米Bluespec, Inc.のBluespec SystemVerilog(以下BSV)。Bluespecは「BSVをハードウェア設計者向けのESL言語」と言ってはばからない(Tech-On!関連記事1)。

 こうしたBluespec社のラブ・コールのせいかどうかは不明だが,BSVに関心を寄せるエンジニアは多い上,おおむね評価も高い(同2同3)。玄人受けしていたBSVだが,日本上陸には時間がかかった。1年ほど前にサイバネットシステムがBluespecと代理店契約したばかりである(同4)。

評価に使った回路 日経BPが撮影。スライドは日本ビクターのデータ。
評価に使った回路
日経BPが撮影。スライドは日本ビクターのデータ。
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RTLのVeriog-HDLに限界

 この契約締結を聞き,BSVの評価を早速始めたのが,今回,講演した日本ビクターの青野啓介氏(技術本部ディビジョン技術開発センター技師)である。同氏は音響映像機器向けASICやドライバの開発に従事しており,「普段は,C言語とRTLのVerilog-HDLとの間を行き来している」(同氏)。TAT短縮要求と,ASICの高機能化/複雑化のはざまで,RTLのVerilog-HDLの限界を感じて,BSVの評価を始めることにした。

 評価に要した期間は4ヵ月である(同氏のプライマリの業務は製品設計で,ツールや手法の評価ではない。念のため)。このうち,最初の3カ月間はBSVの学習(ほぼ独学)に当てられ,評価そのものは1か月で行った。評価には過去に設計したSISD型のマイクロプロセサを使った。命令数は50である。割り込みやキャッシュ,ペリフェラルがないストレートなMPUである。