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Ansys Granta Selector/Ansys Granta Materials Data for Simulation

PA66(ナイロン 66)の物性詳細 ~PA66代替材料候補のダウンロード特典付き~

第1章 PA66 (ナイロン 66) とその代替材料の物性値/特性について

PA66は自動車、電気、工業製品、家庭用製品など、様々なプロダクト材料として利用されています。しかし、近年原材料となるアジポニトル (AND) が供給不足となっており代替材料の検討が課題となっています。 下記の表ではPA66 および PBT の物性値1を示しています。PBT は、PA66と曲げ剛性が近似しており、同じ汎用エンプラの結晶性樹脂に分類されます。

(調査 : 2020年3 月実施)

PA66 PBT
概要 ベース材料 PA66
(Polyamide/nylon 66)
PBT
(Polybutylene terephthalate)
フィラー含有率 30 - 33 30
フィラー強化 Glass Glass
フィラー強化形状 Short fiber (<5mm) Short fiber (<5mm)
ポリマーコード PA66-GF30-FR PBT-GF30
価格2 価格 (JPY/kg) 464 - 567 249 - 283
機械特性 ヤング率 (GPa) 7.11 - 8.87 8.96 - 10
引張強さ (MPa) 87 - 106 96.5 - 134
曲げ強さ (破断係数) (MPa) 101 - 124 152 - 200
硬度 (ロックウェル硬さ (R)) 142 - 157 115 - 127
伸び (% strain) 10.8 - 15.6 2 - 4
曲げ弾性率 (GPa) 4.23 - 5.07 5.84 - 8.25
ポアソン比 0.34 - 0.36 0.349 - 0.363
疲労強度 (10^7サイクル) (MPa) 36.7 - 40.6 33.3 - 36.7
降伏強さ (弾性限界) (MPa) 51.6 - 64.4 77.2 - 107
物理特性 密度 (kg/m^3) 1510 - 1540 1480 - 1540
制限物質のリスク指標 RoHS2 (EU) 指令準拠
REACH規制指標 0.17
吸水性 吸水率 @ 24 hrs (%) 0.46 - 0.75 0.06 - 0.08
衝撃/破壊特性 破壊靭性 (MPa.m^0.5) 4.65 - 5.14 3.81 - 4.58
衝撃強さ (ノッチなし/23℃) (kJ/m^2) 47.8 - 70.2 41.6 - 76.9
熱特性 融点 (℃) 260 - 264 220 - 267
ガラス転移点 (℃) 54 - 66 22 - 43
荷重たわみ温度 1.8MPa (℃) 221 - 247 196 - 225
熱伝導率 (W/m.℃) 0.4 - 0.55 0.2 - 0.29
比熱 (J/kg.℃) 1480 - 1530 1310 - 1360
線膨張率 (μstrain/℃) 22.2 - 62.3 20 - 130
耐久性 真水 Excellent Excellent
塩水 Excellent Excellent
紫外線 (太陽光) Poor Good
燃焼性 Self-extinguishing Slow-burning
燃焼性 (UL94) V-0 HB
電気特性 電気抵抗率 (μohm.cm) 5.73e19 - 1.43e21 3.3e20 - 3e21
誘電率 7.22 - 10.2 3.7 - 3.9
絶縁破壊強さ (MV/m) 29.6 - 50.4 16.5 - 21.7
使用エネルギー/CO2排出量 成形時使用エネルギー (MJ/kg) 20.9 - 23.1 18 - 19.9
成形時CO2排出量 (kg/kg) 1.57 - 1.74 1.35 - 1.49
リサイクル リサイクル性
リサイクル率 (%) 0.1
その他 透明性 Opaque Opaque
手触り感 (柔らかさ) 28.3 - 30 23.9 - 26.2
手触り感 (暖かさ) 88.7 - 105 130 - 158
音速 (m/s) 2160 - 2420 2430 - 2580
食品との接触 No Yes
医療グレード
(USP Class VI, ISO 10993)
滅菌性 (エチレンオキシド) Good Excellent
滅菌性 (放射線) Good Good
滅菌性 (蒸気) Good Poor
MRI安全性 No Interaction - MR Safe No Interaction - MR Safe

1 : 数値データは複数の信頼済みソースから入手したデータであるため値に幅があります。
2 : 価格は 2020年3月時点の価格です。為替および市場動向および取引条件により変動いたします。

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上記に加え、PA6 を含むほか 4 種類の材料と比較した PDF 版の物性表をご用意しております。

またご希望の方には Excel 版も提供しております。

第2章 Grantaを使って代替材料を探してみよう

2-1.要件

PA66が世界的に不足していることで、材料価格の上昇、入手が困難といった状況が起きています。そこでA社ではPA66-GF30の代替材料を選定することにいたしました。ただしコストの上昇は最小限にしたいと考えています。材料選定をA社はGrantaを活用して行うことにしました。従来の手法で材料選定した場合と比較してご紹介いたします。 材料要件は以下の通りです。

要件
ヤング率 7.5GPa以上
曲げ弾性率 9.4GPa以上
衝撃強度(ノッチなし) 65kj/㎡以上
24時間吸水率 0.2%以下
製造条件 射出成形
規制対応(REACH Indicator) 0.02以下

2-2.材料選定

X軸は単位体積当たりの価格、Y軸は曲げ弾性率を設定しました(Grantaでは軸の設定する項目は任意に決めることができます)。その結果をバブルチャートで表記しました。プロット1つ1つが材料です。

従来手法の場合

まずPA66-GF30の物性値を確認するために、情報を集めます。ここで必要な情報は「曲げ弾性率」と「価格」、そして射出成形できる材料です。曲げ弾性率はWebページで物性値を見つけました。続いて要件を満たす物性値の材料をいくつかピックアップしました。ただしWebページによって記載されている情報にばらつきがあり信頼性にやや欠けるのが難点です。 価格情報はWebでは見つけられなかったため、材料メーカーに問い合わせて確認しました。ここまでの作業で数日要することになりました。

大規模でもスムーズに

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材料費用のコストダウン、環境負荷を低減する材料選定、安価な製造方法の材料選定など、材料に関する課題を解決する方法をご紹介します。

さらに射出成型可能な熱可塑性樹脂という成形プロセスでフィルタリングをかけます。

グレーで表記されている材料は候補から外れた材料です。青色と赤色でプロットされている材料が候補として残りました。

次に材料物性でフィルタリングします。項目は冒頭で示した要件のうち以下の5つを対象としました。

・ヤング率:7.5Gpa以上
・曲げ弾性率:9.4GPa以上
・衝撃強度(ノッチなし):65kj/㎡以上
・24時間吸水率:0.2%以下
・REACH Indicator:0.02

従来手法の場合

残った候補材料から、さらに「ヤング率」「衝撃強度」「24時間吸水率」「REACH Indicator」の指標を確認します。最初の3つの要件については、再度Web検索で情報を集めることができました。しかし最後の要件「REACH Indicator」については、Webで確認することができなかったため、再度材料メーカーに問い合わせることにしました。ここまででさらに数日を要しました。 もし、この時点で候補材料がなくなってしまった場合は、もう一度最初からプロセスをやり直すことになります。

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材料費用のコストダウン、環境負荷を低減する材料選定、安価な製造方法の材料選定など、材料に関する課題を解決する方法をご紹介します。

赤枠で囲ったエリアを拡大表示します。

現在の材料PA66-GF30に対して、PP-GF50は価格が安く、曲げ弾性強度が強いことがわかります。

横並び比較

ではPPGF50は燃えやすい事が問題にならないかどうかを上記の比較表で検討することができます。最終候補の3つの材料の中では一番燃えやすいことがわかりました。 最後は何を重視したいか(価格なのか、難燃性なのか、材料強度なのか)で絞り込み、試作・評価のフェーズを経て最終的に材料を決定しました。

この材料選定プロセスを従来プロセスで行えば1週間~数週間程度要したでしょう。A社はこの作業をものの10分で実施することができました。

従来手法の場合

なんとか最終候補の材料を絞り込みました。最後に「難燃性」を確認します。Web検索で確認するものの、念のため再度材料メーカーに確認しました。

最初から材料メーカーに相談すると、相談した材料メーカーのラインアップ製品の範囲で提案される(自社が求める最適な材料とは限らない)恐れがあるので、自力で調査を試みてみましたが、結局のところ材料メーカーさんの力を借りる必要がありました。ここまでに要した期間は1週間~数週間程度。ようやく代替材料を絞りこみ、試作・評価の次のフェーズへと進めることができました。

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2-3.Ansys Granta関連資料

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また、本製品の詳細につきましては下記のページおよび資料もぜひご参照ください。

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