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熱流体解析

CFDシミュレーションにおける乱流の課題

Application Brief

2017年9月

CFD(Computational FluidDynamics、数値流体力学)の興味深い側面の1つに、単純な流れであっても計算が困難であるという点が挙げられます。これは、流体物理現象が複雑であるためで、より具体的には乱流をモデル化する必要があるためです。乱流は、応用物理学および応用工学における最も複雑な現象の1つです。幅広い規模の空間および時間に広がる不規則な流体運動で構成されています。乱流はナビエ・ストークスの式によって詳細に表されていますが、すべての乱流の規模を解析するために必要な計算能力は、多国籍の大企業で利用可能なハードウェアの計算能力をもはるかに超えるものです。このため、エンジニアは固有の解析事例における乱流の物理現象をモデル化するために最適な手法を選択する課題に直面しています。そのタスクの複雑性が原因で、すべての流れを許容可能な精度で処理することができる乱流モデルは1つも出てきていません。AnsysCFDコードでは、ユーザーが設計上の課題を克服できるよう、さまざまなモデル方程式や戦略を提供しています。本書では、一見シンプルな解析事例であっても、乱流モデルの選択によってシミュレーション精度にどのような影響を及ぼすか、例を挙げて示します。

目次

  1. 2次元のはく離
  2. 3次元のはく離
  3. 熱伝達
  4. コーナー流れ
  5. 乱流の挙動
  6. まとめ
  7. 参照文献

2次元のはく離

CFDエンジニアの主要な課題の1つに、流れのはく離の正確な予測があります。ほぼすべての設計で、はく離領域はデバイス効率の損失に関連するため、解消または最小化することが望まれています。ディフューザは多くの流体設計における非常に傑出した機械的要素です。ディフューザは内部流れで異なる直径の流路を接続するために必要であり、ほぼすべての産業部門および用途で使用されています。ディフューザ設計の目標は、可能な限り小型化しつつ、同時にその壁面からのはく離を避けるか最小化することです。コンパクトな設計では結果として二次側の開口角が大きくなり、それがはく離を起こしやすくするため、最適化の問題が発生します。図1はディフューザ内流れの計算結果を示しています。流れは左側から入り、狭い流入口部分を通り、ディフューザを通過して右側から出ていきます。この実験は日本の慶応義塾大学と、スタンフォード大学で行われました[1]。二次側の開口角が10°でレイノルズ数(Re)が20,000の非対称のジオメトリを含みます。この実験では、傾斜した壁から流れがはく離しています。SST乱流モデルとk-εモデルの比較から、k-εモデルでははく離気泡が完全に失われていることがわかります。同じ図の速度分布は、SSTモデルが予測するはく離流れが、実験結果と良好に一致することを示しています。

図1 : Obiディフューザ内の流れ
図1 : Obiディフューザ内の流れ。
上 : SSTモデルでのシミュレーション。下 : K-εモデルでのシミュレーション。

このような流れでk-εモデルを実行すると、ディフューザ設計の過度に楽観的な結果をエンジニアに提供することになります。シミュレーション結果と相反し、実際のディフューザははるかに大きな圧力損失を示します。壁面上に大きくて非定常な力がかかることで、非定常な渦の離脱までも引き起こす可能性があります。

3次元のはく離

図2 : さまざまな迎え角αによる風洞内の翼型
図 2 : さまざまな迎え角αによる風洞内の翼型。
左 : 最適化されたSSTモデルで計算された流れトポロジー。
中央 : 該当する実験による油の流れの画像。
右 :揚力係数Clと迎え角αの比較。

図2に流れのはく離のより複雑な例を示します。迎え角αを変更した時の風洞内の翼型の表面流れを示します。実験の設定[2]が基本的に2次元であるのにかかわらず、流れは3次元構造で表されます。この現象はキャプチャが難しく、3次元モード(オレンジ色の破線による曲線)のSST-HL(HLはHighLift(高揚力)の略)モデルの拡張バージョンのみで再現できます…

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