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解析事例

構造解析

損失を考慮したIPM(InteriorPermanentMagnet)モータの冷却機構検討

こんな方におすすめ

  • 三相永久磁石同期モータの熱設計を検討したい
  • 損失を考慮した熱解析を行いたい
  • ハウジングや巻線形状を変更したときの温度変化を素早く確認したい

IPM (埋込磁石型) モータは永久磁石を用いているため、磁気飽和や損失を考慮して設計をすることが重要となります。損失による温度上昇から永久磁石特性の低下に影響し、モータ特性の低下が懸念されるため、損失を考慮した冷却機構の検討が必要となります。本事例では、電磁界解析ソフトAnsys Motor-CADを用いてIPMモータの損失を考慮した熱設計事例についてご紹介します。Ansys Motor-CADは磁気・熱・駆動サイクル・応力解析の4つのソルバーを持つモータ設計専用解析ソフトです。磁気解析で算出した損失を熱解析へと受け渡すことで、損失を考慮した熱解析が可能です。

解析の目的・背景

日本では永久磁石を用いたPM(Permanent Magnet)モータが最も使用されており、高効率・小型の特徴から自動車や白物家電、産業機器など幅広く使用されています。そのため使用用途に応じた出力が必要となり、鉄損や銅損、磁束密度等、モータの特性を低下させる原因を把握し、詳細に設計する必要があります。また、発生した損失によってモータの巻線や永久磁石の温度が増加するため、モータ形状に加えて冷却機構の有無について検討する必要があります。
本解析ではIPMモータに対して磁気解析から損失を算出し、熱解析へと受け渡しを行います。熱解析では冷却機構である自然空冷、ウォータージャケット、巻線径変更の3パターンを設定し、それぞれの冷却機構におけるコイル、ハウジング、永久磁石の最大温度を比較しました。

解析手法

モデル作成
2Dの8極48スロットの三相永久磁石誘導モータ(表面磁石型)を想定し、半径99mmのステータコアと半径66mmのロータコアと0.706mmの巻線径とし、1スロットに120本の銅線を配置しました。

解析モデルと解析条件

解析モデルとメッシュ


(図1)解析モデルの形状

図1に解析モデルを示します。2Dのフルモデル形状であり、Ansys Motor-CADではモータ構成要素が図1のように自動で色分けされます。

解析条件

磁気解析設定
回転速度を3000rpm、最大電流を100A、結線方法をスター結線として磁気解析を行い、損失を算出した結果を熱解析へと受け渡しました。
熱解析設定
3Dの定常解析を設定し、ハウジング形状を208mmとし、冷却機構を下記3つの条件を設定しました。
1.アルミハウジングを設定し、自然空冷を設定
2.ウォータージャケットを設定し、水の流量を6.5e-6 [l/min]に設定
3.ハウジングを設定せず、巻線径を0.706mmから0.885mmに変更

解析結果:温度分布


(図2)解析結果:温度分布

図1に解析モデルを示します。2Dのフルモデル形状であり、Ansys Motor-CADではモータ構成要素が図1のように自動で色分けされます。

図2に温度分布の結果を示します。冷却機構によって温度分布に差が出ていることがわかります。また、それぞれ巻線最大温度、永久磁石温度、ハウジング温度を表1に示します。

(表1)解析結果:各要素の温度

アルミハウジング ウォータージャケット 巻線径変更
巻線最大温度[℃] 118.24 76.34 126.37
永久磁石温度[℃] 111.41 70.08 113.74
ハウジング温度[℃] 108.07 64.89 122

最も冷却できている機構は水を使用したウォータージャケットによる冷却機構であり、アルミハウジングや巻線径を変更したのみでは100℃以上になっていることがわかります。このように損失を考慮し、冷却機構を複数検討することで、最大温度を算出し、モータ仕様に応じた適切な冷却方法の検討が可能です。
本解析手法ではモータで発生する損失を考慮した冷却機構の検討についてご紹介しました。

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