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振動特性のトポロジー最適化解析

こんな方におすすめ

  • トポロジー最適化解析を行って、最適な形状を解析したい
  • 固有振動数を適切に設計することで共振を避け動的な安定性を確保したい

一般的にトポロジー最適化は、剛性を維持しつつ不要な部分を削って最適な材料配置を求める解析として知られていますが、Ansysは振動特性や伝熱特性の最適化にも対応しています。本事例では振動特性のトポロジー最適化の解析例をご紹介します。

解析の目的・背景

トポロジー最適化は静的な荷重下での利用例がよく知られています。たとえば(図1)のような片持ち梁のトポロジー最適化はご覧になられたことがあるかと思います。


(図1)静的な荷重下でのトポロジー最適化例

しかし多くの機械構造物は動的な環境下で用いられます。動的な環境下での挙動を決定する主要な特性として振動特性があり、設計を行う際にも重視されます。たとえば機械構造物の固有振動数を適切に設計することで、共振を避け動的な安定性を確保することができます。
ところが、このような設計は簡単ではありません。よく知られているように固有振動数は質量と剛性のバランスで決まります。固有振動数は剛性が高いまたは質量が小さいほど高くなりますが、軽量化しようすれば材料が減って剛性が落ちてしまいます。
質量と剛性は相反するため一筋縄ではいかず、試行錯誤を繰り返しながら検討していくというケースが多いかと思います。そのような場合に、振動特性のトポロジー最適化が役立ちます。たとえば質量を減らしつつ、1次固有振動数をできるだけ大きくするための材料配置を自動的に算出できます。

解析手法

Ansysで振動特性のトポロジー最適化解析を実施するには、プロジェクト概念図でモーダル解析とトポロジー最適化解析とを紐づけるフローを構築します(図2)。モーダル解析は通常の解析と同様に実施します。トポロジー最適化解析では最適化領域と目標、そして応答拘束を設定します。必要に応じて製造制約も設定できます(詳細後述)。


(図2)振動特性のトポロジー最適化解析フロー

Ansysのトポロジー最適化手法には「密度法」と「レベルセット法」という2つの手法があります。密度法はモデルの各要素の密度を変数とする手法で、レベルセット法は形状の境界を直接処理する手法です。(原稿執筆時点では)密度法は様々な制約を用いることができ、レベルセット法は境界が明瞭に現れ、滑らかな形状が得られるという特徴があります。どちらの手法を利用するかは問題の内容によりますが、本稿では密度法を使用した解析例をご紹介します。

モーダル解析

最初にモーダル解析を実施します。

解析モデル

(図3)に示すプレート形状です。中央の穴には別の部品が取り付けてあることを想定し、その部品を質点として簡略化してあります。
前述の通り、振動特性は剛性と質量で決まりますので、たとえ形状を作成しない場合であっても質量は実際と合うように設定しておく必要があります。

解析条件(モーダル解析)

プレートの周囲の4つの穴を固定します(図3)。


(図3)解析モデルと解析条件

解析結果

解析すると1次モードは(図4)に示す中央部が面法線方向に揺れ動くモードとなりました。ここから1次固有振動数をできるだけ大きく保ちつつ軽量化を検討するならば、変形が大きい中央部よりも、変形が少ない周辺部を削った方がよさそうに思われます。実際にどのような形状が良いのか、トポロジー最適化解析で確かめてみます。


(図4)1次モード結果

トポロジー最適化解析

続いてトポロジー最適化解析を実施します。

解析条件

トポロジー最適化解析では[最適化領域]、[目標]、[応答拘束]が最低限必要な設定です。その他、任意で製造制約などを設定できます。

最適化領域と除外領域

トポロジー最適化を実行する領域を選択します。ここでは中央の穴付近を除く全体を最適化領域としました。また、最適化させたくない面があれば除外領域に指定します。デフォルトでは境界条件を設定している面は自動的に除外領域になります。


(図5)最適化領域

目標

振動特性のトポロジー最適化解析では、自動的に1次固有振動数の最大化が目標として設定されます。通常はこの設定で問題ないと思いますが、手動で他の目標も設定できます。


(図6)振動特性のトポロジー最適化の目標設定

応答拘束

最適化するうえで満たすべき条件を指定します。ここでは質量を半分にする拘束を設定しました。ここでは使用しませんでしたが、特定のモードの周波数が所定の範囲内になるように拘束をかけることもできます。特定の固有振動数を持つ構造を設計したい場合に役立ちます。


(図7)応答拘束

製造制約(任意)

トポロジー最適化で得られる形状は非常に自由度が高く、時には製造上成り立たない形状となることがあります。そのような形状を避けるため、製造上の制約条件を設定することができます。Ansysでは以下の製造制約を設定できます(図8)。

●メンバーサイズ
部材の厚みに制限を設けることができます。薄すぎる(細すぎる)形状の発生を防止できます。
●引き抜き方向
指定した方向について、内部に凹形状がない(アンダーカットがない)状態にできます。金型で成形することを想定している場合に役立ちます。
●押し出し
押出成形できる形状を生成します。
●回転
指定した座標軸について周期対称形状を生成します。
●対称
指定した座標軸について対称形状を生成します。


(図8)製造制約

ここでは回転の製造制約を設定しておきます。

解析結果

解析すると(図9)に示す結果が得られました。事前の予想通り、中央部の材料が残り、周辺部の材料が削られた形状となりました。


(図9)モーダルのトポロジー最適化解析結果

なお、トポロジー最適化で得られた形状はSTL形式で出力することができますので、3D CAD等に取り込んで利用することができます。

強度と振動特性の両方を考慮したトポロジー最適化解析

前述の方法で振動特性を考慮したトポロジー最適化を実施できましたが、強度の要件も満たす必要があるとしたらどのようにすればよいでしょうか?(図9)の解析結果を見ると、固定部から中央部に向かう途中に細い部分が生成されており、強度に不安が出てもおかしくありません。このような場合に、Ansysでは強度と振動特性の両方を考慮したトポロジー最適化解析ができますので簡単に解析例をご紹介します。

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