A君のレンズ設計物語第1回:A君、レンズ設計者を志す

田舎に住むお祖父さんから、「テッサーというレンズを設計できたら、一生食うのに困らない」という話(※1)を聞いたA君は、レンズ設計者への道を志し、博士の下に弟子入りしました・・・・

A君「博士、先週宿題に出されたレンズの設計、できましたよ!」

博士「えーと、なんだったかな?」

A君「昔のことは覚えているのに、最近のことは覚えてないんですか?次の仕様でレンズを設計してこい、と言っていたじゃないですか」

焦点距離:200mm
イメージサークル:φ43.2(像高21.6mm)
Fナンバー:5.6
レンズ全長(第1面〜像面):180mm以下
レンズ枚数:4枚以下
バックフォーカス:45mm以上

博士「おお、そうじゃったな。どれどれ、見せてもらおうかな・・・」

A君「これです。えへん!」


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博士「うーむ・・・なかなか独創的な・・・A君、このレンズは、どうやって設計したのかな?」

A君「あまりにも早くできたから驚いているのですか?CODE Vを使えば簡単にできますよ,こんなの。


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len new
s1 200 4 50.50
s2 -200 0
s3 0 4 50.50
s4 0 0
s5 0 4 50.50
s6 0 0
s7 0 4 50.50
s8 0 0
wl 656.3 587.6 486.1 435.8
yim 0 10 15 18 21
fno 5.6
pim

まず、レンズを4枚使えるということで、両凸レンズ1枚と平板3枚のレンズデータをつくりました。硝材は、どうせ最適化をかけるので、仮想ガラスとしていますが、レンズ系の焦点距離は、凡そ200mmになるようにしました。そして、仕様に合うように、システムデータの波長・画角・Fナンバーを設定したのがこんな感じです。

それから、自動設計で最適化するために、全部のパラメータ(面形状、レンズ厚さ、レンズ間隔、材質)を変数として指定して自動設計(AUT)で、焦点距離・全長・バックフォーカスを制約条件に指定して、
最適化実行!ってするだけで・・・


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ccy s1..8 0;thc s1..7 0;glc s1..7 0
aut
efl = 200
oal s1..i < 180
thi si-1 > 40
mnc100;mxc 100
go

ほらね、簡単にできちゃうんですよ! 性能も、最初の状態と比較すると一目瞭然!改善されています!」


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博士「しかし、このレンズは・・・ひどいものじゃな。」


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A君「な、何を言っているんですか。そんな筈ないですよ。これは、”CODE Vの強力な最適化”を使って、もうこれ以上は行かないというところまで最適化したのですから、これが最高の性能を持つレンズですよ」


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博士「A君・・・そのレンズを設計したのは君かね?それともCODE Vかね?まぁ、それは置いておいて・・・
レンズの最適化は、ローカル最適化ということは知っているかね?

A君「なんですか?ローカル線の旅なら知っていますけど」

博士「最適化開始時点の状態から、最も近くにある最適解へと収束するように動作するのだよ。枚数が少ない場合は別だが、レンズの設計空間は、非常に複雑で、ある仕様・性能を満たすレンズというのは無数に考えられる。
そのため。局所的に陥ることは多分にあるのじゃよ。
ところで、わしが"CODE Vの強力な最適化"を殆ど使わずに、設計したレンズがこれじゃ。


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A君「なんだ、レンズの形は違うけど、性能は僕のよりも悪いんじゃないですか」

博士「よく、見たまえ。収差図のスケールが違うのだよ。同じスケールで表示させてみると、こんな感じになる。どうかな?」


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A君「え〜!そんな・・・最新のツールで設計したレンズが、博士のボンクラ頭に負けるなんて・・・」

博士「こらこら、そんな失礼なことを言ってはいかん。収差論を使ったのじゃよ」

A君「そんな最新の理論を使うなんて、ずるいですよ、博士」

博士「いやいや、収差論はもう100年以上前の、計算機が無い時代に考えられた理論じゃよ。正確さでは、実光線追跡に適うはずが無いが、レンズの性質の把握という面では、収差論に分があるのだよ。
例えば、A君の設計値も・・・最適化のときに、少し収差係数を付け加えて最適化を行ってみると・・・
どうかな?


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CODE Vのローカル最適化では"これ以上改善しません"と言われていたのに、少し条件を付け加えると、評価関数は一旦は増えてはいるが、その後グンと減っているのがわかる。山を乗り越えているのじゃ」

A君「博士は、そも、人か魔か・・・生かしておいては・・」


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博士「それは、三国志の中の周瑜の台詞じゃな。レンズ設計の難しさは、先にも述べた解空間の複雑さと、試行錯誤が必要になるということじゃ。形状・材質が決まっているレンズデータが在れば、その光学性能を評価することは、現在であればコンピュータの力を借りて、瞬時に可能じゃ。しかし、目標とする性能を満たすレンズを得るには、面形状や厚さなどを、性能が上がる方向に少しずつ変えて行くという手法しかないため、変なレンズ形状に陥ってしまったら、そこから抜け出せなくなることは十分にあり得るのじゃ。そういった”変な”形状ではなく、理論的に適切な形状を、収差論を使うと求めることができるのじゃ」

A君「へぇ〜、なんかすごそうですね」

博士「じゃあ、近軸論や収差論が設計にどのように役に立つか、見ていこうかの」

A君「はい、宜しくお願いします」

※1:元ネタは、高野栄一(1993)『レンズデザインガイド』写真工業出版社78ページ

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