いまさらきけない光学計算第6回:偏光を計算するために

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3: ストークスパラメータ

3-1: ストークスパラメータ

さて、最後はストークスパラメータです。ストークスパラメータとは、ストークスベクトルを構成する4成分のことです。ストークスベクトルとは、4つの成分を持つベクトルで、ジョーンズベクトルのように、偏光状態を表現するためのベクトルです。 ストークスベクトルの4成分であるストークスパラメータは、測定可能な光の「強度」で表現されます。

測定可能な6つの「強度」により、偏光状態を表す、という点がジョーンズベクトルと異なる点です。ここで、測定可能な強度は、勿論「時間平均」強度のことです。

ストークスパラメータを表すために必要な強度の測定には、少し工夫が必要で、直線偏光素子と1/4波長板の2つを使用します。

直線偏光素子(Liner polarizer)
=>ある特定の方向に振動する電場の振幅成分のみを通過させる働きがあります。 このフィルタからは、特定の方向に振動する直線偏光が射出されます。
1/4波長板 (Quarter-wave plate)
=>ある方向X内を振動する光に対し、これに垂直な方向Y内を振動する光の位相を1/4波長(π/2)分遅らせる働きがあります。 条件にもよりますが、直線偏光がこのフィルタを通過すると、円偏光や楕円偏光となって射出されます。



さて、前置きは以上です。ここから本題です。

はじめに、XY平面を考えます。
正体の分からない電場成分Ax、Ayがあるとします。X,Y方向の振幅成分はそれぞれ以下のように表されます。ジョーンズベクトルの説明時とほぼ同じです。


(市販の参考書では、電場成分として、Ex,Eyという記述が多いですが、ここまでAx,Ayとして進めてきたので、このまま振幅としてAx,Ayを使います。ご了承下さい。)

今、X軸からY軸へ向かう角度θ方向の電場成分A(θ)を考えると、以下のようになります。



ここからθ方向の強度I(θ)を求めると次のようになります。


つまり、θ方向の強度は以下のようになります。


我々が観測できるのは、時間的に平均された強度です。この「時間的平均」という点を明示するため、振幅側を < > で挟んだ表現します。すると、強度は振幅を用いて次のように表されます。


右辺からZが消えてしまったので、左辺からも消しておきましょう。


I(θ)は、時間平均強度で、直線偏光子のみで実際に測定が可能なパラメータです。
θをうまく選ぶことで、Ax、Ay、φを求めたい(I(θ)でこれらを表したい)。
どのようなθを選べばよいのでしょうか・・・?

sin2θ、cos2θが綺麗な値になる数字を選びたいですよね。
そこでθとしては、0、90、45、-45 [deg]あたりがよさそうです。 これらの値を使えば、sin2θ、cos2θの内、一方が0,もう片方が±1となってくれます。
区別するため、位相差φを[rad]で記述し、θは[deg]で記述することにします。

θ=0、90度としてみます。すると、以下のように測定可能な成分が取り出せます。


ここで、上記2つの和と差を計算しておくことで、全体の強度及び振幅の比を見積もることが出来ます。


=> 振幅 Ax Ay は強度Iで表すことが出来ました。
I(0)、I(90)は、それぞれ水平成分、垂直成分の強度、ですから、直線偏光子を用いて水平成分、垂直成分の偏光を取り出して測定した強度となります。

次は位相差 φ を求めたいのですが、どうしましょう?

さて、ここまではsin2θ=0[deg]となるようにθの値を選びました。次は、sin2θ が0とならないようにθを選びます。sin2θ が0でなければ、「cosφ」が残るため、結果として「φ」に関連する式を抽出することが出来そうです。というわけで、θ=45、-45[deg]あたりを試してみます。


上記2つを使い、差を取ると・・・


I(45)、I(-45)は、45,-45[deg]成分の強度です。直線偏光子を傾け、45、-45[deg]方向の I(45)、I(-45)は、45,-45[deg]成分の強度です。直線偏光子を傾け、45、-45[deg]方向の強度を取り出せば良いことが分かります。 しかし、cosφだけでは、位相差φを1つに絞ることは出来ません。
後は、sinφが抽出できれば・・・φを決定する事が出来ます。

そこで、少し工夫します。位相差φも考慮して、


と、みなします。これまでに求まっているものを以下のように書き換えます。


これらの値は、直線偏光素子のみを用いて、測定することが出来るパラメータです。 ここまでは特に????となる箇所はないですね!?

ここで、cos(φ-π/2) = sinφ を利用して、sinφをひねり出します。


よって


同様の手順で、


が求まり、辺々差分を取ると次の通り、sinφを抜き出すことが出来ます。


しかし、「φ-π/2」という計算は何を意味するのでしょうか?
そもそもφはx方向の電場ベクトル成分に対するy方向の電場ベクトル成分の位相差でした。
その位相差にさらに -π/2 を加えたものが「φ-π/2」の意味するところです。
ということで、I(45, φ-π/2) を測定するためには、45度傾けた直線偏光子に光を通す前に、1/4波長板を使ってx方向成分とy方向成分に-π/2位相差を付け加えておけば良いことになります。


ここまでで求めたパラメータを使用することで、Ax、Ay、φを求めることが出来そうです。
というわけで、測定可能な6つのパラメータ


が求まりました。これらを用いて表されるストークスパラメータS0〜S3は次のようになります。


以上から、ストークスパラメータとは、
「振幅Ax、Ay、φを 測定可能な6つの強度I(0,φ)、I(90,φ)、I(45,φ)、I(-45,φ)、I(45,φ-π/2)、I(-45,φ-π/2)で表したもの」
ということが分かりました。これらは全て測定できる値です。
測定可能な強度を用いて偏光状態を表現する、この点がジョーンズベクトルとストークスパラメータとの違いです。

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