いまさらきけない光学計算第6回:偏光を計算するために

この記事の内容

2: ジョーンズマトリクス

1ではジョーンズベクトルを紹介しました。
任意の振幅をX,Y方向の振幅へ分解し、ベクトルとして記述することでジョーンズベクトルが導出されます。以下は規格化したジョーンズベクトルです。


ジョーンズベクトルは、光の偏光状態そのものを表すためのものでしたね。

これに対し、ジョーンズマトリクス(ジョーンズ行列)は、光そのものではなく、光の偏光状態を変える働きを持つ光学素子、を表します。
光が、光学素子を通過したとき、どのように偏光状態が変わるか、を示すものです。
ジョーンズマトリクスは、2 x 2 行列で、ジョーンズベクトルに対して作用させる行列です。
次のようなイメージです。


ここで、ある光学素子を通過した際、偏光状態が、直線偏光 => 円偏光 へと変わったとします。


例えば45[deg]方向の直線偏光が右回り円偏光に変わった、という場合です。ジョーンズベクトルで表現すると次のようになります。


これを単なるベクトルとして眺めてみると、ベクトル(1,1) が (1,-i) へ変換されたわけです(係数はとりあえず無視しています)。このようなベクトルの変換作用を担うのがジョーンズマトリクスです。座標変換の回転行列のような役割、といえば分かりやすいのではないでしょうか。ちなみにこの場合のジョーンズ行列は 2 x 2 行列で、次のようになります。


実際に計算してみましょう。ベクトルに対し、左からを作用させます。


となり、右回り円偏光を意味するジョーンズベクトルが現れました。

この行列 は、45[deg]直線偏光を表すジョーンズベクトルを、右回り円偏光を表すジョーンズベクトルへ変換する効果があることが分かります。

即ち、この行列を作用させることは、直線偏光を円偏光へ変えてしまう素子を通過することと同じ意味となります。(このような素子は「位相板」と呼ばれています。)
結果として、ジョーンズマトリクスは、偏光状態を変える働きを持つ素子、に対応することがわかります。

いくつか他の行列を作って、試してみましょう。実際に使ってみるのがジョーンズマトリクスを理解するための近道です。


の場合。入射光の偏光状態を以下(直線偏光)のように定義します。


この成分で表現されるジョーンズベクトルに、ジョーンズマトリクスを作用させると、


となり、45[deg]方向の直線偏光となります。

では、入射光を任意の偏光状態としてみるとどうなるでしょうか?入射光を次のように記述した場合を考えて見ます。位相差φ をφのままで扱います。


この成分を持つベクトルに対し、ジョーンズマトリクスを作用させると、


となり、やはり45[deg]方向の直線偏光となりました。
このジョーンズベクトルは、直線偏光子を表すことがわかります。


の場合。入射光の偏光状態を以下のように定義します。また直線偏光です。


ここへジョーンズベクトルを作用させると、


となり、Ay(Z)はAx(Z)に対してπ/2だけ(=1/4波長)遅れることが分かります。
(このジョーンズマトリクスは1/4波長板を表します。)

(例 1)と同じ要領で、入射波を変えてご自身で計算してみましょう。どのような結果になるのでしょうか?

ジョーンズマトリクス まとめ

いかがでしたか?ジョーンズマトリクス。ジョーンズベクトルが光の偏光状態そのものを表すのに対し、このジョーンズベクトルを変える役割を果たすのがジョーンズマトリクスです。
あるジョーンズベクトルを異なるジョーンズベクトルへ変えるという働きは、偏光状態を変えることに相当します。結果として、光が何らかの光学素子を通過するということに対応します。分かってしまえば特に難しいところはありませんね。

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