新入社員の独り言 STEP5:基本的な収差

皆様こんにちは。新入社員のSです。
収差について理解を深めようと頑張ってレポートを作成していましたが、自分にとってはとても難関で、予想以上に時間がかかってしまいました。大変申し訳ございません。
決して「春眠あかつきを・・・」ではございませんので、お許しください。

さて、今回はザイデルの5収差に関して調べました。そしてザイデルの5収差にたどりつくまでにはいくつか予備知識が必要でした。自分なりにまとめたつもりですが不十分なところもあると思います。そんな時は・・・優しいアドバイスをお待ちしております。

このページの内容
  1. 収差とは?
  2. メリ、サジってなんですか?
  3. 縦収差、横収差
  4. ザイデルの5収差
  5. 収差の残存状態をあらわすもの
  6. まとめ

収差とは?

前回、CODE Vから出力される収差図や値から、レンズの性能、収差の状態を把握することが出来ないという致命的な状態にあることに気づきました。そこで、基本的な収差について調べてみました。これまで、自分は次のように理解していました。
収差とは、レンズを設計する上で、避けて通れない邪魔者です。具体的には、
「理想的集光状態からのズレ」
です。しかしこの認識には具体性がなく、単に「良い」「悪い」という判断だけでした。
下図はこれまでに自分が認識していた「収差」の状態です。

では、もっと具体的に収差に関して調べてみたいと思います。が、物事には順序があるようです。基本的な収差を理解する前にまず、理解しなければいけない概念がありました。
それは、「どのような面を対象にして収差を考えているか?」ということです。まず、この面から説明します。

メリディオナル面、サジタル面、メリディオナル「像」面、サジタル「像」面

では、大事な概念、あるいは、定義を紹介します。これを知らないと、収差の状態を示す図の意味が分かりません。

定義

メリディオナル面(タンジェンシャル面とも言います)
光軸と主光線を含む平面。ちなみに、このメリディオナル面内を走る光線を「メリディオナル光線」といいます。

メリディオナル像面
メリディオナル光線が最も集光する像面。メリディオナル光線群の焦点に相当します。

サジタル面
主光線を含み、メリディオナル面に垂直な平面。このサジタル面内を走る光線を「サジタル光線」といいます。

サジタル像面
サジタル光線が最もよく集光する像面。サジタル光線の焦点位置に相当します。

理想的には、メリディオナル像面、サジタル像面が一致してほしい、また、全ての画角のメリディオナル像面、サジタル像面が一致してほしいのですが、実際は、そううまくは行きません。

メリディオナル面、メリディオナル光線、メリディオナル像面、
サジタル面、サジタル光線、サジタル像面、

いかがでしょうか?覚えられそうでしょうか?自分は暫くかかりそうです。

縦収差、横収差

さて、収差に「タテヨコ」なんてあるのでしょうか?
実は、あるんです。

まずは、「タテ」「ヨコ」の説明からします。
タテ
主光線に沿った方向のことです。主光線の気持ちになると、「前後」方向です。
縦収差
像面からの、縦方向のズレのことを縦収差といいます。光線の像高(又は画角)を縦軸、主光線と像面とが交わる位置を横軸にとります。通常、タンジェンシャル(メリディオナル)面方向と、サジタル面方向とがあります。

ヨコ
光軸や、主光線に沿った方向ではなく、像面内のことです。この面内に表現する収差を横収差といいます。
横収差
各光線が像面を貫くとき、像面内での主光線からのズレのことを横収差と言います。
こちらも、タンジェンシャル(メリディオナル)面方向と、サジタル面方向とがあります。
横軸に主光線に対する入射光線高さ、縦軸に像面での主光線からのズレをとります。
この時、主光線と像面との交点位置が原点になります。
例えば下図のようになります。

ザイデルの5収差

長い前振りになってしまいましたが、ここからが本番です。先週先輩からアドバイスを頂いた「ザイデルの5収差」について調べました。
ここで1つ復習です。
「スネルの法則」はまだおぼえているでしょうか?

n1*sinX1=n2*sinX2

です。

ここで、光線が光軸に極めて近い領域(近軸領域)のみを通過する場合、
sinX1を 「X1」、 sinX2 を 「X2
などと、1次式で「サイン」を近似することができました(テーラー展開・近軸光学)。

では、3次式まで使用し、sinX=X-(X^3)/3! と近似すれば、どうなるのでしょうか?

結果だけ紹介すると、sinX=Xで近似する場合よりも広範囲で良い近似を与えることができます。そして、この近似を用いて光線追跡を行った結果得られる収差が、「3次収差」、又は「ザイデルの5収差」と呼ばれています。この収差は非常に重要な5つの収差(係数)です。

その「ザイデルの5収差」とは、
球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差
の5つです。

以下、順に説明します。
まずは1つ目。

球面収差 〜レンズ面が球面であるために発生します〜

レンズ面が球面であることに由来する収差です。光軸上でも発生する収差です。下図のように、光線が球面を通過すると光軸と交点を持つように屈折します。しかし球面上光線の通過位置が光軸から離れるにつれて光軸との交点はレンズ側に移動します。近軸計算で得られる焦点とこの交点とのズレを球面収差といいます。

光軸からの高さ「h」を通過した光線は、理想的な像面(近軸焦点位置)から「」だけ離れた位置で光軸と交わります。

入射光が角度を持ってレンズ面に入射する場合にも発生します。この場合には主光線上のズレ量が収差に相当します。
鋭い方は既にお気づきになっていると思います。これは5-3で紹介した「縦収差」です。「ヨコ」方向に表現したものが「横収差」です。

そして2つ目。

コマ収差 〜彗星状の収差。軸外画角の収差〜

画角を持って光束が入射した場合、レンズのどこを通過するかによって、像面通過位置が微妙に異なってきます。従って、ある光線群が上手く像面で結像する場合でも、他の光線群が集光しているとは限りません(同じ画角でも!)。実際に見たほうが早いので、見てみましょう。

下から上へ進む彗星のように見えませんか?み、みえないですかね・・・COMETがなまってコマ収差と呼ばれるようになったそうです。

そして3つ目。

非点収差〜点として集光しません。焦点位置のズレに起因します〜

5-2で殆ど説明済みです。メリディオナル像面を基準にすると、メリディオナル光線はほぼ1点に集光していますが、サジタル光線は、十分には集光しておらず、「線」状に見えます。勿論サジタル光線群についても、同じことが成り立ちます。この、「点」として集光しない現象を、「非点収差」といいます。ちなみに、この、メリディオナル像面とサジタル像面間の間隔を「非点隔差(ひてんかくさ)」といい、「線状」に結像したものを「非点線像」といいます。下図をご覧下さい。

やっと4つ目。

像面湾曲 〜焦点位置をつないだら、像面が曲がってしまいました〜

一般に、平面状の像面に全ての光線が上手く集光してほしいのですが、現実はそうも行きません。各画角から射出される光線群が最もよく集光する位置を結び曲面を作成すると、平面ではない面が形成されます。像面が平面ではない状態なので、「像面湾曲」といいます。

本来は、左図のように全画角の結像点がまっすぐに並んでほしいのですが、右図のように歪んでしますことがあります。
これが像面湾曲です。

最後に5つ目。

歪曲収差 〜物体と像が相似ではありません〜

像面湾曲の状態から設計を始め、何と「全ての画角を平面上に上手く集光させることに成功した」とします。しかし、実際に結像した状態を観察してみると、もともとの物体面上の形状とは相似でなくなる、という場合があります。この、物体面での形状と、像面での形状が相似でなくなってしまう現象を「歪曲収差」と呼びます。文字通り、歪んで曲がってしまう現象です。

上:外側に広がってしまうタイプ。これは糸巻き型と言われます。
下:内側に縮んでしまうタイプ。こちらは、たる型と言われます

以上、「ザイデルの5収差」でした。

収差の残存状態をあらわすもの

さて、ここまででザイデルの5収差に関して、その概要を調べて来ました。さらに次のステップへ進みます。

3次の近似式を用いて光線を追跡すると、上述の5つの収差について収差の度合いを表す係数を求めることができます。この5つ係数が「収差係数」です。

各収差係数の導出は、市販の参考書に書いてあるので、ここでは省略します。
(ごめんなさい。自分は2桁以上の計算は不得意なので・・・。ご容赦ください。)

さて、本題です。
CODE Vでは、この5収差の残存状態を表す係数を計算することができます。収差毎にその係数が出力されるので、次にどの収差の改善に重点を置いて設計を進めるべきか?ということを把握することができます。

光学系は、いかに実物に近い状態を像面に再現するか、ということを目標に設計されます。従って、収差係数から収差の残存状況を把握し、そこから光学系の性能を把握できるようになれば、性能改善に必要な修正を加えることができるようになります。たぶん。

例えば、ザイデル5収差を示す係数が、像面上で「0」に近ければ、収差状態は良好であるといえます。逆に、収差係数の絶対値が大きい場合、収差状態は悪いということは、容易に想像がつきます。

まとめ&宿題

メリディオナル面:光軸と主光線を含む面。
サジタル面:メリディオナル面に垂直で主光線を含む面。
縦収差:各画角における集光位置の縦方向のズレ。
横収差:各画角における光線通過位置の横方向のズレ。

ザイデルの5収差
  1. 球面収差:レンズ面が球面であるために発生する焦点位置からのズレ。
  2. コマ収差:主光線と周辺光線とのズレ。
  3. 非点収差:物体面で「点」であるものが像面で点として結像しない状態。メリディオナル光線とサジタル光線の焦点位置のズレによる。
  4. 像面湾曲:理想的な焦点位置をつないで面を形成すると、歪んだ面になってしまう状態
  5. 歪曲収差:ディストーションともいい、物体面での形状と像面での形状が相似ではなくなる状態。
収差係数:評価面上での各収差の残存状態を表す。

先輩社員からの一言

収差の残存状態をあらわすもの」の最後の文章、「ザイデル5収差を示す係数が、像面上で「0」に近ければ、収差状態は良好であるといえます。逆に、収差係数の絶対値が大きい場合、収差状態は悪いということは、容易に想像がつきます」に関してコメントします。

収差論(収差係数)は、収差の大きさを把握して、設計に役立てようという目的で構築されたものですから、そうあるべきですよね。しかし、実は、収差係数をゼロにすれば収差がなくなるわけではないのです。

次回、CODE Vを使ってこのあたりを確認してみましょう。

前回の宿題の回答はこちら! ザイデルの5収差は主に何に依存するのか・・・

いかがでしたか?
先輩社員への回答は、次回(STEP 6)に掲載いたします。

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