新入社員の独り言 STEP2:光の振る舞い 宿題解答

問題

S君、「1. 幾何光学、波動光学」の最後の所に書いてある「回折限界」についてですが、無収差レンズを用いれば、幾何光学的には、光は1点に収束します。無収差レンズに対して、幾何光学的なMTF*の周波数**特性を見てみると、高い周波数まで0.999という値が計算されます。幾何光学で光を記述すると無限小に集光します、回折限界の壁など存在しません。一方、波動光学的MTFの場合は、周波数が高くなるにつれて、MTFは下がってきます。なぜでしょうか?調べてみてください。

回答

よく分からないので、言葉から調べて考えてみました。

無収差レンズ

文字通り、収差の全く無いレンズです。もっと言うと、光軸近傍で得られる性能が全ての画角領域で得られます(あまり広い画角では難しいかもしれません)。

幾何光学的なMTF

MTFとは、物体面における鮮明さをどれだけ像面で再現できるか、を示すものです。
幾何光学的に考えると、物体面から射出される光が像面に達したとき、放射時そのままの強度(光の状態)が保存されます。従って、無収差レンズを使用すると文字通り収差なく集光します。つまり、物体面の状態がそのまま像面に再現されるため、高い周波数(模様の細かさを示す)が高くなってもMTFの値が落ちません。

波動光学的なMTF

対して、波動光学的に考えると、物体面から射出された光(=波)が像面に達したとき、放射時そのままの状態が維持されるとは限りません。光を波として取り扱っている以上、その位置における「位相」を考慮する必要があります。光の状態は、その位置における位相状態で決まり、その状態を把握するには、物体面から像面までの光の道筋を把握することが必要です。加えて、その道筋は1つでは無いため、像面のある点における光の状態は、そこへ到達する全ての光の和として考えます。到達する光はそれぞればらばらな位相を持っていると考えられます。これらの光(=波)の和を考えると、物体面と同じ状態を維持しているとは考えられません。そのため、周波数が高くなるにつれ、MTFの値が落ちていくと考えられます。

「スカラー」か「ベクトル」か、その取り扱い方の違いが出力結果の差になっていると考えました。

先輩から・・・

うーん、光を波と捉えて位相を考えるのも、確かに波動光学の特質ですが、無収差レンズによる光路差(位相差)をレンズ設計ソフトなどで確認してみると、光路差もゼロなんですよ。それでも、波動光学的に考えると1点に収束しないのは、回折の影響です。光は、均質な媒質中でしたら、幾何光学で取り扱っているように直進します。ところが、光の進路に障害物(レンズ径による開口なども含む)があった場合、光は、途端に波としての性質を見せます。その障害物の後方に回り込むのです。これが回折です。レンズの大きさ(径方向)が有限ですので、回折は避けることが出来ません。

さて、幾何光学的MTFは、スポットダイヤグラムをフーリエ変換して求めることができます。スポットダイヤグラムは、幾何光学に基づいて計算されていますので、収差がなければ無限小の点に収束します。これは、物体面の情報を完璧に像面上に再現できるということです。そのため、無収差レンズの幾何光学的MTFは、≒1になるのです。

一方、波動光学的MTFは、PSFをフーリエ変換して求められます。PSFは、回折の影響により、点には収束しません。有限の大きさを持ちます。この大きさ以下に集光することは、理論上不可能なのです。そのため、波動光学的MTFには、解像できる限界があります。無収差レンズに対して波動光学的MTFを計算すると、空間周波数の増加に伴ってコントラスト(MTF)は下がっていき、ゼロになります。これが「回折限界」です。
このPSFの大きさは、幾何光学的収差が無い場合は、光学系の明るさによって決まります。
ステッパー用の光学系が明るい(NAが大きい)理由は、この回折の影響をできるだけ小さくしたいからです。


STEP2:光の振る舞い    STEP3:収差について

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