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事例・技術情報

ロボットを使って人を解明する
早稲田大学 創造理工学部 総合機械工学科 /ヒューマノイド研究所 高西 淳夫 教授

今回は、ロボット工学の中でも、ヒューマノイドロボットの研究分野でご活躍され、現代医療への応用や学生教育など、幅広く取り組んでおられる早稲田大学 高西 淳夫 教授にお話を伺います。

高西先生のプロフィール


先生の主な研究内容について教えて下さい。

大きく分けると人型ロボット(Humanoid Robot)の研究と、その研究の経験や成果を元にした応用研究の2つに分かれます。人型ロボットで言いますと、一番長く行っているのは、二足歩行ロボットの研究ですね。
1960年代の中ごろから、当時早稲田大学の機械工学科にいらっしゃった加藤一郎先生がロボット研究を始めておられました。その研究室にゼミ生として入れたことが、二足歩行ロボット研究を始めた一番のきっかけです。また、その技術を応用して、人を乗せて歩く、いわば、“二足椅子”の研究としても展開をしてきました。
そのほか、トヨタと共同研究でサクソフォーンを演奏するロボットなど、音楽の分野にも展開しています。人と同じ容積の肺、ビブラートが出来る喉、タンギングするための舌など、できるだけ人体解剖学的というか生物学的というか、そういうものにもとづいて音楽演奏が出来るロボットです。これについては後で詳しくまたご説明しましょう。

共同研究にも積極的に取り組まれていると伺っています。

そうですね。例えば咀嚼ロボットなども共同研究の一例です。これは歯科医学の方々との共同研究で、人型ロボットを作ることでいろいろな仮説を証明、実証していきたいという思いがあり、1980年代半ばから始まりました。90年代終わりになると、実際の遺体から取った頭蓋骨に人の筋肉と同じような特性をもった電動モータをつけて、ものを噛ませると顎にどういう変形が生じるのかということを、当時の共同研究先の昭和大学の歯学部の先生と一緒に行っていました。その後、その知識や技術を使って治療できるロボットを作って欲しいという話があり、当時の山梨医科大(現在の山梨大学の医学部)との共同研究で開口訓練の治療の研究をはじめまして、顎関節症に対して非常に高い成果を得ることができました。

先ほどお話にあった音楽分野や医療分野など、非常に応用範囲が広いのですね。


「フルートを弾くロボット」
写真提供:早稲田大学 高西淳夫研究室
ええ。医療分野での研究を行っていくうちに、音楽ロボットの分野でも、「いい音とは何か」ということを追求するようになりました。そこでフルート奏者の協力を頂いて、フルートを弾くロボットを製作しました。また、演奏には感情が深く関わりますので、早稲田大学文学部 心理学教室の木村裕先生に心理学者としてアドバイスを頂き、感情や情動を表出するロボットの製作に至りました。ロボットが知的な行動をとるということはロボットの中に方程式、つまり評価関数があるからできることなのです。
例えば音楽ロボットは、一番良い音の評価関数を持っておれを最大にするように自動的に学習します。つまり、心とか感情を決めている方程式のようなものが存在すると考えています。それを“情動方程式”という名前をつけて、心理学者の先生や論文などを見ながら解明していきました。「ロボットを使って人を解明する」ということは、工学の視点からいうと、まさにMapleではないけれど、数式化、定式化できるということが重要なのです。定式化できれば、色々なタイプのロボットへ応用・展開ができます。そして、医療や医療教育の場に転用、応用していくことで、医療レベルの向上に寄与したいとも考えています。

ロボット開発にはMapleを利用されたのでしょうか?

ええ。例えば、人の発声のメカニズム解明のために作られた発話ロボットの舌の形状を制御するためのシミュレーションに使いました。Mapleは式の変形がすぐ出てきますので、力学モデルのリンク構造を簡単に決めることができました。

Mapleを導入した時期や経緯を教えて下さい。

1990年から91年にMITに留学していました。当時、MITはトップの様々な企業と連携して先進のソフト技術を学内でも利用しつつ、更には企業へフィードバックするという活動を盛んに行っていました。そして、私がWindows 3.0をインストールして機能を試していた頃、数式計算できるソフトが沢山あるということが分かってきて、偶然というかラッキーというか、たまたまMapleを知ったんです。Mapleを自分で使ってみたら、本当に性能が良くて、例えば、6x6の逆行列の計算などは別のツールではクラッシュしていたのですが、Mapleでは出てきました。そして、色々調べていくうちに、Waterloo大学の数学者たちとMITとの関係や、バージョンアップも頻繁にされていることなどを知りました。MITもそれまでキャンパスライセンスを持っていませんでしたが、コンピュータセンターへMapleの導入を申し入れたところ、従来のソフトとMapleの性能の違いを検討した後、導入に至りました。それから 1年後、日本に帰った時も自分で利用し始め、早稲田もコンピュータが充実するようになってからMapleのサイトライセンスを導入するようになりました。

Mapleを導入した決め手は何でしたか?

早稲田では最初は別のツールを使用していましたが、数式処理としてはMapleの方が信頼性があったことと、もうひとつは、数式をC言語やFortranのソースコードで吐き出せるという点でしょうか。
例えば、多重リンクの振り子の運動方程式はMapleですぐにできます。シミュレーションのときはそのままMapleで計算できますし、それだけでなく、ロボットをC言語で作るときにも、Mapleで出力したCのソースコードをロボット用のコードに埋め込むとすごく楽にできるメリットがあります。我々エンジニアリング系にいる人でもMapleは応用利用しやすいですね。Mapleは、すごく便利だけど、原理も含めて理解できるという意味で非常に有効・有用だなと思います。
原理原則を理解できると言う点では、教育的効果も高いと思います。
例えば、これはロボット設計を学ぶための実習ツールとして開発したミニウェイと呼ばれるロボットですが、このテキストでもMaple を利用しています。

ミニウェイはMapleを利用した倒立振子ロボットとしてテキストに記載されていますね?

そうですね。これまで人型ロボットと人のための機械や装置の開発や研究をいろいろな方のご協力を得ながらやってきました。ただ、我々は大学という教育機関にいて、その技術を学生に伝えていかなければいけない使命も持っています。早稲田で蓄積されてきたロボット技術を学生に対して、どうやって習得してもらうか、これも重要な課題です。ロボットは理論だけあってもダメで、技術も必要です。ミニウェイについては、もともとはゼミ生の教育用につくりました。それを見たJAPAN ROBOTECHの社長に製品化を提案頂いたことから、共同研究をして製品版を作成しました。製品版のハードウェアも重要ですが、当然、理論も習得してもらわないといけないので、テキストも作りました。その中でシミュレーションに結びつけるための展開をするところでMapleを利用してきたので、教科書の中に取り込みたいとお願いしましたら、ありがたく、ご了解頂きました。

教育利用という点で、実際にMapleを利用した講義について教えて下さい。

総合機械工学科という新しい学科の授業で利用しています。Mapleそのものを力学に使うというよりも、まずMapleの概要から入り、ライセンス取得後の最初のアクティベーションから始めています。石井次席研究員が担当していますが、最初の10分くらいはパワーポイントで説明して、あとはハンズオンなので、演習問題をどんどん解いてもらってその後解説していくという風ですね。授業は各回3時間x3日間あり、1日目は「Maple & SolidWorks 入門教室」でソフトの概要とアクティベーション、2日目がMaple、3日目がSolidWorksといった形で授業を行っています。

Maplesoft、サイバネットへの要望などがあればお願いします。

今後、SolidWorksとMapleをリンクして使えればと思っています。Mapleの計算の出力がSolidWorksのアニメーションのところでパラメータとして取り込めたら最高ですね。それから、Mapleの講習会をやって頂いたり、勉強会や研究会などがあると嬉しいですね。

Maple 講習会はサイトライセンスを導入頂いた他の大学でも実績がありますので、是非検討させてください。最後に、学生に向けたメッセージを一言お願いします。

原理や背景にある理論や技術を知っておかなければならない学生にとって、Mapleは、もとの数式、つまり出発点から扱える良さをもっています。その良さを有効利用し、是非、大学のみならず、自宅のパソコンにもインストールして、繰り返して使ってみて欲しいと思います。原理にも触れつつ、最後の数値の答えもすぐに確認する・出来るようなスタイルを自分のものにする − エンジニアとして、これがひとつのライフスタイルとなってもらえれば良いと思っています。

取材を終えて

30年近くロボット分野での研究をされ、現在では利用者側に目を向けて、医療分野へ応用展開され、実際に数多く製品化されている点に大変感銘を受けました。高西先生、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(2010 年 10 月)



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