バッキーボールとC60フラーレン

最近、ナノテクノロジに関する記事をよく見かけますが、そのなかでもよくC60フラーレンという言葉が現れます。炭素原子が 60 個ボール状につながった形です。

[Maple Plot]

この構造はサッカーボールにも使われており馴染み深いものになっています。

[Maple Bitmap]

C60 フラーレンの発見の話は 1970 年代にさかのぼります。当時飽和 (saturate) していない 炭素ベースの分子の化学が Sussex 大学の Harry Kroto と David Walton の指導を受けた Sussex 大のク゛ルーフ゜により研究されていました。

彼らは長いチェーンの polyynes (多くの 3 重結合での化合物) と長いチェーンの polyynylcyanides の HC5N, HC7N および HC9N を合成する方法を開発しました。

これらの分子は非常に興味のあるものでした。なぜなら赤い大きな星によって作られ、星間媒質の雲の物質の放射天文学 (radioastronomy) により検出されるものだったからです。

  [Maple Bitmap]   A polyyne
  
[Maple Bitmap]  A polyynylcyanide

1980 年代にテキサス州の Rice 大学の Richard Smalley と Bob Curl によりひとつの技術が開発されました。彼らは原子のクラスターを作成するのに適切なターゲットのレーザ蒸気化 (laser vaporisation) を使いました。Kroto は、もしもターゲットがグラファイトから作られていたらレーザ装置は炭素チェーンの形成を照明するには理想的であろうと認識していました。それで Sussex における彼のグループと Rice のグループと共同研究を計画しました。

1985 年 9 月に Sussex/Rice の実験が行われ, レーザ蒸気化によって作られた炭素プラズマが飛翔時間質量スペクトロメトリにより実証されました。 実験により大きいチェーンあるいはクラスタが作られたことが確認されました。しかし実験の間、質量のピークは 720 (60 個の炭素原子に対応) にあることが注目されました。そして次にくるものは 840 (70 個のカーボンに対応) で,普通ではない振る舞いをしそしてあらゆる条件下で形成され非常に安定性を示していました。

この実験結果は、60 個の炭素原子の炭素分子が形成されたことを示していましたが、構造的な情報はあまりありませんでした。実験を繰り返したのち、この研究グループは、もっとも考えられるのは球状分子であると結論付けました。しかし 60 個の炭素原子が球を構成するためにどの様に配置されているかは正確には知られていませんでした。しかし Kroto は 1967 年のモントリオールの万博の展示での幾何学的なドーム構造を思い出しました。これは5角形と6角形を含む閉じた半球状のドームでした。彼は、これこそが C60 において炭素原子が配置される方法であると認識しました。それでこの分子は Buckminster Fuller のこの幾何構造のアーキテクトからと命名されました。そのため、C60 自身は Buckminster Fullerene あるいは省略され Bucky balls と知られています。楕円状 C70 のようなその他のこれに近いかご状の構造はすぐに発見されました。そしてこれらのかご状の分子の族全体は 'fullerenes' と呼ばれています。

この発見に対し Royal Swedish Academy of Sciences は、1996 年に彼らにノーベル化学賞を与えました。

Professor Robert F. Curl, Jr., Rice University, Houston, USA
Professor Sir Harry W. Kroto FRS, University of Sussex, Brighton, UK
Professor Richard E. Smalley, Rice University, Houston, USA

http://www.ch.ic.ac.uk/rzepa/mim/century/html/c60_text.htm

こうしてバッキーボールやフラーレンという言葉は有名な建築家 Richard Buckminster Fuller (1895-1983) にちなんで付けられています。

バックミンスター・フラーはモントリオール万博でのドームを設計した人として有名ですが近代のダ・ビンチ的な人だったようです。

Buckminster Fuller's Dome - Expo '67 Montreal

[Maple Bitmap]   [Maple Bitmap]

http://www.mpi-stuttgart.mpg.de/andersen/fullerene/fuller.html

では Maple で C60 の構造を作ってみましょう。

>    restart:

正 20 面体

まず正 20 面体を表示してみましょう。これには geom3d というパッケージが便利です。

まずパッケージを呼び出します。

>    with(geom3d):

Warning, the assigned name polar now has a global binding

正 20 面体は icosahedron というコマンドで作成できます。draw コマンドで表示できます。

>    icosahedron(ic,point(o,0,0,0),1.);

>    draw(ic);

ic

[Maple Plot]

この多面体の頂点をカットしていくことで正 5 角形と正 6 角形からなるサッカーボールのような頂点を 60 個もった、頂点をカットされた TruncatedIcosahedron ができます。

[Maple Bitmap]

このとき正 5 角形と正 6 角形の辺の長さは同じです。したがって正 20 面体をカットするとき辺の長さの 1/3 のところでカットします。

との多面体はgeom3dのTruncatedIcosahedronという関数で作成できます。C60 では炭素原子間の距離が決まりますので辺の長さも決まりますがここでは多面体の半径に相当する大きさを 1 として作成します。

>    TruncatedIcosahedron(tric,point(o,0,0,0),1.);

tric

tric という変数に多面体ができあがりますのであとはこれをプロットします。

>    draw(tric);

[Maple Plot]

C60 の表示

Mapleでは表示のとき、各多角形の面の中をカットしてしまうカットアウトという表示ができます。

この TruncatedIcosahedron をカットアウトを使って表示すると次のようになります。

>    draw(tric,cutout=7/8,lightmodel=light4,title="truncation: truncated icosahedron");

[Maple Plot]

この TruncatedIcosahedron (tric) の 60 個の頂点の場所に炭素の原子を表示してみましょう。

まず頂点の座標を vertices という関数で取り出します。

>    vv:=vertices(tric):

たとえば一番目の座標は次のようになります。

>    vv[1];

[0., .9794320854, .2017741063]

頂点の数は次の様に得られます。

>    n:=nops(vv);

n := 60

表示する炭素原子をあらわす球の半径 r を決めておきます。

>    r:=0.08:

プロットのためのパッケージを呼び出しておきます。

>    with(plottools):with(plots):

Warning, these names have been rebound: circle, dodecahedron, hexahedron, homothety, icosahedron, line, octahedron, parallelepiped, point, reflect, rotate, sphere, stellate, tetrahedron, transform, translate

Warning, the name changecoords has been redefined

Warning, the previous binding of the name arrow has been removed and it now has an assigned value

sphere 関数を使って60個の原子を作ります。球の色は白にしますと見えなくなるので少し灰色にしておきます。

>    for k to n do

>    p[k]:=sphere(vv[k],r,grid=[15,15],color=COLOR(RGB, 0.95, 0.95, 0.95)):

>    end do:

あとは display コマンドで表示するだけです。照明や遠近法により立体感を出します。

>    display(seq(p[k],k=1..n),style=patchnogrid,scaling=constrained,axes=framed,light=[45,45,1,1,1],projection=NORMAL);

[Maple Plot]

結合の表示

この表示では立体感があまりありません。これに分子間の結合を表示するとわかりやすくなります。

そのために faces 関数により各面を取り出します。12 個の正 5 角形と 20 個の正 6 角形が取り出されます。

これらの辺を、結合をあらわす表す線として描画し表現します。すべての面について辺を描くと各辺はそれぞれ二重に描かれることになります。

>    ff:=faces(tric):

>    nf:=nops(ff);

nf := 32

nops 関数で各多角形の頂点の数が得られます。隣り合う頂点を結べばよいわけです。それを line により描いていきます。

>    kkk:=0:

>    for k to nf do

>    nl:=nops(ff[k]):

>    for j from 2 to nl do

>    kkk:=kkk+1:lll[kkk]:=line(ff[k][j-1],ff[k][j],color=black,thickness=3):

>    end do:

>    kkk:=kkk+1:lll[kkk]:=line(ff[k][1],ff[k][nl],color=black,thickness=3):

>    end do:

あとはこの線と先ほどの原子を同時に表示すればよいわけです。

>    display3d(seq(lll[k],k=1..kkk),seq(p[k],k=1..n),style=patchnogrid,scaling=constrained,axes=framed,light=[45,45,1,1,1],projection=NORMAL);

[Maple Plot]

回転アニメーション表示

これをわかりやすい様に回転させアニメーション表示しましょう。

>    for k to 18 do

>    pp[k]:=display3d(seq(lll[j],j=1..kkk),seq(p[j],j=1..n)

>    ,orientation=[k*5,90]);

>    end do:

>    display([seq(pp[k],k=1..18)],style=patchnogrid,scaling=constrained,axes=framed,light=[45,45,1,1,1],projection=NORMAL,insequence=true);

[Maple Plot]

>