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BOOKレビュー

『スティーブ・ジョブズT・U』
ウォルター・アイザックソン(著)

「ブチョー!」「おっ、何だ?スズキ」「ちょっとハナシがあるんですけどー。ホラ、ブチョーこの前言ってたじゃないスか、今度の映画。宣伝費かけたいから、ケイザイジンとかキギョージンとかにもウケるヤツにしたいって」「ああ、確かに言った」「で、オレ考えてみたんっすよ。そしたら、ケッコーいい企画思いついちゃって…。で、ブチョーに聞いてもらおっかなー、なあんて」「お前が思いついた?映画の企画を?まあ、いいか。よし、聞こうじゃないか」

「えーっと、主人公は天才なんすよ。とにかくアタマ良くて、いい大学とか行くんですけどー、アタマ良すぎて大学なんかつまんないワケっすよ。で、中退して、自分でコンピュータ作っちゃうんです。会社も作ってすっげー成功するんですけどー、同じよーなモン作るライバルも出てきてー、ソイツの会社の製品に負けちゃうんすよ。このライバルってのも凄いヤツで、ガンガン稼いで世界一の金持ちになるんですけどー、でも、ちょっとヤなヤツなんですよ、このライバル。世界一の大金持ちのくせして、割引クーポン持ってアイス買いに行くよーなヤツなんス」

「で、製品売れなくなったオレの主人公の会社はアブナくなってぇ、そういうときとかって起こるじゃないスか、内輪もめとかケンカとかが。結局コイツ、自分が信じて会社に連れてきたヤツから、自分の会社を追い出されてしまっちゃうんです。でも、こっからがコイツのスゴいところで。今までやってたこととぜっんぜん違うアニメの会社とか買収して、あっと言う間に大きくして大儲け。ところが、その間に、コイツの元の会社の方はどんどんダメになっていくんス。で、やっぱ、アイツでなくちゃダメかも、ってことで、元の自分の会社の、えーっと、カブヌシ?たちに呼び戻されるんすよ。そしたら、コイツ、見てろ。やってやるぜ!って、スゴイ製品どんどん作って、会社はV字回復、世界中ビックリ。“負け犬になったかと思ってたら、アイツ、マジすげーぜ!”って。ホントに、世界を変えるような製品、どんどん作っちゃうんスよー。会社もどんどん大きくなって、最後は、えーとえーと、ジカソーガクで世界一の会社になる!でもー、いいことばっかは続かなくてぇ…」

「ふん。続きを当ててやる。どーせ、そこで、お前の主人公はガンにでもなるんだろ」

「ええーっ!? 何でわかるんスか!? さっすがブチョーだな?。でも、そーなんすよ。まだまだこれから、っていうときに、コイツ、ガンが発見されちゃって・・・。でも、ガンになんか負けないって、いっぱいすげーカッコイイ製品作るんすよー。カラダはどんどん痩せてくのに。泣けるでしょー。でも、いくら頑張っても、いくら天才でも、やっぱガンには勝てなくてー。でも、世界中が、どんなのだろー?って待ち望んでた新製品が完成して、それが発売された翌日に、コイツ死んじゃうんすよー。も、涙でしょ?こうやって自分で話してても、オレ泣きそーっすよ。もう、カンドー。で、最大のライバルだった、あの、ちょっとヤなヤツも、「彼こそは真の天才だ」ってコメント出すんです・・・。ね!?いいハナシでしょ!スゲー奴でしょ!? いつもブチョーが言ってるよーに、正に、キギョージンの鏡餅!」「“鑑”だっ!このバカ!」

「で、オレ、今、コイツの名前考えてるンすけどー、バリバリ仕事するヤツだからぁ、も、いっそのこと、“仕事”って苗字にしよっかなあ。と思ってて。『仕事 努(シゴト ツトム)』とか。なんか、努力家の感じ、出るじゃないっスかぁ・・・」

 「・・・。あのなぁ…。黙って聞いてりゃ、おい、スズキ!お前、生まれてこの方、少年ジャンプしか読んだことねーだろ!? なーにが、ライバルは世界一の金持ちだ、時価総額世界一だ! 友だちに裏切られて会社を追われ? 世界中が待ち望んだ新製品発売の翌日にガンで死ぬ、だ? ベタ過ぎっつーんだよ!『いいハナシでしょー?』だと? どこが、だ? 今、2012年だぞ。今どき、こんなベタベタなベタ話に誰が感動するんだ?もう、最初っから展開読めるだろ、展開が!おまけに、名前が「仕事 努」?どーゆーネーミングのセンスしてんだよっ、お前は!どこの時代で止まってんだ? ダメ! 全然ダメ。ボツだっ、ボツ!」

「えーっ、そーかな?? オレ、ぜーったいイケると思うんスけど。あ、待って下さいよ、ブチョー。世界は広いんですよー。ゼッタイどっかにいますって、こんなヤツ。ブチョー…。あ、イテッ!」

 

てなことになりませんか? この人生。架空の物語として聞いたらば。

でも、本当のお話。こういう生涯を送る人もいるのだと言うしかありません。しかし、彼の人生は、その天才があったとしても、やはりたゆまぬ努力の結果、形作られたものでしょう。現代のカリスマの人間的側面を感じさせてくれる1冊。

ハリウッドが映画化を考えているとの噂もありますが、どんな映画になるか楽しみでもあります。

『スティーブ・ジョブズT・U』

ウォルター・アイザックソン(著)/ 井口 耕二(訳)

出版社: 講談社(2011/11/2)


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