HOME

製品情報

医療機器設計とCETOL6σによる公差解析

1.はじめに

医療機器マーケットの成長は年々著しく、様々なユーザーの立場に立った日本ならではのセンスが盛り込まれた製品開発が進んでいます。それと共に製品の構造にも新しい技術や発想が加わり、設計者の力量がより試される時代に入っています。

公差解析は複数の部品で組み立てられるメカ製品を取り扱う設計者から生産技術・品質保証のエンジニアに至るまで、必ず通る(べき)精度検証のひとつです。簡単にプロセスを説明すると、設計時に設定された公差値の中で製造された製品を組み立てることで、組み立て品質がどの程度ばらつくかを検証することを目的に行う、公差値の積み上げ計算です。その結果を基に製品として正しく機能するか、製造することが可能かどうかの判断が行われます。

しかし、残念ながら日本の製造業では、熟練の設計者の長年の勘や経験と腕のある製造現場の人々によって高い品質が維持され、更には現品で試作を繰り返して品質確認するなど、事前に熟慮された公差解析を行なわなくてもモノを作ることができる特殊な文化が根付いてきました。これは医療機器だけでなく他の様々な業界でも見られる共通点です。その結果、熟練の設計者や製造技術者が現場を離れていくと共に、過去の図面は公差値を真似るただの「お手本」となってしまい、その根拠などのノウハウが継承されないままに流用されるようになりました。時代的にも2次元設計から3次元設計に移行するタイミングが重なり、製品イメージの捉え方(2次元CADか3次元CADか)がベテランと若手で異なることによるコミュニケーション不足の問題も、原因の一つと言われています。その結果、市場クレームの頻発や、少しのリスクも防ぎたいという過剰な精度要求に基づいた高付加価値生産などを、頻繁に目にするようになりました。特に高付加価値生産では、新製品の設計、特に人命への関わりが大きい医療機器においては、より一層厳しい公差値を設定することでリスクを低減する「守りの公差」に向かいます。しかし実際には「守りの公差」と「適切な公差」は異なり、その判断基準も非常に曖昧なものになっている今、「適切な公差」を判断する手段が、若手にも中堅の設計者にも求められていると言えるでしょう。

視点を海外に向けると、近年米国では法規制や薬事申請内容の変更などに伴い、医療機器業界で公差解析の実施による設計の見直しが、爆発的に増加しています。改めて公差値を見直すことによる製造コストの改善と、自社製品の設計品質を数値的に明示することが主な目的です。このときに使用されているのが、サイバネットシステムの100%子会社である米Sigmetrix社が開発を行う3次元公差マネジメントツール、『CETOL6σ』です。今回はこのツールが医療機器設計で選ばれる3つの理由、「@手軽に高精度の公差解析が行える、A“適切な公差”が設計できる、B検討資料を自動で作成できる」を通じて新しい医療機器設計の姿をご紹介します。

2.手軽に高精度の公差解析が行える


図1 CETOL6σイメージ

先述の通り3次元CADを使用した設計が標準となりつつある中で、3次元データの活用は必然となります。CETOL6σはCreo Element/Pro (旧Pro/ENGINEER)・CATIA V5・SolidWorksの3種類の3次元CADのアドインツールとして、3次元CADのジオメトリを使用した公差解析環境を提供しています。3次元CADで製品モデルを作成し、そのままモデリングの延長上で公差解析に取りかかることが可能です。

CETOL6σは2次元空間内では検討が困難だった3次元空間内での寸法バラツキによる組み立て品質への影響を正確に判断し、計算に反映します。これは3次元公差解析を行うために開発された、CETOL6σ独自の演算だけが実現できる品質です。

また、公差解析の手法は大きく分けて二つ存在します。一つは「ワーストケース」、その名の通り公差の最悪値(上下限値)を積み上げる方法です。


Tii番目の寸法のプラスマイナス公差

もう一つは「二乗和平方根」、分散の加法性に基づいて公差の積み上げを行う方法です。現実的に起こり得る可能性の少ない公差の最大や最小で製造されるケースは考慮しないため、ワーストケースに比べて得られる結果は小さくなります。

Tii番目の寸法のプラスマイナス公差

医療機器の場合、この手法の使い分けは製品の種別にも依存してきます。クラス分類で考えてみます。

(a) 高度管理医療機器:ペースメーカー・人工心臓弁・透析器など

不具合が生じた場合に生命の危険に直結する恐れがあるため、起こり得る可能性が低くとも最悪のケースを考慮して設計する必要があります。そのためワーストケースでの検証となります。

(b) 管理医療機器:画像診断装置・電気メスなど

生命の危険または重大な機能障害に直結する可能性は低いため、二乗和平方根とワーストケース、どちらも使用が考えられます。

(c) 一般医療機器:手術台など

不具合が生じた場合でも人体への影響が軽微であるため、二乗和平方根の使用も可能です。しかし、生産数が少なく統計的なデータが取れない製品の場合には、ワーストケースが使用されることもあります。


図2 演算結果例

別の視点ではディスポーザブル製品か、リユーサブル製品かでも考え方は異なります。前者の場合は大量生産品であるケースが多いため、この場合は二乗和平方根で検討し、製造の中で検査などの品質管理を行うことで不良品の流出を予防する手段が考えられます。また、後者の場合は使用年数が10年以上にわたる場合もあるため、経年変化による品質検討に使用されますが、この場合の寸法変化は統計的ではなく、最悪の状態が起こり得る可能性もあるため、ワーストケースでの検討となります。

生命への影響が少なく、大量生産が行われている民生品の設計では二乗和平方根を使用した公差解析が主流ですが、医療機器設計は民生品とは異なり、ワーストケースによる検討が主流となっています。CETOL6σでは両手法の結果を一度に算出するため、今、自分の設計が求められる品質要求に対してどの状態にあるかが明確になります。


3.「適切な公差」が設計できる


図3 寸法寄与度と公差寄与度

公差解析を行うことで誰もが知りたいのは積み上げ計算の結果だけではありません。むしろ、結果が狙った品質に満たない場合や、逆に品質が良すぎるときに、どのパラメータに手を加えるのが効果的か、また、どの程度のチューニングが行えるかといった改善のための指標の方が重要です。CETOL6σでは「寸法寄与度」と「公差寄与度」という二つの指標から、これらのニーズに応えます。

寸法寄与度は、個々の部品寸法の重要度を表した結果です。組み立て寸法(品質)に対して、それぞれの寸法が1対いくつ(=○○mm/mm)の関係かを表しています。これにより、どれが重要管理寸法かそうでないかが明確になります。公差設定を一から設定する段階であれば、この結果を基に寄与の高い寸法に対して重点的に厳しい公差を入れることで、根拠のある公差設定を始めることができます。更にはインライン・オフラインでの検査を行う寸法を検討する際にも、寸法寄与度は重要な指標となります。実際に過剰な全数検査から、「必要な箇所を必要なだけ」という品質管理に転換することで、適切な工数への改善が実現できます。

また、公差寄与度は現在の公差設定に対する評価です。要求品質に対してどの公差値の影響が高いかをパーセンテージで表しています。そのため、バラツキが要求品質に対して大きかったときは、どの公差を見直せば効果的に品質改善が図れるかが明確です。特に厳しい公差設定を行っている医療機器設計では、パーセンテージの低い公差値への注目が高くなります。この部分は公差緩和を行っても品質へのインパクトが少ないため、効果的に品質を守りながらコストを正当なレベル削減できるチャンスなのです。

「寸法寄与度」「公差寄与度」、どちらの指標もフェーズに応じて活用されており、「勘や経験」が無いと適切な設定が難しかった部分が数値化されることで、誰にとっても納得できる公差設定と品質管理に繋がっています。


4.検討資料を自動で作成できる


図4  CETOL6σレポート例

3次元CADのデータの中で適切な公差設定が終了すると、報告業務が待っています。社内資料であったり、納入先への報告であったり、もしくは申請時に品質検討を説明するための添付資料であったりと用途や内容は様々です。しかし報告書の作成にはどうしても時間がかかり、できるだけ楽に作りたいという要望が根強くあります。CETOL6σでは、レポート作成機能を通じてこの要望に応えています。CETOL6σのレポートテンプレートはカスタマイズ性が高く、下の例のようにユーザー自身が企業のロゴを入れたり、好きな場所にコメント欄を追加したりすることができます。決まったテンプレートで不要な情報まで全て出してしまう“使えない”レポート作成機能とは異なり、本当にエンジニアが使いたいデータだけを入れて簡単に作成できる“使える”レポート作成機能として、高い評価を得ています。


5.おわりに

早期に高精度な公差解析を行うことで、先々で予想される組み立てトラブルや性能に関する問題の早期発見と解決が可能です。病気と同じで、「早期発見・早期治療」が製品設計にも重要なのです。そしてこの癖がつくと、問題の「予防」を行うセンスも身につきます。実際に設計現場では、公差解析を正確に行って問題を解決し、品質管理を行うことで、試作や金型修正にかける費用が大幅に削減されています。3次元CAD設計とあわせた公差解析の実施は、今後、より標準的になってくるでしょう。

お問い合わせ

アドバンスドソリューション事業部 PIDO室

E-mail:cetol-info@cybernet.co.jp

1/6

(11/17)