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特集:最適化を考える

特集に寄せて

正しく使おう! 「最適化」

「最適化」という言葉には大変に魅力があります。と同時に誤解があるのではないでしょうか?最適化はいわゆる数理計画法と呼ばれる数学的手法で、「目的関数を制約の下で最小化(あるいは最大化)する問題」として定義付けられております。そしてその手法もコンピュータ技術の発展と密着して数々の方法が開発され、現在では構造解析、電気回路、光学設計等の工学問題だけでなく、交通システムや物流などの社会問題まで、様々な分野で応用されており、多くのシミュレーションツールに実装されるまでに至っております。そしてそれらは「条件を与えれば自動的に最適な解を見つけてくれる」ことをうたい文句にしております。果たしてそうでしょうか?これには多くの人が「ノー」と回答するでしょう。

私が考えるに「最適化」と「最適設計」は、似て非なるものです。このことを改めて伝えたいと思い、本特集を組みました。最適化は先に述べた通り数学的に定義された問題に過ぎず、いわばそこには人間は介在しない無機的な問題です。それに対して最適設計は、設計問題である以上、「人間の知恵を振り絞る」いわば大変泥臭い作業を伴う有機的な世界ではないでしょうか。最適化は最適設計を行う一手段に過ぎず、正しく理解することにより大変大きな力を発揮するものと信じます。従来から良く言われる「最適化は使いものになるか?」の問いは愚問に過ぎず、その多くは最適化と最適設計を混同しているのかも知れません。当社も最適化を内蔵した多くのシミュレーションツールを扱っており、また、統合最適設計(PIDO)を行うツールを扱っている以上、正しい情報を届けることが務めと考えております。今回は多くの専門家の方々から、理論面、応用面、実用面と多方面から解説頂いたことを大変に嬉しく思うと同時に、皆様に有益な情報を、自信を持って届けることができたと思っております。

何故、最適設計は難しいのか?

それではなぜ、最適設計は難しいのでしょう?本特集を読み進めるに当たり、その謎は徐々に明らかになるかと思いますが、主に以下の3点について注意して頂きたく思います。

理論的側面:理論的にはある特殊な問題(凸型問題)で無い限り、真の最適解を見つけることは不可能です。しかし多くの理論化の努力により、実用上、有効な解を得ることができるアルゴリズムが近年開発されております。

コンピュータ技術的側面:多くの最適化には数値計算を伴います(そうでないものもありますが)。これらはコンパクトな問題なら非常に上手く機能しても、実問題に適用すると、途端に大規模になり、計算困難な問題になります。この場合、すぐに引き合いに出されるのは、コンピュータの進歩ですが、いくらコンピュータが進歩しても本質的に、実用上解けない問題もあります。俗に言うクラスNPの問題です。これらもヒューリスティックな手法により突然に解けることもあり、また、性質の良いクラスPの問題に変換できることもありますが、NP=PかNP≠Pかの問題は未だ解決されていないと思われますので、工学的センスを持って、必要以上に問題を複雑化しないことが重要になってくると思われます。

設計問題的側面:そもそも最適な設計など存在するのでしょうか?多くの製品は不特定多数の消費者が相手です。年齢や体格、性別など趣向違う人々が等しく満足する、真のユニバーサルデザインなど存在するはずがありません。現在、広く使われている「ユニバーサルデザイン」という語は、「重心値設計」あるいは「趣向にロバストな設計」ということであろうかと思います。しかし、これは大変に重要なことで、最近の最適設計の成果は一部、これらを可能としています。

また、最近は、例えば車のシートポジションやルームミラーの角度など、乗る人を自動認識して個々人に合わせるという研究も実用化し始めているので、真の意味での個々への最適化もできるようになっています。

このように、今後、益々我々に恩恵を与える最適化/最適設計を本号でお楽しみ頂けたら幸いに思います。

サイバネットシステム 執行役員 CTO 石塚 真一

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