いまさら聞けない!電気回路設計者向け EDA基礎知識 部品内蔵基板 〜これからの実装のカタチ〜

1.背景

「PWB: Printed Wired Board / PCB: Printed Circuit Boardと呼ばれるいわゆるプリント回路基板の歴史は、搭載される部品の単位面積あたりの実装数量の向上の歴史である。」

その言葉の通り、PWBにおいては積層手法における片面配線、両面、高多層化さらに層間接続手法としての貫通ビア、IVH、Buildupと発展してきています。

またPCBについてはLSIチップにおける単位面積あたりのゲート数量が飛躍的に向上し、それに伴ってPWB上の配線及び間隔(L/S)の細線化が進んでいます。

実装密度の向上は単にそれだけに留まらず、電気的な特性を担保する技術でもあり、新たな課題も多く浮上(SI/EMI etc)します。 部品内蔵基板(Embedded PCB)も次世代の実装技術で、携帯電話等を中心とした製品に利用されてきており、その特徴的な機能は今後、新たなアプリケーションを発生するものと考えられています。

2.市場

2007年市場は、ワールドワイド数量ベースで前年比174.4%増の1,652万個。
携帯電話のカメラモジュールとワンセグモジュールに採用され携帯電話は常に新しい基板を搭載するエレクトロニクス機器であり、また、デバイスに対するコスト吸収力も強いため比較的部品内蔵基板を搭載し易いようです。

2008年も携帯電話がこの市場の中心となり、07年比111.9%増となりました。
今後は、携帯電話のカメラモジュール、無線系モジュールにも採用が広がり2012年予測では7億5,000万個(07年比45倍)と大幅に使用量が増えることが想定されています!

携帯電話以外では、自動車への採用が挙げられます。自動車のECUが統合化に向かうため多機能を盛り込み、かつ基板面積の縮小が求められ、採用されると予測されます。

(出典:エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧 )

3.部品内蔵基板のメリット

その1

小型化の制約となっていた実装面積確保について、表面実装部品の直下にも部品を内蔵する事で、より実装面積の有効活用が可能になります。
また部品レイアウトを効率良く配置する事で、配線長の短縮にも効果を上げ、性能向上に有効なプロセスとなります。

その2

ノイズ発生源を基板内に内蔵する事でノイズを押さえ込む設計が容易になります。
EMI (放射電磁雑音)発生に対して受動部品内蔵基板では、デカップリングコンデンサを直下(基板内)に配置でき、帰還電流ループ長を抑え、 EMI 発生を少なくする事が出来ます。

ちょうど良いサンプルデータを見つけましたのでご紹介します。

表面実装と基板内蔵の比較

電磁界シミュレーションのモデル

コンデンサは表面実装で1005サイズ/T=0.55mmMAX
基板内蔵で1005サイズ/T=0.22mmMAXを使用。
今回、コンデンサはショートした構造のものとし、簡易的にインダクタンス成分だけをシミュレーションしました。

基板のインピーダンス‐周波数特性データ

今回モデルとした基板では、基板内蔵にすることで表面実装に比べ、配線を含んだ基板のインダクタンスが約1/10に低減しています。実際の回路を構成した基板でも同様に大きな電気的特性の改善が可能と推測されます。

(出典:村田製作所)

4.部品内蔵基板の構造

部品内蔵基板の特徴は、搭載部品の形状、工法また製造設備によってことなります。
分かりやすくまとまっている図がありましたので、下記にご紹介します。

(出典:日経エレクトロニクス)

部品内蔵は、小型化に貢献するだけでなく、ノイズ問題にも良い傾向だそうなので、この技術進歩により、携帯電話をはじめとするポータブル製品の歴史がますます発展しそうですね。

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