河川〜沿岸における流れ・物質輸送の
可視化

山口大学工学部 社会建設工学科 赤松良久 様

沿岸における栄養塩動態の可視化

名蔵湾内にはかつては見事なサンゴ礁が分布していたが、流域での土地開発が進み赤土が多量に流出するにしたがってサンゴ礁は激減してきた。従来、サンゴ礁の激減は赤土が堆積することによるものと考えられてきたが、サンゴ礁は本来貧栄養の水域に生育することを考えると閉鎖的な湾内では富栄養化がサンゴ礁の激減の要因となりえる。そこで、平水時の河川からの流入した栄養塩(NO3-N)の湾内での挙動を数値シミュレーションによって再現した。干潮時の湾内での流速および栄養塩濃度の可視化結果を図-4に示す。河口の名蔵大橋から流出した栄養塩濃度の高い河川水の影響が東岸全域に広がっていることがわかる。2,3週間にわたって計算した結果ではこのような高濃度域は定常的に存在し、東岸ではサンゴ礁の生息域が富栄養状態になっていることがわかった。


図-4 沿岸における流れ・栄養塩動態の可視化
(流速はベクトルで、栄養塩濃度はコンターで、陸上部は茶色の領域で示す)

流域における物質の流れの可視化

本研究で対象とした名蔵川流域では赤土流出が下流の生態系に様々な影響を及ぼしていることわかる。しかし、赤土の供給源である畑地を有する住民は自分の畑から流出した土砂が下流域の生態系の破壊につながっている という認識はほとんどない。したがって、実際に赤土が河川を通して沿岸域まで流出していく様子を可視化することは住民への現象の説明と協力の要請に有効であると考えられる。図-5に流域全体の鳥瞰図に河川・干潟・沿岸それぞれでの土砂濃度のコンターを重ね合わせた可視化結果を示す(赤色が高濃度部分)。河川を通して輸送された赤土が沿岸域まで広がっている様子が見て取れるが、河川と湾のスケールが違うため、河川の部分の濃度は見づらい。この問題点は、AVSの追加モジュールであるFlyThroughAnimationを用いて河川から沿岸まで飛びぬけながら赤土が河川から沿岸まで流れていく様子を追いかけていくアニメーションを作成することにより解決される。

おわりに

環境・防災に関わる問題は多くの場合において住民との合意形成を必要としている。近年、注目を浴びている津波に関してその危険性をアニメーションによって住民に伝える試みが多数行われている。本研究で示したような環境問題に関しても、アニメーションを用いた可視化は水域における環境問題の解決に有効であると考えられる。

参考文献:
[1] 赤松良久,池田駿介:マングローブ水域における物質循環,土木学会論文集,No.768/U-68, pp.193-208, 2004.8.
[2] 赤松良久,石川忠晴,池田駿介:湾内のサンゴ礁生息環境に関する数値シミュレーション,水工学論文集,第50巻,pp.1483-1488, 2006.

参考URL:
マングローブ水域における物質循環

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