防災科学技術研究所 地震観測データセンター 高感度地震観測管理室 汐見 勝彦様 地震観測網を運用した地震の研究 〜地震被害の軽減を目指して!〜

地震観測網の種類と研究成果

【図2】Hi-netの観測点
【図2】Hi-netの観測点

さて、私達、防災科学技術研究所が担当しているのが地震観測です。現在、地震の観測点は全国で約2000カ所あり、この研究所では、3種類の地震計を観測に使用しています。

「強震計」は、家やビル等を壊すような強い揺れを記録する地震計です。
「高感度地震計」は、弱い地震を高い感度で計る地震計。「広帯域地震計」は広い帯域を計る地震計で、たとえば、十勝沖とかで地震があった時に東京で船酔いしたような経験がある方も多いと思いますが、遠い震源から伝わってくるゆっくりとした揺れ、中には人が感じる事ができないくらいゆっくりな揺れもありますが、そのような揺れをはかることが出来ます。

高感度地震観測網 High-sensitivity seismograph network(Hi-net) 【図2】

高感度地震観測網は、Hi-netと呼ばれています。Hi-netの観測施設は、全国に約800カ所あります。高感度の地震計ですので、非常に小さな地面の揺れも全部記録してしまいます。地震以外の、私達が歩いたり車が走ったり、工場が動いたりしている振動も記録します。
そういった地表のノイズを避けるために井戸を掘ります。
大体100mから深いところで3000mくらいの井戸を掘って地中に地震計をいれて地震の記録を取ります。特に、柔らかい地層が厚くたまっている場所での地震観測はきちんとした地震の記録が取れないので、固い地層がでるところまで深く掘って地震計をいれます。
逆に、山のような固い地層が出てくるところは、浅い井戸で観測します。

強震観測網 Strong-motion seismograph networks(K-NET、KiK-net)

強震計は、私達の住環境にできるだけ近い場所で観測をしていますので、市役所の駐車場や人家の近く、田んぼの中など、比較的街中で観測します。K-NETと呼ばれる観測網は、日本全国に1000箇所以上で強震動の観測を行っています。

また、Hi-netの地表と地中の2か所にもペアで強震計が設置されていて、こちらはKiK-netと呼ばれています。2か所に設置するのは、地震の揺れは地表に近付いてくると急に大きくなると言われていて、地下の地質が違うと揺れが大きく変わってくるからです。
よく、隣町は「震度3」と発表されてるけれど、うちの町は「震度4」に感じた、あるいは地震なんて感じなかったと言われます。そのくらい場所によって変わったりするんです。それを知るために地中と地表に設置して、堅い地盤から地表までの間にどれくらい地震の揺れが変わるのかを測ります。

広帯域地震観測網 Broadband seismograph network(F-net) 【図3】

広帯域地震観測網というのはもうちょっと研究者よりになってきて、何分とか何日といったような非常に長い周期の揺れもとることが出来ます。とても敏感な地震計で、温度や気圧の変化も全部記録してしまうので、山の中腹にトンネルを掘り、扉を何枚もつけて気圧、湿度、温度等が変わらない部屋を作り、そこに地震計を置きます。この観測網のデータを使うことによって、地震がどういう力をうけて起こったのかが分かります。これは、今起こった地震が、最初に話した3パターンの地震のどれに属するのか、を的確に判断するのに有効な情報なんです。大掛かりなシステムなのでなかなか数も増やせないですが。

地震観測網の研究成果

阪神・淡路大震災前は、東海地震や首都圏直下等、昔から地震が懸念されている所には地震計はたくさん置いてある反面、震災の起こった神戸や2000年に地震のあった鳥取県西部ではほとんど地震観測はされておらず、とても偏った分布でした。ただ、こういう観測をしていると、いつまでたってもどこで地震が起こるかといった基本的な情報が得られないと言うことで、現在は日本全国できるだけ均一になるように地震観測点が設置されました。

その結果、今まで検知できなかったようなマグニチュード(M)0.3〜M1.2の小さな地震まで観測できるようになりました。これだけ細かいデータが取れると、地震の起こりうる場所が分かるようになります。今、小さな地震も起きないところでは、今後大きな地震は起きにくいと考えられます。逆に、今、小さな地震が起きている範囲が、もし一回の地震で全て破壊したとすると、最大どれくらいのマグニチュードの地震が起こるかと言う予想が出来ます。そういう意味で細かい地震までちゃんと地震を見つけて、震源の位置を推定するというのが重要になってきます。

この様に日本中にたくさんの地震計をおいて地中と地表を観測した結果、今年(2008年)の5月に発生した岩手・宮城内陸地震の時に、岩手県一関市で非常に大きな地震の揺れを記録することが出来ました。【図4】
地球の重力は980galで、それを超えると物が飛び上がるのですが、この地震の震央近くでは、約4000galだったんです。今までみたいに50キロ位の間隔の観測では見えなかった、このような非常に大きな揺れが見えてきたというのは、観測地点を増やしたことの最大の成果ですね。最近震度5や6の地震が多いと言われますが、それは本当に地震が多くなったというよりも、むしろ観測地点を増やしたことによって、より正確な震度をはかれるようになった、今まで気付かなかった大きな揺れをも、もれなく観測できるようになった証のように思います。


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