ANSYS 14.0リリース情報ANSYS Mechanical APDL 14.0 新機能

はじめに

近年、ANSYSの新機能と言えば、Workbenchの追加機能が多く目立ちますが、ANSYS Mechanical APDLでも接触テクノロジー、非線形材料テクノロジー、線形動解析テクノロジーなど既存機能の拡張、新機能の追加が数多く見られます。今回は、ANSYS Mechanical APDL 14.0で追加された機能の中から、以下の機能についてご紹介します。

  • 接触安定化減衰
  • 粘弾性を考慮した周波数応答解析
  • 拡散連成解析

接触安定化減衰

接触解析が収束せず困っている方に朗報です。接触解析の発散は主に

  • 接触剛性値(垂直ペナルティ剛性)が適切でない
  • 構造不安定による剛体移動

の2つが原因となりますが、14.0で新たにサポートされた接触安定化減衰は、「構造不安定による剛体移動」が原因で接触解析が収束しない場合に有効な機能となります。
接触安定化減衰とは、その言葉通り、接触面に対して減衰効果を付加し剛体移動を防止する機能で、接触状態がすべて開いている接触ペアに対してアクティブとなります。
実際に使用される減衰値は接触剛性値や現時間ステップで使用される時間増分などから内部的に計算されますが、リアルコンスタントFDMN、FDMTで垂直方向および接線方向の減衰スケーリングファクタを入力し、問題に応じて減衰係数の調整を行うことも可能となっています。また、本機能に対応するコンタクト要素のKEYOPT(15)により、減衰効果を無効にしたり、適用する荷重ステップを設定したりすることもできます。
本機能の使用条件は以下のとおりです。

  • 対応コンタクト要素:CONTA171 〜 177
  • 接触面の挙動は、「標準」、「滑りなし」に限定

この有益な接触安定化機能ですが、一部の条件を除いてデフォルトではアクティブではありません。接触状態が開いている接触ペアに対して手動で本機能をアクティブにするためには、リアルコンスタントFDMNに非ゼロの値を入力する必要があります。ただし、以下の条件がすべて満たされている場合に限り、自動的にアクティブとなります。

  • ある接触ペアの接触状態がすべて開いている。
  • 接触判定方法が積分点、またはサーフェス投影法を定義している
  • 積分点でなくコンタクト要素の節点がターゲット要素と接触している、または、食い込んでいる

図1 コンタクト要素の積分点位置

3つ目の状態は、例えばモデルの頂点と他の面が接触している状態を指しています。モデルの頂点と他の面を接触するようにモデル作成していると、初期モデルとしては接触しているように感じますが、コンタクト節点よりも内側に存在している積分点とターゲット要素間にはギャップが生じています(図1参照)。つまり、初期ギャップが存在している訳ですが、この状態で力や圧力などの荷重を載荷するとその構造物は剛体移動を起こし発散します。よくユーザーの方々が誤解されるこのような状況において、接触安定化減衰機能は自動的にアクティブとなる訳です。
では、本機能が自動的にアクティブとなった場合ですが、 使用されるキーオプション、減衰スケーリングファクタは、以下のような値となります。

  • KEYOPT(15)= 0:第1荷重ステップのみ有効
  • FDMN=1 、FDMT=0.001

これらの値が適切かどうかは、問題により変化しますが、計算中に使用された減衰エネルギーについては、以下の方法で取得することができます(図2は、時刻歴ポストプロセッサを使用した例)。

  • 総合ポストプロセッサ:要素テーブルのAENEラベル
  • 時刻歴ポストプロセッサ:ENERSOLコマンドのAENEラベル

解析終了後は、接触安定化エネルギーがひずみエネルギーと比較して十分小さくなっていることを確認してください。


図2 時刻歴ポストプロセッサを使用したエネルギーの比較

粘弾性を考慮した周波数応答解析

エンジンで用いる防振材のゴムでは粘弾性材料を考慮した振動問題が重要ですが、ANSYSでは以前より粘弾性を考慮した周波数応答解析が可能となっています。粘弾性特性は、時間領域を表現した式(1)のProny級数近似で定義しますが、これを周波数領域表現に変換し、動的な弾性応答として示したのが式(2)の貯蔵弾性率、動的な粘性応答として示したのが式(3)の損失弾性率となります。

13.0までは、貯蔵弾性率を周波数依存の弾性率としてTB,ELASTICコマンドにて定義し、損失弾性率を周波数依存の減衰としてTB,SDAMPコマンドにて定義しなければなりませんでした。これは、式(1)にあるProny定数αi 、τi から周波数毎の弾性率や減衰を計算しなければならないことを意味し、非常に面倒な作業でした。しかし、14.0からは、粘弾性解析で使用していたTB,PRONYコマンド(Prony級数近似)を定義し、フル法による周波数応答解析を実施するだけで動的な粘弾性特性を考慮することができます。図3は粘弾性を考慮しない場合と考慮した場合の解析結果の例ですが、粘弾性を考慮することでピーク応答およびピーク周波数が減少していることが分かります。


図3 粘弾性を考慮した周波数応答結果例

拡散連成解析

パッケージの封止には成型が容易であることから樹脂を用いていますが、樹脂は水分の透過性があることから、室内に放置するだけで吸湿します。特に、SMD(Surface Mount Device)は、実装時のリフロープロセスにより急激に湿度が変化するため、湿度変化による膨張および収縮が問題となります。一方、パッケージクラックの発生確率は、パッケージ内部の材料界面の水分濃度が大きく影響していることが分かっているため、パッケージの水分濃度を把握することは重要となります。このようなアプリケーションに対応できるのが拡散解析、または構造−拡散連成解析となります。
これらの現象で使用する拡散方程式は熱伝導方程式とその形が同じであるため、これまでは伝熱解析機能を代用し計算してきました。しかし、14.0では独自の解析タイプとしてサポートされるようになりました。対応する要素タイプは、最新テクノロジーの連成場要素PLANE223、SOLID226、SOLID227で、構造−拡散、伝熱−拡散、構造−伝熱−拡散の3つの連成解析が実施可能です。これらの連成タイプの切り替えは、対応要素タイプのKEYOPT(1)で行い、構造−拡散連成はKEYOPT(1)=100001、伝熱−拡散連成はKEYOPT(1)=100010、構造−伝熱−拡散連成はKEYOPT(1)=100011となります。これらの拡散連成解析では、MPコマンドにて表1に示す材料特性を定義する必要があります。

表1 拡散連成解析で使用する材料特性

拡散連成タイプ 内容 MPコマンドラベル
構造−拡散 拡散率 DXX、DYY、DZZ
飽和濃度 CSAT
拡散膨張係数 BETX、BETY、BETZ
参照濃度 CREF
伝熱−拡散 拡散率 DXX、DYY、DZZ
飽和濃度 CSAT

構造−拡散連成解析では、伝熱−拡散連成解析とは異なり、拡散膨張係数および参照濃度が追加で必要となります。これらの材料特性は、濃度変化によるひずみを示す拡散ひずみの算出に使用されます。拡散ひずみεdi は、式(4)にて算出されます。

ここで、Csat は飽和濃度、βは拡散膨張係数、ΔC は参照濃度からの濃度変化を示しています。図4は構造−拡散連成解析の例となります。拡散特性の異なる2つの材料を積層した構造で濃度変化ΔC が1となるように定義しています。本解析例では、各材料の拡散ひずみは式(4)から材料1が0.01015 、材料2は0.004となりますが、ANSYSの結果と一致しています。


図4 大変形を考慮した構造-拡散連成解析例

最後に

今回は3つの新機能についてご紹介しましたが、少しでも読者の皆様の日常業務に役立つ内容であれば幸いです。
今後もANSYS Mechanical APDLの機能拡張についてご期待ください。

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