セミナーレポート

ここでは「CAEの教育と推進を考えるセミナー2001」においてのセミナー・ご講演概要をご紹介します。

東京理科大学情報メディアセンター CAD/CAE研究会主査 吉本成香氏

http://www.rs.kagu.sut.ac.jp/~yosimoto/index-j.html

【講演者経歴】
東京理科大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。現在、東京理科大学工学部機械工学科教授(工学博士)学部:機械設計、機械製図(CAD、CAEを含む)、工作実習を担当。大学院:精密工学関連授業を開講。

CAD/CAE研究会の活動の概要説明

最近では、PC上で有限要素法ソフトを使用したり、設計業務においてCADを用いることが一般的に行われるようになりました。本学では、このような社会状況に対応しA N S Y Sを用いた授業を開講しましたが、その授業内容をANSYSConferenceで紹介した際に多くの参加者からの興味が集まりました。そこにはCAEツールを使う際の設計者教育、あるいはCAEの社内推進に悩み、解決方法を模索している方が非常に多いという現状が垣間見られました。そこで、CAD/CAEの初心者教育から設計業務における様々な課題を議論する場として、1999年6月に東京理科大学情報メディアセンター内にCAD/CAE研究会を発足させました。その研究会の成果の一つとして、CAE入門教育用テキスト「ANSYS工学解析入門」を本年4月に発刊いたしました。今回のセミナーは、そのような経験に基づいて、企業や学校という枠にとらわれず、CAEを利用するユーザーとしてその推進に関わる諸問題の解決方法を、ともに探ることを目的といたしました。

東京理科大学 機械工学科 中曽根祐司氏

http://www.rs.kagu.sut.ac.jp/~nakasone/indexj.html

【講演者経歴】
東京大学大学院工学系研究科機械工学専門課程博士課程修了(工学博士)。科学技術庁金属材料技術研究所主任研究官を経て、現在、東京理科大学工学部機械工学科教授。工学部、大学院において、プログラミング、機械製図(CAD、CAEを含む)、材料強度を担当。

東京理科大学におけるCAD/CAE教育と「ANSYS工学解析入門」

東京理科大学機械工学科におけるCAD/CAE教育の概要と『ANSYS工学解析入門』の特徴や適用方法をご紹介下さいました。同学科では、学部の基礎課程の2年間で材料・流体・機械・熱などの基礎4力学と設計製図、および初歩的なコンピュータ利用技術からCADを学び、学部3年生からANSYSを使ったCAE教育を受講するというカリキュラムです。修士1年生ではさらにANSYSによる数値実験等、応用的なCAE教育が行われ、そのような教育を通して、コンピュータを使った工学解析ばかりでなく、その結果の妥当性を判断できるチェック能力を育成することを目指されています。実際の授業が行われている教室には、約65台のPCと製図版が揃えられ、整った環境下での製図、3次元CAD、CAEの教育が実施されています。(図1)また、院生によるTA(Teaching Assistant)をおいて、より充実した指導が出来るよう工夫されています。中曽根先生は、企業の設計現場において即戦力となる卒業生を輩出するために、企業現場に密接な教育をしたいと考えていらっしゃるとのこと。そのために今後も企業の方々と情報交換を密に行える機会を積極的に探っていきたいと抱負を語っていました。

図1
図1. CAD/CAEシステム概観(手描き製図用製図板)

(東京理科大学様には、ANSYS Product News 2001春号にてインタビューのご協力をいただいております。詳しくは、同発行号をご覧下さい。)

防衛大学校 機械工学科 千葉矩正氏

http://www.nda.ac.jp/cc/mech/chairs.files/kyoudo.html

【講演者経歴】
東京大学工学部精密機械工学科博士課程修了。現在、防衛大学校機械工学科にて、コンピュータシミュレーションと計測/実験を組み合わせた、電子部品・複合材料などの変形と破壊を研究。

防衛大学校機械工学科における有限要素法解析実習の現状と解析事例

防衛大学校の卒業生の進路は、上級指揮官や技術研究本部などであり、装備品の基本設計や運用、メンテナンスを行うようになります。実際の設計は装備品のメーカが担当することが多いのですが、材料力学を学ぶことにより、強度設計の基本的な考え方を理解して欲しいというのが千葉先生の言葉です。学部生の材料力学の教育においては、基本的理論として、応力とひずみ、弾性はり理論、塑性と破壊などを学び、それとともにFEM実習としてANSYSを利用されています。その際に、英文のマニュアルを参考に例題を中心にまとめた独自のWorkbookが使用されています。また、大学院の研究科では、FEMよりもむしろ弾性論について教育しています。例えばパイプの残留応力です。溶接が難しいパイプの接続に塑性変形が使われますが、このとき生じる残留応力を研究しています。これをFEMでも解析し、実際の実験と比較しています。また、半導体などの薄膜の機械特性を調べるマイクロ/ナノインデンテーションなども研究しています。(図2、図3)これら教育を通して、FEMの中味に対する理解度がどれくらいかということには常に配慮するようにしています。学部生の限られた授業でも、実習したものを理解し、境界条件や対称条件を外すとどうなるかまで考えられるように努めています。卒業後にメーカの技術者と付き合う上で、最低限の材料力学をわかっているように教育したいと語って下さいました。

図2
図2. 微小押込み試験による機械的特性評価
図3
図3. FEMと実測値との比較

デンソー工業技術短期大学校 平松道雄氏

http://www.denso.co.jp/DCOL/

【講演者経歴】
岐阜大学大学院精密工学科卒業。株式会社デンソーラジエータ技術部(現:冷却機器技術部)にて、新型ラジエータの開発に従事。現在、デンソー工業技術短期大学校にて、CAD/CAE関連の教育推進を担当。

デジタルエンジニアリングに関する活用事例の研究と短大教育への展開

デンソー工業技術短期大学校は、株式会社デンソーの企業内短期大学校として、現場に直結した実践的な教育を行い、将来、現場の研究開発、製品設計、生産技術において中核的存在として活躍できる人材の育成を目指しています。その中で平松先生は現場での設計開発を通した経験を、現在の3次元CAD/CAEの教育に活かされています。そもそも、3次元CAD教育を短大内で始めた背景には、現場では既に3次元をもとに各種解析を行うという手法にどんどん変わって来ていることが挙げられます。以前は設計者とは別に専任の技術者がいましたが、これからは設計者が3次元CADを活用することが全社的に必須条件となってきているのです。同時に、制御系も含めトータルなCAE活用が必要となり、それが設計期間短縮に一役買っているということです。短大のメカトロコースでは、このニーズに対応するため、3次元CAD設計での組み付けや干渉、部品の連携の検討を行うことから、解析モデル作成や境界条件の定義方法などまでのノウハウを学んでいきます。(図4)解析に実際に使用しているのは汎用性の高いANSYSで、構造、伝熱、流体など様々な現象の解析ができることが教育に適しています。このように数値解析を教育で採用するにあたっては、解析の中味がどうなっているのか、結果がどうであるか、これを考えていくのが非常に重要です。テキストとしてANSYS工学解析入門を使用し、専門書も含めて実習と一緒に教育を行うことで、解析、実験、理論を総合的に学ばせています。卒業研究では、「車室内空調に関する温度分布の解析と実験評価」として、熱流体解析を実施しました。実際のエアコンではもっと複雑な現象の解析が必要とされますが、ここではなるべく実践に近い例として取り上げ、実車評価試験と解析を比較して結果を検証してみました。これらの教育の成果は、基本知識の重要性を認識でき、CAE解析の仕組みやポイントを把握出来たということです。それは例えば、収束計算における計算パラメータの解への影響や境界条件の違いが結果に及ぼす影響などを考慮できる力を身につけたということであり、CAEを活用していく上で現場で必ず遭遇する問題点を克服するノウハウとなっていると語られました。

図4
図4. メカトロコースCAD/CAE教育体系

高松工業高等専門学校 高畑秀行氏

http://www.nda.ac.jp/cc/mech/chairs.files/kyoudo.html

【講演者経歴】
昭和48年3月東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。四国電力株式会社原子力部にて伊方2号機の設計業務を担当。現在高松高専機械工学科教授。計算力学,計算力学特論などの授業を担当。

高専教育におけるANSYS導入事例(高松高専機械工学科における実践事例)

大学時代から有限要素法に親しまれてきた高畑先生は、なんとか高専においても計算力学・有限要素法を取り入れられないかと考え、93年に計算力学の講座を開講されました。同時にCAEによる実習の必要性があることでANSYSを導入し、卒業研究への適用から始めて実際に授業でも活用されています。授業において特色を持たせているのは、必ずANSYSというツールを使う前に手作業で有限要素法を実施していることです。そこで学生は試行錯誤しながら自らの手で問題を解いた後、同じ課題に対してANSYSを使って計算をするのです。例えば穴空き平板などの事例があります。(図5、図6)まず自分で解析をした解と厳密解とを比較します。それが終了したらANSYSを使います。今まで手作業的に計算したものをANSYSで計算したらどうなるか。コンター図やアニメーションで結果を見たときの学生の感動は大きいようです。(図7)卒業研究にまでなると活用事例として、例えば配管モデルのモード解析、ソーラーカーの支持構造物のモード解析や変形解析、ピストンの応力解析などを実施されています。高専は中学卒業後の5年間という限られた時間の中で教育をしていますが、そこで、FEMの基礎知識を理論とともに学び、CAEツールの利用を組み合わせていくことで、工学解析のおもしろさを視覚から喚起する一助にしたいとお話下さいました。
(高松工業高等専門学校様には、ANSYS Product News 2000秋号にてインタビューのご協力をいただいております。詳しくは、同発行号をご覧下さい。)。

図5
図5. 手作業によるFEM
図6
図6. ANSYSを使用した解析
図7
図7. 授業風景

アイシン精機株式会社 解析技術部 基礎技術開発グループ 岡出元宏氏

http://www.aisin.co.jp/

【講演者経歴】
立命館大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。アイシン精機株式会社解析技術部にて実験及びCAEを活用した基礎技術開発に従事。工学博士。

アイシン精機におけるCAE活用事例など

岡出様は、もともと車両を評価する部署で解析実験を主体に担当されてきた経験から、モノを見ながら解析を実行することの重要性を強調されています。今回は、実際のCAE適用事例を詳しく紹介し、最後に今後の社内CAE研修の進め方について話されました。アイシン精機では、まず解析のパイロットトンネルを作って、これで使えるという確信を持てば技術部に展開して推進されています。まず、CAE適用の一つの事例として、機構解析ツールDADSを使ったミシンの低振動化があります。一般家庭で低価格で購入できる製品でありながら、部品が約300点もある複雑な機構を持ち、設計における試行錯誤は非常に困難です。この機構解析にDADSを導入し、試作レスを目指しています。プロセスにおいては、ミシンの実験による振動解析から始まり、その後機構解析(図8)、パラメータスタディ、実機試験を行うことで、総合的に設計評価を行っているわけです。(図9)は、最適化前の実験値、最適化後の実験値と計算結果を比較していますが、シミュレーションが実振動によく合っていることがわかり、試作レスに繋がっています。またもう一つのANSYSによるポペットバルブの流れ解析の事例(図10)は、バルブのプランジャ形状の最適化を目的としています。ここでもパラメータスタディを行う中で、やはり実験と計算をグラフで比較しています。これらCAEによる解析を導入することで、製品の開発期間短縮化と試作レスの実現に向けた技術の構築・展開を行っているのです。そして、これらの経験に基づいた社内CAE研修の進め方についてお話下さいました。岡出様は次のようなことを伝えていきたいとおっしゃっています。CAEは、設計や現象解析にとって、非常に有効な手段です。ただ、それを使っていくには、(1)CAE結果が妥当なものか見極められる技術センスを養うこと。(2)物や現象を随時観察し、CAEする時点で頭の中で既にCAE結果が定性的に予測されている状態にあること。(3)CAE結果はあくまでも仮想空間の世界であり、実験と必ず対比すること。(3)現実どんなに優れたプログラムを使っても、入力データの精度が悪ければ、CAE結果も同等であること。これらを忘れずにCAEを活用していただきたいという言葉をいただきました。

図8
図8. 機構解析により実機振動を再現
図9
図9. 実機検証
図10
図10. CFD

三菱電機株式会社 技術研修所 機械工学教室 遠田治正氏

【講演者経歴】
東京大学工学部精密機械工学科卒業。三菱電機株式会社旧中央研究所にて大型回転機の構造研究、通信機製作所にて大型天体望遠鏡「すばる」の開発に携わり、現在技術研修所にて、3次元CAD及びCAEを中心とした機械技術者教育を担当。

設計者が使うためのCAEのあり方 ―ツールの選定と利用教育―

社内の技術者教育における経験から、CAEを使う上で設計者が突き当たる壁を分析しながら具体的な解決方法をお話しいただきました。遠田様は、CAEを適用する際に3種類の壁(図11)があると定義されています。まず第一種の壁は本質的なもので、応力の単位など基本的なところです。これは物理現象の解釈上知っておくべきもので、整った教育により解決します。第二種の壁はツールを使う上での操作方法です。利用する以上知っておくべきものですが、特に若手技術者であれば比較的難なく習得してしまいます。第三種の壁は手法のアルゴリズムによって生じるものです。これは特定の手法を利用する上で問題点となりますが、実際に物理的にあまり意味はなく設計能力の向上には繋がらないと考えられています。そしてそれぞれの壁によって、誤った結果や無意味な結果、誤差の大きい結果などを導き出してしまうと指摘されました。これらの壁を乗り越えることによりCAE活用が推進されるわけですが、特に設計者がCAEを使うことに焦点を当てると、第三種の壁を克服する負担をなるべく軽減することが必要だと述べられています。そのために三菱電機では、形状作成やメッシュ生成など、いわゆる手法における負担を軽減できるよう3次元CADとそのCADデータを直接使って解析できるDesignSpaceを利用する環境に整えられてきました。現在は設計プロセスの中でCAEが上手く運用されています。(図12)また、社内のCAE教育は、設計者向けと専任者向けの2つに分けられており、設計者向けではDesignSpaceを、専任者向けではANSYSまたはI-DEASをツールとして教えられています。もちろん、このようなCAEそのものの教育は講座の最後に行い、大半は理論的な基礎知識の習得に時間を取られています。最後に、必ず覚えておいて欲しいこととして、応力=荷重÷断面積、これで解の予測を常に心がけるようにとアドバイスして下さいました。(図13)。

図11
図11. CAE適用に際しての3種類の壁
図12
図12. 開発におけるCAE適用時期
図13
図13

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