パネルディスカッションレポート

<司 会>
東京理科大学機械工学科 吉本成香氏
<パネラー>
東京理科大学機械工学科 中曽根祐司氏
デンソー工業技術短期大学校 平松道雄氏
アイシン精機株式会社 解析技術部 基礎技術開発グループ 岡出元宏氏
三菱電機株式会社 技術研修所 機械工学教室 遠田治正氏
サイバネットシステム株式会社 メカニカルCAE第一技術部 徳永祐一

(以後、敬称は略させていただきます)

ここでは、名古屋会場で行われましたパネルディスカッションを取り上げてレポートいたします。

吉本成香氏
吉本成香氏
遠田治正氏
遠田治正氏
岡出元宏氏
岡出元宏氏
平松道雄氏
平松道雄氏
中曽根祐司氏
中曽根祐司氏
徳永祐一
徳永祐一
吉本 最近ではCAEニーズも多様化し、設計業務の中におけるCAEへの新たな期待や取組みがあるかと思われますが、そのような企業現場における現状をお聞きしたいと思います。
遠田 今のCAEツールは良くできていて、解析に必要な機能という点ではかなり揃っていると思います。もちろんあれば便利という機能もありますが、現状では特別これ以上必要な機能はないですね。強いて言うならば、当社では携帯電話の落下衝撃やエアコンの流れなども解析していますので、この点ではやや機能不足だとか、もう少し高速化して欲しいという希望もあります。ただ、まずは設計者が使いやすいCAEが必要ですので、三菱電機内では今のところ3種類のCAEツールを選び出して使い分けをし、設計者自らが使っているという点で上手くいっています。
岡出 現在課題は2つありまして、1つはCADのデータをいかにCAEに持ってくるかです。これに一番苦労しており、特にメッシュ生成についてはぜひ改善をお願いしたいと思っています。もう1つはいかに設計者がCAEツールを使うかということです。多くは強度解析となるのですが、設計者が簡単に使えるように、アイシン精機ではカスタマイズを行いバッチファイルを作って設計者に使ってもらっています。ただ、そうすると設計者が実際にものを見て、境界条件を把握できているのかという点が問題となってくるのです。
吉本 これまでのように解析専任者だけがCAEを使うのではなく、設計者がCAEを使う環境になって来ているところで問題が出ているのですね。
岡出 設計者の中でも強度解析や伝熱解析などは何とか取組めていますが、例えば音響などになると難しいですし、計算できても結果が実験結果とかけ離れてしまうということになりかねません。そのあたりを整えて設計者が使えるようにしてあげるのが私たちの役目なのですが、なかなか思うようにはいかないのです。また、私は設計=解析+CAE+実験と思っていますが、それを設計者に認識してもらうには、それぞれの担当者が別のグループに分れているのではなく、一体となって設計の仕事を始めることが必要だと思っています。CAEが何か特別というイメージがあるようですが、それは以前の解析専任者が使っていたCAEのイメージであって、今は構えて使うものではありません。
吉本 おそらくこの2社はCAEをかなり使われている方だと思います。ただ、一般的にCAEはまだ敷居が高いですし、教育や費用など問題があるところが多いでしょう。そういう会社がどうやって、CAEを使っていけるようになるかヒントをいただけますか。
徳永 教育方法ということで言いますと、ベンダーとしては、オペレーションの教育が主になってしまいます。ですから、例えば学校では、これからエンジニアになろうとしている学生に対して、CAEが現場でどういう使われ方をし、何に注意して使うかという知識も含めて教育をしていただき、企業においては自社の製品に適用するにはCAEをどう活用するかを社内教育として進めていくことができれば理想的ではないかという気がするのです。ただ、設計者がCAEを使うということになると、教育よりもソフトウェアの性質に依存するところもありますね。
遠田 設計者にとってはCAEは道具です。そして道具は便利でないと使えない。ですから、設計者が日常使うべきツールは単純であるべしと思っています。そのために従来ですとカスタマイズという取組みがあったわけですが、実際にカスタマイズするとその後しばらくは使えますが、結局バージョンアップに耐えられなくなり、サポートも不可能になるという問題があります。DesignSpaceはツールとして単純で便利という姿になってくれましたので、設計者もごく当たり前のように使うようになりました。そういうCAEを選べば使っていけるようになるのではないでしょうか。それから、設計者がCAEを使う利点についてですが、やはり専任者をかかえるとあらゆる面でコスト増になりますから、設計のプロセスで何らかの形で設計者がCAEを使えることが望ましいと思います。また、CAEに専門的なスキルが必要な場合は、そういうグループを複数作るよりは一ヶ所に専門部隊を作る方が運用効率も上がると思います。実際そういう運用体制にすることが企業の課題でもあるでしょう。また誰かがリーダシップをとって推進することも大事ですね。
平松 デンソーの職場においても、以前はCAEを使うのは解析専任者でした。でもこれからは専任者だけではなく設計者もCAEを使っていかなければいけないという意識が広まっています。教育においても、基本に忠実なCAEで基本に忠実な物理現象が計算できる、そういうものを教育に取り入れていけば、仮にCAEのソフトウェアが変わったり環境が変わってもついていけるのではないかと思っています。使いやすくて、結果が出て、実験との比較もできるようなソフトがあれば理想的ですね。CAEはもう特別なものではなく、業務の中の一部として使っていければいいと思います。
中曽根 CAEを使えるような手だてを考え、そしてハードルを越えることも試行錯誤しなければいけないですね。企業においては費用対効果を常に意識しなければならないでしょうから、まずは導入するにあたり上の人間を納得させなければいけないでしょう。ですから、CAEを利用して得られる確実な結果を見せることも必要だと思います。CAEを使ったから、上手く設計変更ができ効果が上がったというように、会社に貢献できるものだということを納得してもらう努力も大事なのでしょう。
吉本 CAEを検討している方からは、解析結果がどこまで信頼できるもので、どのように評価すれば良いのか判らないという疑問もよく聞かれます。最終的には実験評価が必要になると思いますが、やはり解析を行う前に、どういう結果になるかをある程度自分で考えてやっていかないと、実際出てくる結果が全く違うものになりますよね。そういう解析と実験との総合的な評価能力を養うにはどうすればいいのでしょうか。
徳永 技術サポートを行っている中で、経験的に例えばメッシュをこういうふうに切れば、精度が出るというような回答をしていますが、企業の中でも社内ノウハウとしてメッシュの切り方やそれがどの程度の信頼性を持つ解となるのかという情報共有などは行われているのでしょうか。
遠田 以前メッシュ切りや計算条件などをルール化するような取組みをしたことがあるのですが、設計者は日常の設計業務に振り回されてしまって、結局定着しませんでした。ただしCAEの精度を考えるときに、まず実物はどうなっているのかを先に考えて欲しいと思います。設計者にはよく現場に行って自分の設計したものを見てくるようにと言うのですが、例えば現場に行かなくても、製品として動いているものが壊れないならば応力がいくら以下かというオーダーエスティメイトがわかっているはずです。解析したときに、そういう値を平気で超えてくるようなものは、そもそも間違えている、そういうフィーリングを養うようにということはいつも言っています。
岡出 CAEの使い方云々ではなく、どこにどういうリブをたてればいいか、Rをどれくらいにするかというノウハウを身につけることも大事ですね。ですからCAEの世界というより、むしろ設計上の技術伝承が重要ということになりますね。もちろんメッシュの切り方なども一つのテクニックですが、本来伝承すべき技術は設計の仕方だと思うのです。
遠田 やはりメッシュの切り方などという議論はパスしたいですね。そういうものは技能であって、技術ではない、そういうものに設計者が振り回される姿は望ましくないと思います。
吉本 では、そこをカバーするのはソフトウェアなのでしょうか。以前は解析技術者がカスタマイズして設計者に使ってもらっていたようですが。
岡出 ですから、自動メッシュの機能があって簡単に使えるDesignSpaceは、評判になって受け入れらるようになりましたよね。結局絶対値がどうという次元の問題ではなく、なるべく精度良く速く結果を知りたい、こういう条件の場合は定性的にどうなるのか、それが解ればありがたいわけです。
徳永 DesignSpaceですと自動的に解析ができますから、答を出すまでの教育はある程度省けますね。でも答えが出た後結果をどう見るかという教育は必要なのか、また実際にやっているのかということをお聞きしたいのですが。
中曽根 確かに道具を道具として使うには、簡単な方がいいと思います。ただそれらのブラックボックス化が進み過ぎるのは心配です。例えばモデル化をとってもそうなのですが、解析では単純化しますよね。全体モデルで考えるか、部品単位で考えるか、そういう判断も大事だと思います。ですからそういう点で申しますと、道具として使うものに対しての教育も必要だと思います。欲を言えば境界条件の与え方、メッシュが妥当な範囲で切れているかも解っていて欲しいです。そういう部分の教育が必要と考えると、それを行うのは企業、学校、またはベンダーなのか、学校はどういう役割を果たせば良いのか、そのあたりの仕組みを考えたいと思います。
遠田 確かにモデル化については、必ず教えなければいけませんね。例えば大型モーターを考えたときに、そのローターの回転時の強度を計算するだけであれば、ローターだけでいいのです。しかし軸系の振動になると、軸受けからモーター本体を含み、要はモーター全体を考えなければいけません。場合によっては、モーターの取り付け部から下までを、さらに隣の建物までをも考えることも必要になってくる、そういうことを教育の中で説明しています。それから、CAEが簡単で使いやすくても計算においてメモリオーバーはしますから、できるだけモデルは最少限度の必要なところだけを選ぶように指導しています。それ以外の個々のモデルについて問題が出る場合は個別に介入して教えています。
会場からの
質問
私どものところでも、解析を設計者に使ってもらおうとしています。でもなかなか成功できていません。CAEを設計の一つのツールとして使っていけばいいと思うのですが、どうしても設計者は結果を求めてしまうという問題があります。本当は、CAEの結果を方向性付けに活用してもらいたいのですが、それらを解ってもらうためにどういう教育をして、どういうふうに推進していけばいいか教えてもらえますか。
遠田 まずCAEの結果を求める前に、荷重を断面積で割って、自分でオーダーエスティメイトをして、解の存在範囲をあらかじめ押さえておくように指導しています。実際に応力範囲がどうなるのか、そういう感性を養い育ててあげることも大事です。そして、設計者がCAEを上手く活用できていなければ、何が問題で何が必要なのかの情報を収集するために、こちらから出かけて行って聞き出すくらいの気持ちでいます。それから次にCAEの推進の実務は若い人に任せるとしても、任せた側としては、いつまでにどんなアウトプットが出せるかを検討し、上層部に報告していくストーリーを作るのです。CAEは効果を数値で表せないと評価されにくいものです。ですから、会社に対して、経営にいくら貢献するのか、時間的にどれくらい効果があがるのか、そういうものを数値として表して、それを目標に上層部に宣伝していくことが大事です。できると思った半分くらいを目標にしてもいいのです。これは3次元CADの推進においても同じなのです。
吉本 貴重なご意見ありがとうございました。ここで全ての答えを出すのは難しいかもしれませんが、今後のCAEの教育や推進にあたって参考になる情報交換ができたのではないかと思います。パネラーの皆さんありがとうございました。

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