学校教育におけるCAD/CAEの推進を考えるセミナー2002

2002年8月〜9月にかけて、仙台、東京、名古屋、大阪の4会場で実施された本セミナーですが、ここでは大阪会場のパネルディスカッションを取り上げてレポート致します。
参加者の方からも活発な意見が飛び交い、時間を大幅に延長するほどの白熱した論議の場となりました。

<司 会>
東京理科大学 吉本 成香 先生
<パネラー>
立命館大学 杉山 正治 先生
東京理科大学 中曽根 祐司 先生
高松工業高等専門学校 高畑 秀行 先生
株式会社電通国際情報サービス 平塚 哲也 様
サイバネットシステム株式会社 徳永 祐一

(以後、敬称は略させていただきます)

吉本 それではパネルディスカッションに入る前に、本日のご講演内容について質問があれば先に受け付けたいと思います。
会場より CAEを導入していろいろ試して見るのはいいのですが、投資効果はあるのでしょうか?
高畑 例えば、振動モードで1次、2次モード、とありますが、そういうものを振動工学の授業で見せるのが難しい。
そういう際にANSYSでの解析結果を持ってくると視覚的に分かりやすいので役立ちます。その他にも例えば熱伝導を例にすると、設計書にフィンが付いていなくて、フィンをつけるように指導します。これをANSYSを使って解析を行うと熱の流れがフィンの方に向かっていくということが分かりやすくなります。これはきっと熱伝導なり熱力学のところで興味を引くはずです。大きなインパクトがあると思います。
会場より そういったことをやる場合に、ANSYS/EDのような節点数に制限があるものが教材としてどれくらい使えるのでしょうか?
高畑 私が発表した内容なのですが、ほとんどが2次元なのでANSYS/EDで対応出来るのです。よく使われている十字断面を持った梁のモード解析などは、問題ないですね。
会場より 学生さんの評価はどのように行われているのでしょうか?
中曽根 私のところは学部のCADを中心にやっていますが、現在の方法としては再提出とか、期限が遅れたとか、そういう部分をまず中心に、点数化して減点法でやっています。
会場より ありがとうございました。
吉本 それでは、まず始めにCAD、CAEの導入後の問題について話をしたいと思います。導入はしたが、問題になっているということがあったらお話ください。

吉本 成香 先生
高畑 私のところはANSYS/EDではなく、ANSYS/UniversityのLowオプションを使っていますが、ほかの先生方があまり使われない。そういう意味で、稼働率がどうなのかと言われることがあります。あと、もう一つはバージョンアップにどう対応していくかというところですね。
中曽根 今、高畑先生からもお話があったように、バージョンアップへの対応は問題です。教科書や講義資料を作ると、バージョンアップに頻繁に対応することは難しくなってきます。教えるほうの訓練も頻繁なバージョンアップには対応できません。また、金銭的にもすべてのバージョンアップに対応することは難しいでしょう。
しかし、あまりバーョンアップをしないと、ベンダーさん側もが対応できなくなってしまいます。私どもでは幸いサイバネットさんが積極的に協力してくれるので、バージョンアップをなるべくするようにしています。
杉山 今年になってSolidEdgeを学校の中に入れていただいたのですが、この時にかなり準備が慌ただしくなってしまいました。そういった最初の導入部分のタイミングが少し遅れると大変です。その辺を改善できたらいいなと考えています。
吉本 ベンダーサイドから何かありますか。
徳永 メンテナンスにはバージョンアップ対応が含まれるのですが、バージョンアップしていただかないと、トラブルが起きたときに我々が対応できない場合がある、という問題があります。その意味でメンテナンスは必要なものになるのではないかと考えているのですが、けれども、今まで、最新バージョンでなくても行えるという授業内容が多いようですね。今のFEMのバージョンアップの機能は、スペシャリスト向けのものがほとんどで、それがないと授業が成り立たないようには感じません。私個人的には、そんなに無理してバージョンアップしなくても良いかとは思います。トラブルが起きたときに、対処ができるかどうかで、判断していただくのが良いのではないでしょうか。
平塚 私どもの場合ですと、例えばシステムを導入された場合、極力、ご導入当初の状態で、「使い切る」ということをお勧めしています。無理矢理やっていきますと、3年ぐらい経ちますと、何かしらの障壁に引っかかってバージョンアップができなくなったりします。先ほども先生が触れましたとおり、ベンダー側に古いバージョンを知っている人間がいなくなってしまうのが一番困ることですね。5年ぐらいは何とか今のところ、古いテキストをコピーしたり、古いCD−ROMを持ってきたりしながら繋いでいます。
吉本 今日ご参加の中でCADやCAE導入後に問題を抱えているという方はいらっしゃいますか?
会場より 複数のクラスで、提出間際になって時間内に一生懸命使う生徒も出てくると思うのですが、ライセンスがかち合って困るということはないのでしょうか。
中曽根 理科大の場合は、本当は1クラス約110人いるのですが、CADやCAEのソフトは各60ライセンスしかないので、2班に分けて、一人1ライセンス使えるようにしています。すらすらできる人がいる一方でスローラーナーもいます。
スローラーナーに対してどうするかというのが、なかなか難しいところです。また、もう少しやりたいと言う人も出てきますが、ソフトや設備の管理・運営上の問題がありますので、使用できる時間を制限しています。
会場より 物理的な数の方で制限がかかってしまっているので、ネットワークライセンス等の問題ではないのですね。
ネットワークだと原理的には、学外から自分のパソコンで使うことは可能でしょうか。
森岡 フローティング管理しているライセンス情報を外に渡してあげるための別の仕組みを設けなければなりません。
会場より 技術的には、ほかの投資をすれば可能なんですね。
吉本 CAD/CAEとも導入した後にも様々な問題も発生しますが、カリキュラムを工夫したりベンダーの協力も仰ぎながら使っているのですね。さて、導入した後にはCAD/CAEとも、習熟にかなりの時間をかけなくてはいけないのですが、先生方はどうされているのでしょう??
杉山 習熟といいますと、何でも早くできる人と、遅くなる人の2通りあるのですけれども、この基準をどこに合わせるのかというのが難しい問題ですよね。結局、標準的な速さにしてやらないとだめなのではないのかと思います。私が今やっているのは特に操作の基本を教えるところなどは、逐一こちらがやっているとおりに、学生が手を動かして真似をするような形を取ってやっています。それによって全員が同じところを歩むという形を取れるのではないかと思います。
また自動支援システムのようなものが入っていますので、学生がきちんとついてきているかという情報が一目でわかりますから、遅い人のところを重点的にティーチング・アシスタント(TA)を配置しています。
中曽根 やはり教科書を整備することかなと思っています。あとはTAの教育ですね。近頃の学生さんにとっては、先輩後輩の仲というのは教員との結びつきよりも強いらしいです。教員に無礼なことを言っても何とも思わないんですけど、先輩に対しては無礼なことを言ってはいけないというような繋がりがあって、TAはかなり効力を発揮します。
杉山 教科書でも、やたら文章が長いと読んでくれないとか、英語版だと読んでくれないとかいろいろあるので、結局はマンツーマンになるような形で、TAはかなり重要なものになってくると思います。
高畑 一番心配するのは、教材通りにやれば答えは出るんです。クリックをして操作だけやってしまって、「はい、出ました」というのではだめですよね。ですから、教材にはANSYSの操作の中で、今何をやっているのか、例えばメッシュ分割をするための準備段階とか、境界条件を入れるための操作をやっているのかというのをわかるように書いています。そこを十分注意してやるように言ってあるのですが、学生はなかなかやってくれませんので、最終的にはテキストでやった後に、練習問題をアドリブで出します。フィンをつけるにはどうしたらいいかなどですね。フィンが付いたら境界条件も違ってきますので。ある程度、アドリブを出すことによって、習熟度も増すのかなと思います。
吉本 今日ご参加いただいている中で、CADもANSYSもかなりお使いになっていらっしゃる方もいらっしゃるようですが。
会場より 一番の問題は、使いこなすレベルと、理解するためのレベルと2つあると思うのです。今日もDesignSpaceのようなソフトの紹介がありましたよね、ソフトが非常に使いやすくなってきたのはありがたいことです。ただ、卒業研究で何かやらせても、境界条件や荷重条件など、どういうことをやっているのかわからなくなってしまっている。どの辺にポイントを置いて習熟したと評価するのかということが問題ですよね。ですから、習熟というのは、どのレベルで習熟というのか常に考えています。
吉本 ありがとうございました。おそらくCAEの教育の中では、やり方云々よりも、こちらの方が大切になるだろうと思うのですが、先生方いかがでしょう?
中曽根 先程の参加者の方のご意見は、非常に納得がいきます。習熟といっても、どういうところを目指すかということですね。まず、私どもの教科書はマニュアル本にはしたくないと思って作成しました。第T編で有限要素法の離散化法などについて書かせていただき、第U編では、計算結果を実験と対応させる。したがって、実験も新たに行ないました。結果の信憑性を実験の結果と照らし合わせるという営みを自然にやってもらえることが大切だと思い、そのような構成にしたのです。
もう一つは、DesignSpaceのような非常に簡単なソフトを使ってもいいのかということです。今まで私達が活動をしてきて感じたことは、実社会では設計者はCAEをあまり使えていないというのが現状らしいです。であれば、割り切ってしまって、市販の簡単なソフトをまず操作・体験させて、得られた結果を理論解と合せるとか機械工学実験の結果と合せるとかして結果の信憑性を自分自身で判断できるような仕組みにしておく。CADであれば、CADで描いたものを実際に作らせて、違う・違わないということをやらせたいと思っています。そうじゃないと始まらないですからね。CAEをいくら原理的に知っていても操作が出来ないとやはり実務に使えないということになってしまいます。「効果は何?」とか「使えない」とか二の足を踏んで、結局使えなくなるという方が多いようです。従って、まず、DesignSpaceのような簡単なソフトを足掛かりにしてハイエンドのものを使えるようにするというのが現実的対処法の一つだと思います。

中曽根 祐司 先生
高畑 今日の発表でも、有限要素法の結果を別の理論解に置き換えて実験値と比較をするということをやらせています。もともと有限要素法はあくまでも近似解だよという言い方をしています。ANSYSや有限要素法で出てきた結果を学生は正しいと思い込んでしまうところがありますので、別のやり方も当然教えていかなければならないと思います。従来通りの工学実験みたいなものもやはり大事にしておかないと。ですから梁の振動なんかも実際にやらせています。共振点にくると振れだしますから、学生はびっくりするようです。有限要素法で出てきた結果が正しいかどうかというのは僕らでも難しいのですから、そのようなものを見せて、「あくまで有限要素法は近似解だよ」という認識を持たせることが必要なのではないでしょうか。

高畑 秀行 先生
吉本 そのようなCADやCAEを売っているベンダー側はどうですか。
徳永 CAEで出てきた答えは自分の考えが正しかったことを証明する道具であると言われています。私もそのとおりだなとは思うのですが、ある程度、「こういう分布になるのだ」、「ただ数字だけがわからない」というようなレベルでCAEを使わないと、結局結果評価というのは出来ないのではないのかと思います。だから、CAEを使う前に、ある程度、予測できる人間でないとCAEは危険な道具にもなりますね。
平塚 ちょっと古い話になりますが、F1のチームがサーキットで車を走らせる際に、サーキットにマシンと機構解析プログラムを持ち込んで、1周走ってきた状態をドライバーに聞いて、その状態をその場で解析してそこで設定を変えて走らせるという話がありました。これは特異な例なのですが、実験とCAEは表裏一体でなければならないということをつくづく思う点でもあります。学生さんも実物に興味を示される方も多いと思うので、そういうものも積極的に教育現場の中に取り入れられますと、興味が湧いていいのではないでしょうか。

徳永 祐一

平塚 哲也 様
高畑 DesingSpaceの話が出たので。一昨年卒業研究でANSYSで3次元の複雑な形の解析をしなければいけないことがありました。学生が3次元の複雑なモデルをANSYSで作り出すと言うのは難しいところがあるんですね。そういったときに、DesignSpaceで3次元CADで作成したモデルを取り込んで解析するというのはいいなと思ったので、うちも導入しようかと思っています。やはりちょっとした解析をやってみたり、ほかの結果と比較してみたり、設計者向けである程度手軽に解析ができるものも必要なのかなと思っています。
中曽根 モデルを自分で考えられるような人間というのは難しいのですが、どういうふうにして大学で物理モデルを作れるような人間を育てるか、先程徳永さんの話にもあったように、計算前に結果をある程度予測できるような人間を育てるか、というのが今後の課題かなと思います。やるようにはしていますが、なかなか難しいですね。
吉本 それでは最後に社会人に対する教育と学校での教育の違いについてはどうでしょうか?
高畑 ある企業の方から相談を受けて、境界条件や材料定数などの数値をどういれたらいいのか、という話がありました。
そこがまさに言われている、本当の実験の結果とANSYSのような解析結果との間の合う/合わない、というところの難しさですね。学校であればきちっとした結果が出たらそれでOKとなるのでしょうが、企業はそういうわけにいかない。企業の方では現実に製作している物が壊れないようにするのにCADやCAEをどう使ったらいいのか、ということに悩んでいる気がします。
吉本 この間企業向けのセミナーをやったときに参加者の方に「なぜセミナーに来られたんですか」と聞くと自分がやった答が合ってるかどうか確認に来たと。セミナーでやると最終的に出てくる答がこうなんだっていうのが分かる、というわけですね。CAEは出来るんだけれど、それが合ってるかどうかの自信が持てない方に来ていただいて、自信を持ってもらう、そういうこともあるのかなあと思います。
会場より 私は今、大学に勤務しているのですが、以前に企業に勤めている際に同僚に「そういう講習会に行って何聞いてきたの」、と尋ねたら「あれはただあの問題の答ですよ」、と言うだけなんですよ。だから幾ら講習会に行ったとしてもだめだと思います。実地の問題を1年位かけて解かないと。そこで始めて納得するのではないでしょうか。だから社会人教育をやるなら、大学もそこまでやらないと。学校のCAE教育と企業のCAE教育というのは全然別問題で考えないといけないと思います。
吉本 我々教育機関から見ると、社会人教育はなかなか難しいところがありますね。
中曽根 モーチベーションは社会人の方はかなり高いですね。吉本先生のところでも通信教育で社会人の方がいらしゃっていますが、今の一般の学生さんの方にも、フィードバックが掛かるのではないかと思います。これだけ企業ではモーチベーションの高い人がいるのだから僕たち学生も、というところも期待できるのではないでしょうか。
吉本 長時間にわたって皆さん活発なご意見ありがとうございました。我々も勉強になりました。
どうもありがとうございました。

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