夏休みセミナー2002

数年前より3次元CADを使った設計が急速に広まり、またDesignSpaceのような設計者向けのCAEもその効果が認められて利用が進んできました。今では、3次元CADやCAEの導入、またそのソフトウェアの善し悪しを議論するよりもむしろ、それら設計の道具を上手く使って、自分なりの設計ノウハウを活かしたモノづくりができるエンジニアの育成や技術の伝承などについてあらためて見直そうという声をあちこちで耳にするようになってきています。
今回は、そのような設計そのものの楽しさを実感し設計センスを養えるような教育を目指して、積極的に活動されているキャディック株式会社様主催のセミナーを、参加者からの感想を交えてご紹介いたします。キャディック株式会社様は、主に3次元CAD導入教育や設計受託などを行われており、これまで多くの企業において年間1000人を超える設計者に対し教育を実施されてきました。また昨年より3次元CAD設計にCAEもプラスすることで、設計検討も同時に行えるようにとDesignSpaceも教育に取り入れられています 。

この夏休みセミナーはいわゆるボランティア的な教育で、参加費用は無料、参加者全員の「がんばって、やってやろう!」の意志で成り立っています。特に学生の方にできるだけ多く参加してもらい、「機械の設計ってこんなに楽しいものだったんだ」と感じてもらうのが目的だということです。もちろん企業や大学の先生方も多く参加し、設計の面白さをあらためて実感して帰られていました。
内容は3次元CADを使った設計教育とも言えるのですが、実際は設計案の試行錯誤に焦点を絞り、3次元CADはそれを最終的に表現するツールとして使われています。

セミナーの日程

  8/10 8/11 8/12
8:00〜   オリエンテーション オリエンテーション&レビュー
9:00〜 オリエンテーション C
A
D

ファイル作成
・排他処理準備
・リンク
・組立図+部品票
発表資料作成
10:00〜 仕様作成
・機能立案
・構想スケッチ
・タイミングチャート
・樹形図
・担当分け
1回目作成 発表会
11:00〜 仕様との比較→手直し
・レイアウト確認
・組立図+寸法
・タイミングチャートによる動作確認
懇親会
13:00〜 2回目作成  
15:00〜 仕様との比較→手直し
・質量特性検証
 
16:00〜 3回目作成  
19:00〜以降 仕様との比較→手直し  

参加者の感想
京都大学 工学研究科の先生方からのご感想をまじえて

本セミナーには、今後の授業の参考にと大学の先生方も参加されました。ここではその中から、京都大学工学研究科 横小路 泰義 様、松原 厚 様の両先生方にお聞きした感想をご紹介します。(文章中の敬称は略させていただきます。)

大学での研究分野や教育内容について教えて下さい。

横小路の研究分野はメカトロニクスで、主にロボットやバーチャルリアリティに関する研究、松原の研究分野は機械加工で、CAMや工作機械の制御を研究しています。2人とも学部教育では、3回生向けに機械設計演習、機械製作実習を担当しています。

このセミナーに参加された目的は?

現在機械設計演習では、企業から設計経験者を非常勤講師としてお呼びし、各講師の専門分野に合わせた課題を基に2次元CADをベースにして行っています。同時に、大学における今後の設計演習のあり方を現在模索中であり、3次元CADの存在は無視できなくなってきています。そこで、今後の大学における設計演習、また製作実習との連携を考える上で、本セミナーのやり方を参考にさせていただこうという主旨でオブザーバの立場で参加しました。また、テーマも2足歩行ロボットということで、面白そうという個人的な興味もありました。

実際に参加し、設計に3次元CADやCAEを利用することにどのような利点や問題点を感じられましたか?

まず利点ですが、セミナーの主眼が「3次元CADの使い方」ではなく「設計の進めかた」にあり、3次元CADをツールとして割り切っている点に感銘を受けました。3日間のセミナーの内、半分以上が模造紙の上でのコンセプト決定、仕様決定、機構設計、樹形図の作成に費やされており、さらに3次元CADをグループウェアとして効果的に使用している点に感銘を受けました。このとき模造紙上に書いた樹形図がベースとなっており、前半の模造紙上の作業と後半の3次元CADでの作業が見事なまでに連動していたわけです。問題点としてはパソコンのセッティングのために貴重な時間が取られていたことです。常設のPC環境があるところでのセミナーが理想だと思いますが、今回はみなさんのボランティアで成り立っている特別のケースだったのでこれは仕方がありません。それから3次元CADの操作に戸惑う人もいて、ユーザーインタフェースがまだまだ初心者には敷居が高いと感じました。


セミナールームの外でも模造紙を使った検討が進む

3次元CADを使った設計について、今後どのような教育を行われたいですか?

これまでの大学の設計演習では、課題を決めてパラメータを学生毎に変化させる手法が主流であり、キャディック(株)さんの言うところのエンジニアでなくチェンジニアの養成になっていました。それは素人に効率よく設計に慣れさせる一つの方法であるとも言えます。しかし、このセミナーの趣旨と同様に、3次元CADやCAEはあくまで設計のツールに過ぎない点を忘れずに、学生に設計する楽しさを実感できるような教育方法も考えていきたいと思っています。そのためには設計演習と製作実習を連携させて、設計したものが最終的に実物として得られるような形態としていきたいです。


最終的にDesignSpaceを使ってチェックも実施

今回はCAE(DesignSpace)を利用する時間は限られていたと思いますが、今後利用されたいですか?また設計やその教育に効果がありそうだと思われますか?

DesignSpaceはメッシュ切りなどのプロセスを表に出さずに、手軽に解析ができるようにインタフェースが工夫されているので、CAEの雰囲気を学生に伝えるには格好のツールではないかと思います。課題の設定を上手くすれば、限られた時間内でも3次元CADとCAEとの連携プレーの醍醐味を学生にも伝えられるのではないかと思います。ただし、CAEツールは万能ではありませんから、結果を鵜呑みにするのではなく、常に結果を正しく評価できる知識を持ち合わせておくことが重要であることも学生には念を押して教えておかなければならないでしょう。

設計で利用するCAEはどうあるべきか、またその使い方はどうすべきかというご意見があればお聞かせ下さい。

専門でないのではっきりと指摘できませんが、設計で使用するCAEならば、解析と設計とを何度となく繰り返すことになるので、CADとのますますのシームレスな結合が望まれるのではないかと思います。またCAEの計算スピードは電卓並に速くなるのが理想ですが、モデル化にも工夫が必要でしょう。キャディック(株)さんのセミナーではいきなり複雑な形状を作るのではなく、1フィーチャ目でレイアウト、2フィーチャ目で質量や重心位置、固有振動数等を計算するという手順を教えていましたが、これは設計者のためのCAEということを強く意識しています。反対に設計の終わりに検証として使用する場合は、正確なモデル化が必要です。つまり設計のどこで誰がどう使うのが効率的かを十分理解しないといけません。今後はこのようなCAEマネージャのような人材も必要であると感じています。

その他全般的な感想や、学校・企業に関わらず他の設計に携わる皆さんに対してのメッセージはありますか?

今回のセミナーで、設計で大事なのはCADの使い方などではなく、設計の考え方そのものであること、またグループで設計を進めていくためのチームのまとめ方、リーダーの重要性などが実感できました。結局大事なのは、設計に携わる「人」が、自ら設計したものが実際に製品となり具現化してお客様の役に立つことで、設計を好きになることが大事であり、そういった「人」を育てることが大事であると感じました。最近は企業でも競争が激化し、コスト削減への要求も厳しくなかなか若い設計者に冒険をさせる余裕がなくなってきたと聞きます。このため、先人の設計したものを焼きなおすことばかりをさせられているようです。これでは設計が好きになるはずがありません。現在のような社会情勢では、ますます大学においての設計教育の内容が問われてくると思っています。大学でこそ失敗を恐れない斬新でアイデア豊富な設計を奨励し、設計の楽しさを教えるべきではないかと感じます。最後にこのような貴重なセミナーを企画していただいたキャディック(株)の皆様、施設・設備面でバックアップして下さった新明和工業(株)の皆様、ボランティアで手伝っていただいた方々、DesignSpaceを提供していただいたサイバネットシステム(株)様に深く感謝します。みなさんの地道な努力と参加者のがんばりに元気づけられた思いです。ありがとうございました。


セミナー最終日には、3日間の成果をグループで発表。
参加者も熱心に聞き入る

主催者から一言

今回、ボランティアとしてセミナーを企画・主催されたキャディック株式会社 筒井 真作 様に、感想をお聞きしました。

「3DCADを使って設計の手順を教える」というボランティア教育を始めて2年になります。このきっかけは某大学の先生からの「学校教育に3DCADを導入したが、モデル作成の手順しか教えられない。3DCADを使って設計する手順を教えてくれないか。」という依頼からです。弊社は企業に対しての3DCAD導入支援を生業にしていますが、この数年「3DCAD導入が円滑に進まないのは、CADの操作が問題なのではなくエンジニアが有する設計能力の欠如が問題であり、これでは日本のエンジニアの将来が懸念される。企業での教育だけでなく、これからの日本を背負う学生をなんとか育てたい。」と感じていたのと呼応しました。そこでボランティア教育開催を思いついたわけです。設計とは必要な機能を抽出し、これに対して肉を盛り具現化していく作業です。しかし学校で習う設計製図は予め用意してある計算書を穴埋めしていくと所望の計算書が完成し、手本と計算書を横目に見ながら製図をするものに近いと聞きます。つまり類似品設計の手順を習っているわけです。

昨今の企業においてもこの作業が設計の主体になってしまっていることもあるようです。従来製品の図面を持ってきて、コピーした後に数mm大きくして「できあがり」という具合で。これでは創造性ある新規製品は生まれません。またこの作業は早い・安いだけを期待されることになり、製造部門だけでなく設計部門までも人件費の安いアジア圏に流出してしまうという事態を引き起こしかねません。そこで本セミナでは必要機能の抽出・具現化に重きをおき、その後3DCADやCAEを使って検証するということにしました。

今年の課題である二足静歩行ロボットでは二本の足を交互にあげますから、地面に着地している足の最外形と重心の位置関係が鍵になります。この関係を明らかにしたら、あとは所望の足の動作・重心移動をさせる構造を考え出せばよいのです。ただ実際セミナーを開催してみると、参加者は出来上がりの形状を思い浮かべ、それを意識してしまいがちになり、重心移動という静歩行の本質を自分の力で見抜けていなかったようなので、私としてはこれが一番口惜しかったことでしょうか。

このセミナーも2年目となり、今年は新明和工業(株)様、サイバネットシステム(株)様からの協力や多くの学校の先生方からの賛同をいただいて、50余名の参加者との一体感のある中味の濃い教育を行えたと思います。また、本セミナの内容を大学教育でも実施したいという感想をくれた先生がいたことは、本当に嬉しいかぎりです。実際には時間切れでCAEまでを使える参加者が少なかったので、次回はぜひもっと取り入れたいですし、新たな「面白そうで、一癖ある」課題を考えて、参加者に設計のおもしろさを体感してもらいたいと思っています。

サイバネットシステムでは、魅力あるモノづくりを支えるツールをCAEという切り口でご提供しています。またキャディック株式会社様のように導入支援を事業とされているお客様とともに、技術者の育成にも貢献できるようさらなるサービスをご提案していきます。

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