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熱流体解析

キャビテーション : 高い精度が要求されるCFD解析事例

Application Brief

2018年8月

キャビテーションとは、流動力学により局所的な静圧が蒸気圧未満に低下する場合に、液体内に蒸気気泡が生成される現象です。気泡は通常は持続時間が短く、高圧化で崩壊します。キャビテーションにより騒音や振動、構造の摩耗/損傷が発生し、性能低下を招くことがあります。これは、変動が大きい水圧の影響を受けるポンプ(特に遠心ポンプや容積型ポンプ)、コンプレッサー、水力タービン、プロペラ、燃料噴射器、その他の流体機器で一般的に見られる問題です。一方で、混合や表面の洗浄など、キャビテーションを活用できる適用事例も多数あります。初期段階で最適な設計を実現するには、設計の初期にキャビテーションを特定して診断する必要があります。しかし、物理的な試験では通常、キャビテーションが高レベルに達して騒音や振動が発生するまではキャビテーションを特定できません。そしてその場合にも、キャビテーションが問題の根本原因であると確認することは困難です。多くの数値流体力学(CFD)ソフトウェアパッケージでは、キャビテーション予測に難点があります。その原因には、構造コンポーネントの運動を考慮できない、多くの場合キャビテーションの高精度シミュレーションで要求される流体解析とその他の物理モデルの連成に対応していない、キャビテーションモデルを提供していないか限定されていることが挙げられます。キャビテーションを高精度で予測できなければ、設計を最適化して動作パラメータおよび限界を設定することは事実上できず、製品で想定外の振動および損傷が発生する危険性があります。

目次

  1. 精度を損なうことなく可動部品をモデル化
  2. ダイナミックメッシングをジェロータポンプの設計最適化に利用
  3. キャビテーションの程度が流体と構造のあいだの相互作用に影響する可能性
  4. FSIシミュレーションによる液封マウント設計の最適化でキャビテーションを抑制
  5. 最適なキャビテーションと乱流モデルを選択して精度を向上
  6. 高度なキャビテーションおよび乱流モデルによる自動車の燃料噴射器の最適化
  7. Ansys CFD でキャビテーションのモデル化をより高精度で実現
  8. ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) により大規模な忠実度モデルの解析が可能に
  9. Ansys の専門家が知識と経験を提供

キャビテーションは、流体流れが関係する以下のような多数の製品で問題となる可能性があります。

  • ポンプ (容積型)
  • 燃料噴射器
  • バルブ
  • コンプレッサー
  • ターボチャージャー
  • プロペラ (およびその他の船舶用途)
  • 余水路

一方で、以下のようにキャビテーションを制御して利用することもできます。

  • 超音波装置 (衝撃波砕石器)
  • キャビテーション噴流による表面洗浄
  • 低抵抗魚雷および船体

この事例ではキャビテーション制御の高精度シミュレーションにより、複数の製品および製造工程の設計候補を短期間で評価し、競争が激しく開発スピードが求められる環境で、効率、信頼性、安全性、耐久性を向上できることを説明します。AnsysCFDソリューションは、キャビテーションを高精度かつ短期間で解析するために必要な機能を提供します。

Ansysのダイナミックメッシュや移動メッシュを利用して、キャビテーションが問題になる適用事例で一般的なインペラーや羽根などの可動要素を、高精度で簡単にモデル化できます。流体と構造のあいだの相互作用は多くのキャビテーション作用で重要な特性ですが、AnsysCFDソリューションを使用すればこれを簡単に予測できます。Ansysはキャビテーションや乱流の豊富なサブモデルを含む最高精度の混相流モデルを提供しており、適用事例に最適なモデルを選択できます。キャビテーションは、高精度の解析が要求される、重要な数値流体力学の適用事例です。

左側は13年間キャビテーションなしで使用したポンプ、右側はキャビテーションありで1年間のみ使用したポンプ
左側は13年間キャビテーションなしで使用したポンプ、
右側はキャビテーションありで1年間のみ使用したポンプ

精度を損なうことなく可動部品をモデル化

ピストン、ローター、インペラー、羽根、プロペラといった可動部品は、キャビテーションが関係するほとんどの適用事例で重要な役割を持ちます。キャビテーションの高精度予測には、結果として生じる流体領域の変形のモデル化が必要です。流体領域の変形が小さい場合、流体領域のメッシュ要素が可動部品のサーフェスとともに移動しても精度に大きな影響が出ないこともあります。しかし、ほとんどのポンプ、コンプレッサー、バルブでは、流体領域の変形が大きく、要素の膨張、歪み、変形が生じるため、高精度の結果が得られません。

AnsysCFDソフトウェアでは、領域やメッシュの変形時も高精度の解析を実現する一方で、ジオメトリ変更に応じたメッシュ移動手法も複数用意しています。Ansysソフトウェアでは、高度なメッシュ移動や「メッシュモーフィング」モデルの採用によりメッシュ再生成を削減し、予測精度を向上します。2次元および3次元のメッシュ領域の運動は、空間、時間などの解変数に応じて、初期のメッシュに対する相対変位または絶対位置として指定することができます。ANSYDCFDソフトウェアは、その指定に基づき、メッシュのそれ以外のボリューム全体でメッシュ変位を決定します。境界変位が大きい場合、タイムステップの最初でスムージングが行われ、移動するメッシュで支配方程式が解かれます。グリッドの品質を維持するため、タイムステップの最後でノードまたはセルが追加または削除されます。セルのレイヤーは、その高さが指定値から変化した場合、マージまたは分割されることがあります。メッシュ再生成前に得られた解析は、再生成後に新しいグリッドにマッピングされます。

ローブポンプのメッシュが可動部品を考慮して自動的に調整され、高精度のシミュレーションを実現
ローブポンプのメッシュが可動部品を考慮して
自動的に調整され、高精度のシミュレーションを実現

ダイナミックメッシングをジェロータポンプの設計最適化に利用

容積型ポンプでは、流量はポンプのrpmの一次関数になります。ただし、rpmが増加すると、キャビテーションにより流量が大きく減少します。CFDシミュレーションでは、キャビテーション発生による流量減少時のポンプ速度のしきい値を特定することができます。たとえば、図に示すジェロータポンプの動作範囲は1,000~7,000rpmです。このポンプの混相流のシミュレーションでは、Schnerr-Sauerキャビテーションモデルを使用しました。8つの異なるポンプ速度のシミュレーションを実行するため、AnsysWorkbenchの設計ポイント機能を使用しました。8つの動作条件すべてのシミュレーションが、8GBのAMD64ビットクアッドコアデスクトップで1.5日未満で終了しました。このシミュレーションにより、rpmのしきい値およびその到達以降の容積効率低下を高精度で予測できました。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ハードウェアではなく標準的なハードウェアを使用して、妥当な時間内にポンプの安全動作領域を特定することができました。

シミュレーションにより、ジェロータポンプでキャビテーションが問題の原因となる動作条件を特定可能
シミュレーションにより、ジェロータポンプでキャビテーションが
問題の原因となる動作条件を特定可能

キャビテーションの程度が流体と構造のあいだの相互作用に影響する可能性

構造と流体のあいだの相互作用は、多くの場合キャビテーションに加えて製品の全体的な性能に大きく影響します。流体流れにより、ソリッド構造には圧力と熱荷重がかかります。通常これらの荷重が構造を移動または変形し、…

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