解析講座 弾塑性材料モデルの基礎(第2回) 佐賀大学 大学院工学系研究科 機械システム工学専攻 只野 裕一 様

弾塑性材料モデルの基礎(第2回)

CAEのあるものづくり Vol.28|公開日:2018年6月

目次
  1. 降伏関数
    1. 降伏関数とは
    2. 1次元の降伏関数
    3. Trescaの降伏関数
    4. Misesの降伏関数
    5. Misesの降伏関数の別解釈
    6. 降伏曲面
    7. TrescaとMisesの降伏関数の比較

降伏関数

4.1 降伏関数とは

弾塑性変形を記述するにあたって重要となる3つの因子のうち、今回は降伏関数について解説します。降伏関数とは、材料がいつ降伏するかを記述する数学モデルです。弾塑性変形における応力・ひずみ線図(第1回の図1をご参照ください)を見てもわかるように、延性材料では応力が降伏応力に達すると降伏を生じます。その後、塑性変形の進行と共に降伏は維持されていると考えるため、この最初に降伏することを特に初期降伏と呼ぶこともあります。このように、材料の降伏は応力によって支配されていると考えることができます。

材料が降伏する、すなわち塑性変形を開始する条件を降伏条件と呼びます。降伏条件を具体的な関数で表現したものが降伏関数です。降伏が応力によって支配されていることから、降伏関数は応力の関数となります。また、降伏関数に応力以外の状態変数を加えることも可能です。例えば、温度や変形速度を降伏関数に含めることで、これらの降伏への影響を考慮することができます。
降伏関数をFとすると、一般にFは次式を満たすスカラー値関数として定義されます。

すなわち、材料が弾性状態にあるときは常に負で、降伏するときにゼロなるような関数Fを定義することになります。弾性状態でF<0、降伏の瞬間(初期降伏)でF=0となることから、その後塑性変形が進行する間はF > 0となるように思われるかも知れません。実際にそのような定義は可能であり、塑性変形の速度依存性を考慮する場合にはそのような定式化を行う場合もあるのですが、一般的な弾塑性モデルではF>0となる状態は考えません。それでは塑性変形進行中はどう考えるのかというと、常にF=0となるようにうまく降伏関数を定義するのです。これは、降伏応力が定数ではなく塑性変形の進行と共に変化すると考えることで解決できます。この塑性変形に伴う降伏応力の変化については、次回のひずみ硬化則で取り上げることになります。

それでは、降伏関数の具体形について見ていきましょう。現在までに数多くの降伏関数が提案されていますが、本稿では古典的かつ重要な2つの降伏関数であるTrescaとMisesの降伏関数について学び、降伏関数の考え方の基本を解説します。特にMisesの降伏関数は、多くの汎用FEMコードにおいて標準的な弾塑性モデルに採用されている降伏関数であり、またその中で用いられるMises応力は多くのポストプロセッサでデフォルトの出力となっている量です。本稿を通じて、 Mises応力に対する理解も深めて頂きたいと思います。

4.2 1次元の降伏関数

まずは1次元問題における降伏関数を考えてみましょう。これは、単軸引張・圧縮状態を考えているということになります。一般に降伏点を評価するための最も簡単な材料試験は単軸引張試験ですので、単軸引張試験において材料が降伏する応力を降伏応力σyとしましょう。実際の材料試験においては、明確な降伏点が観測される材料と、そうでない材料(弾性変形から塑性変形への遷移が連続的であり、降伏点が不明瞭な材料)があります。後者の場合、例えば塑性ひずみがある値となるときの応力をもって、降伏応力とみなす場合があります(よく使われるのは塑性ひずみが0.2%となるときの応力で、これを0.2%耐力と呼びます)。
降伏応力σyが与えられているとき、 軸方向の応力をσとすれば、降伏関数はつぎのように表現することができます…

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