解析講座 弾塑性材料モデルの基礎(第1回)
佐賀大学 大学院工学系研究科 機械システム工学専攻 只野 裕一 様

弾塑性材料モデルの基礎(第1回)

CAEのあるものづくり Vol.28|公開日:2018年5月

目次
  1. はじめに
  2. 弾塑性モデルの概要
  3. 弾塑性モデルを理解するための予備知識
    1. 応力テンソル
    2. 応力テンソルの座標変換
    3. 主応力
    4. 応力の不変量
    5. 平均応力と偏差応力

1. はじめに

種々の機械材料に力を加えた際、材料は様々な変形応答を示します。弾性、弾塑性、超弾性、粘弾性、粘塑性など、その種類は枚挙に暇がありませんが、その中でも弾塑性は工業的に最も重要な材料の変形特性の1つといえます。弾塑性変形は、金属や樹脂をはじめとする多くの機械材料で観察される変形特性であり、様々なものづくりの現場で現れる性質です。弾塑性は多くの複雑な変形挙動を含むため、今日に至るまで数多くのモデルが提案されてきました。現時点で、あらゆる弾塑性変形を統一的に記述できるモデルは確立していないため、ユーザーには対象となる現象に応じて適切なモデルを選択することが求められます。このため、弾塑性モデルを正しく理解することが、CAEを活用した設計においてとても重要となります。
本稿は4回に渡って弾塑性モデルの基礎を解説し、CAEの活用に必要な知識を習得して頂くことを目的としています。第1回は、弾塑性モデルの概要と弾塑性モデルの理解に必要な予備知識を解説します。今回の内容をもとに、次回以降は降伏関数、ひずみ硬化則、弾塑性構成式の基礎について、順にご紹介していく予定です。

2. 弾塑性モデルの概要

図1 弾塑性変形の概要
図1 弾塑性変形の概要

一般的な延性金属材料の単軸引張における応力・ひずみ曲線を、図1に示します。変形の初期において材料は弾性変形を示し、応力とひずみは比例関係となります。また荷重を取り除く、すなわち除荷すれば変形は回復し、応力がゼロとなればひずみもゼロに戻ります。しかし、応力がある値に達すると、材料は塑性変形を開始します。この材料が塑性変形を開始することを降伏、降伏を生じるときの応力を降伏応力と呼びます。材料が降伏すると、応力・ひずみ曲線の傾きは弾性変形時と比べて急激に小さくなります。これは、小さな応力増分に対して、より大きなひずみ増分を生じること意味しています。また、降伏後の応力・ひずみ曲線の傾きは一般には一定とはならず、材料によって様々な経路をたどります。さらに、塑性変形中に除荷すると、材料応答は直ちに弾性応答に戻ります。結果として、応力がゼロとなってもひずみはゼロとはならず、変形が完全には回復しません。このとき残留しているひずみを塑性ひずみと呼びます。このように、降伏後の材料の変形、すなわち塑性変形は、一般に極めて複雑で非線形性の強い現象です。この塑性変形を記述する材料モデル(構成式)には、大きく分けて3つの因子が含まれます。

  • 降伏関数(材料がいつ降伏するか)
  • ひずみ硬化則(降伏後の応力がどのように変化するか)
  • 塑性ひずみの発展則(塑性ひずみがどのように生じるか)

この3つを組み合わせたものが、塑性構成式であると考えることができます(狭義には、3つ目の塑性ひずみの発展則のみを指して塑性構成式と呼ぶこともあります)。塑性変形を高精度に表現するためには、この3つの因子のそれぞれについて正しく理解し、適切なモデルを選択することが必要となります。第2回から第4回でこれらを順に解説していきますが、今回はまず塑性構成式の記述と理解に必要となるいくつかの予備知識からはじめましょう。

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