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熱流体解析

流体抵抗の求め方

シミュレーションでわかること

流体抵抗の求め方

CAEのあるものづくり Vol.28|公開日:2018年3月

目次

  1. はじめに
  2. 流体抵抗とは
  3. 流体解析をおこなう前に検討すべきこと
  4. 流体解析で流体抵抗を計算するために最低限必要なこと
  5. 形状を変化させた場合の流体抵抗の評価
  6. 実験値との比較
  7. おわりに

はじめに

今回は流体解析を実施する目的の一つとなりうる『流体抵抗』に焦点をあてて、流体解析の活用例をご紹介いたします。

流体解析を利用することによって、単に流れ場(空間の速度分布等)を知るだけではなく、流れに付随する様々な物理量を算出することができます。例えば、

伝熱

伝熱機能と組み合わせることによって、流れによる熱輸送(対流熱伝導)の影響を考慮した対象物の温度分布をみる

化学種

複数成分の輸送を考慮することによってガスの拡散状態をみる

混相流

複数相(液相-気相、固相-気相etc)を考慮することによって、相間の界面挙動や粒子の挙動をみる

といった活用が可能です。もちろん今回ご紹介する『流体抵抗』などの、流体が作用する力も確認することができます。また、『流体抵抗』は、比較的簡単な流体解析の設定で考慮することができ、その概念や実験値と比較した事例に触れることによって、より効果的な活用が可能になります。今回ご紹介する記事が、お客様が流体解析に興味を持つきっかけになる、もしくはお客様が流体解析を始める最初の一歩になれば幸いです。

流体抵抗とは

流体抵抗とは、物体が流体(気体や液体)から受ける抵抗力(流体力)のことです。流体から受ける力は流れに平行な抗力と流れに垂直な揚力とに分けられますが、ここではイメージしやすい抗力について説明します。

例えば図1のような球体周りの流れ場を考えた場合、流体力を大別すると

  • 球体表面の垂直方向から受ける力
  • 球体表面の平行方向に受ける力(せん断力)

に分けられます。

図1 球体周りの流れ
図1 球体周りの流れ

まず垂直方向から受ける力を考えると、球体の前方(流体と正面衝突する位置)は流れの後方に向かって押す力が働くのはイメージしやすいと思います。流速が小さいときはこの力が支配的になりますが、流速が大きくなってくると球体の後方に渦が生成され、渦部分が負圧、すなわち大気圧よりも低い圧力になる領域が発生します。圧力の高いところから低いところに流れは生じるため、この負圧により球体が後方に引っ張られるような力が働くことが考えられます。負圧の効果は抗力を評価する際に重要です。

また、せん断力についてもある程度考慮する必要があります。壁がいわゆる"つるつるしている"状態であればせん断力も働きませんが、実際は壁表面にて流れは静止している状態になるため、その速度差によってせん断力が働きます(なお、せん断力は流体の粘性、すなわち"ドロドロ、サラサラ度合い"によっても変わってきます)。

さらに流体の状態を表す指標として、レイノルズ数 (以下、Re数) があります。流速や粘性、密度などの値により決まるレイノルズ数は、流体の抗力を考える際に非常に重要な値です。後程この値が出てきますので、是非覚えておいてください。

流体解析をおこなう前に検討すべきこと

上記の流体抵抗を計算する前に、検討しなければならないことが幾つかあります。ここを疎かにしてしまうと、解析によって何が得られるのか、ぼやけたものになってしまいます。

(1) 目的(何を見たい、知りたいのか?)

今回は流体抵抗を知るのが目的ですが、その評価方法も幾つかあると思います。

  • 構造物にかかる流体抵抗の絶対値を知りたい
  • 形状を変化させた場合、流体抵抗がどうなるか(どれが一番小さいか)知りたい

などが考えられます。流体抵抗の絶対値といってもピンとこないと思いますので、形状を変化させた場合の流体抵抗がどうなるかを求めたいと思います。そのため厳密な値を求める絶対評価よりは、形状の良し悪しを相対評価にて比較したいと思います。また、相対評価のため形状の簡略化をおこなうことなど考えています。

この目的設定、つまり見たいものを見失わないようにするのが非常に重要です。それによって計算コストや解析する範囲に対して適したものを選択できます。

(2) 形状(何を比較したいのか?)

図2 比較する形状 (5種類)
図2 比較する形状 (5種類)

今回の比較する形状は、図2の5種類(球、楕円球、円柱、円錐、特殊形状) としました。一番流体抗力が小さくなる、もしくは大きくなるのがどの形状か予想してみるのはいかがでしょうか。条件を揃えるため、流れが当たる投影面積は5種類共通の直径10cmの円になるようにします。

(3) 解析領域(境界条件・物性値など)

例えば構造物周りの流れ場の解析を実施するなら、当然構造物の形状は必要になります。また、流体解析を行うためにはどの程度の空間を考慮するかも重要になってきます。流体がどのくらいの範囲を流れるかは判断がむずかしいため、少し広めに範囲を取るのがよいと思います。

構造物によって流体の流れがかわり、渦が発生しそうと予想できると思います。そのため広がった流れを模擬できるよう左右に少し、出口に向かって大きく、解析領域を取りたいと思います(図3)。

図3 球体周りの流れ
図3 球体周りの流れ

物性値も流体解析を考える上で重要です。今回の物性は…

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