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構造解析

均質化法によるラティス構造の材料設計

3Dプリンタ技術とCAEの融合

均質化法によるラティス構造の材料設計

CAEのあるものづくり Vol.27|公開日:2017年10月

目次

  1. はじめに
  2. 均質化法によるラティス構造の材料挙動予測
  3. ラティス構造の材料設計例
  4. まとめ

1. はじめに

3Dプリンタを用いた製造技術がものづくりのプロセスを劇的に変えようとしています。 これまで伝統的に行われてきた旋盤やフライスなどの切削による加工方法とは大きく異なり、素材を積層することで製造されるため、AdditiveManufacturing(積層造形)とも呼ばれます。積層造形がものづくりにインパクトを与えている背景の一つに、切削加工では実現することが困難な複雑な形状を容易に製造できる点があります。複雑な曲面を持った部材や、複数の部材を接合しないと実現できなかったアセンブリパーツも、たった1度の積層造形プロセスで全て製造することができます。CADデータと3Dプリンタさえあれば、その他特別な製造技術装置も技術的ノウハウも必要とされない点も大きな魅力です。本製造技術が世に誕生したばかりの頃は、利用できる材料や製造速度および製造可能なサイズに制限があったため、大量生産には向かず限られた用途にのみ活用されるであろうと評価されていました。しかし、最近の技術向上により、これらの制約はかなり改善され、今では高い信頼性を要求されるエンジン部品にも3Dプリンタを活用しようとする動きさえあるようです。

このような魅力的な積層製造技術ですが、利用用途は必ずしも複雑な外形を持つ部品に留まりません。その代表的な例が部材のラティス構造化です。ラティス構造とは枝状に分岐した格子が周期的に並んだものを指します。形状はトラス構造に類似していますが、積層造形で用いられるラティス構造は、必ずしも三角形状に並んだ状態ではなくもっと広義に解釈されます。また、積層造形では一般的なトラス構造よりも小さな数ミリメートルオーダーの枝状構造を指すのが一般的です。従来は中実であった構造物をこのようなラティス構造にすることによって、外形は元の形状を保ちつつも大きな軽量化を図ることができます。

さらに、ラティス構造を変えることによって、ラティス構造を構成する素材を変えることなく、みかけの剛性やポアソン比などの材料挙動を制御することもできます。任意の材料挙動を埋め込むことができるという見方から、ラティス構造からなる材料のことをプログラマブルマテリアルと呼ばれることもあります。さらに、ラティス構造を工夫することで、ソリッドな素材単体では実現のできない0.5を超えるポアソン比や、負の屈折率などの材料挙動を人工的に作り出すこともできます。このような自然界には存在しない材料挙動を有した人工物質はメタマテリアルと呼ばれます。材料挙動に可制御性を持たせられることはとても有用で、例えば人工関節などの医療分野で用いられる部材では、生体適合性の観点から、安易に構成材料を変えることができませんが、ラティス構造を用いることで、素材固定の制約に縛られることなく用途に最適な材料挙動を設計することもできます。

さてCAEに話を移します。積層造形はCAEととても親和性の高い技術であると言えます。その最も典型的な例が位相最適化解析です。数年前まで、設計者が持つ位相最適化解析の有用性評価は決して高くはありませんでした。従来の加工技術では作成困難あるいは不可能な形状が解析結果として得られてしまったためです。しかし、製造できる形状に制限の少ない積層造形技術ではこれらの問題が解決できるため、今後位相最適化解析の活用は加速するであろうと期待されます。ラティス構造に対しては、材料挙動を予測するためにCAEはとても有用です。ラティス構造が持つ材料挙動の可制御性はとても強力ですが、材料設計の自由度がとても高いため、実試験のみで設計を行うことは非現実的なコストになる懸念があります。CAEを用いてラティス構造の材料挙動を予測することができれば、この問題は大きく改善できます。本稿では、不均質材のみかけの材料挙動を予測することのできる均質化法を用いて、ラティス構造の材料設計を行うための手法について、解析事例とともに紹介いたします。

2. 均質化法によるラティス構造の材料挙動予測

均質化法はマルチスケール解析の1つの手法に位置づけられるもので、不均質な構造の情報を元にみかけの材料挙動を予測することができます。Ansysには標準機能として実装されておりませんが、マルチスケール解析用のAnsysアドインツールであるMultiscale.Sim®を利用することで均質化解析を実施することができるようになり…

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