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熱流体解析

Ansys Fluentによる混相流解析

CAEのあるものづくり Vol.27|公開日:2017年10月

目次

はじめに

ものづくり現場で流体が与える影響を考慮することは、よりよい製品を生み出すためにはもはや必須であると言っても過言ではありません。しかし、流れ場や圧力場などの流体の影響を考慮する上で重要なファクターを、実際のものづくりの現場のような複雑な環境で調べ上げることは大変難しく、流体の影響を考慮することは一筋縄でいくものではありません。

だからこそ、流体ツールを使用したCAE(Computer AidedEngineering)は大変大きな価値を持ち、これまでも多数の製品開発に役立てられてきました。シンプルな例として、「空気の流れが与える影響」という視点から見てみると、電子機器のより効率的な冷却、車体が受ける抵抗力の低減・燃費向上、室内の空気循環の効率化、などなど、枚挙にいとまが無いほど多くの流体CAE活用の例が見つけられます。

しかし、ものづくりの現場に現れる「流体」は単純な空気ばかりではありません。例えば車のギアボックスの油冷システムはオイルと空気という複数の流体が混在しており、オイルが適切に分布することが求められます。撹拌槽では空気と複数の液体が混在し、より効率的に液体が混ざり合ったり、充分な量の空気が取り込まれたりすることが要求されることもあります。

今挙げた例は「混相流」と呼ばれるジャンルに分類されます。これは、「混」在する流体「相」の「流」れを見る分野です。実際、ものづくりの現場ではこの「混相流」の解析が必要になる場面は大変多く、その挙動を理解することは製品の決定的な差別化につながることも多くあります。しかし、混相流は流体CAEの中でも比較的難易度は高く、実際の現象を充分に再現するにはそれなりの知識が必要です。

そこで今回はこの「混相流」の中でも特に需要の高い「自由界面解析」に焦点をあてて、Ansys Fluentでの解析結果と実験結果の比較を通して、「混相流の充分な現象の再現」をするには何が必要かを考えてみることにします。

混相流の分類とモデル化

混相流の解析には適切なモデル選びが重要になります。そのためには適切に現象を捉え理解する必要がありますが、着眼点に多少のクセがあり、最初は戸惑うところでもあります。そこで、混相流とは何か?からスタートして、「適切にモデル選択をする」ことを目的に分類してみることにします。

混相流とは、「異なる相が同時に存在する流れ」と定義され、相の境界となる「界面」が明確に存在することが鍵となります。最も基本的でシンプルな分類は、この界面で隔てられた各相が、固体/液体/気体のどの相にあるかによる分類です。例えば、ギアボックスの油冷システムや、液体をガススパージャなどによって撹拌する場合などでは「気体/液体」の混相流に分類できます。少し意外な例としては、砂時計のような固体を含むような混相流も存在します。これは「気体/固体」に分類される混相流になります。このように、固体相がいわゆる「粉体」であり流動があり得る場合には、固体を含むような系も混相流として分類されることになります。

しかし、「相に基づく分類」のみではモデルの適切な選択は困難です。同じ相の分類であっても流動の様子によっては数式的なモデル化の手法が大きく異なり、選択すべきモデルも変わってくるからです。そこで、AnsysFluentのモデル化手法を例にとって、混相流のモデル化方法によって混相流を分類して見ることにします。

図1 Ansys Fluentにおける混相流のモデル化の選択肢図1 Ansys Fluentにおける混相流のモデル化の選択肢

Ansys Fluentで混相流をモデル化する場合は、「Models > Multiphase」と「Models > Discrete Phase」のいずれかから選択するのが基本となります。[Multiphase]では“Volume of Fluid”(VOF)、“Mixture” , “Eulerian”が選択可能です(図1)。VOFは「界面捕獲法」の一種であり、各相の界面を追跡し形状を構築することを目的にしたモデル化手法です。先程の油冷システムの例などのように界面の存在位置が重要となる場合に適しています。一方、 “Mixture”“Eulerian”は、2次相が粒子状となり分散している場合に、「粒子」の分布や体積分率のような「平均化された流れ」を知ることを目的にした手法です。ガススパージャの例でいえば、個々の気泡の軌跡ではなく、大まかな分布が重要である場合に適しています(なお、“Mixtue”は “Eulerian” の簡略化版となっており、各相間で速度差がほとんどない場合に適しています)。[Discrete Phase]も “Mixture” や“Eulerian”、と同じように2次相が粒子であることを前提にしますが、こちらは粒子を明確に区別し、その軌跡を追跡することを目的にしたモデル化手法です。ガススパージャでいえば、個別の気泡の軌跡を知りたい場合によく使用されます。

混相流解析を実施する際の最初のスタートは、これら4つから最も適した手法を一つ選択することです。選択に際しては、「固体/液体/気体」であるかよりも、「界面形状が重要か」「粒子状に分散しているか」「粒子の追跡をする必要があるか」など、モデル化に即した観点から現象を捉える必要があることを理解していただければと思います。

オプション・スキームの影響:タンクのスロッシングを例に取って

今紹介した4つのモデル化方法を決めた後にも、様々な細かいオプションを設定する必要があります。これらは結果の精度や計算コストに大きな影響を与え、混相流解析の重要な部分を占めます。この点を理解するために、今回は「タンクのスロッシング」という現象を例に取って実験と比…

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